表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華街の占者  作者:
8/12

華街の占者(8)

「…瀬。少しは機嫌直してくれないかな?」


―――なぜ、主君のはずの俺が頼んでいるのか。


内心では疑問に思いつつ、滝国の露王は執務室で冷気を漂わしている男に声をかけた。

常であれば、彼の傍にあるはずの少女の姿はない。

そのことが彼―――瀬の機嫌を損ねている。

正直、仕事がやりにくい。

ぶっちゃけ、どうにかしてくださいと嘆願書まで王の下に来ている始末。



「…」


―――無視かよ。



露は無視を突き通す瀬を呆れ半分に見ながら、此処にいない少女―――椎のことを考えていた。

椎は普段ならば、露の侍女をしている。

露の侍女のはずなのだが、ほとんど瀬の世話ばかりをしているのはご愛嬌だろう。正確には瀬がそうするように仕向けているのだが。

椎が数日前からある人の下へ出向しているのが、瀬の不機嫌の原因であった。


その先というのが、今、この城に滞在している茜国の王女『杏』。

王女は椎を気に入った様子で、椎を世話役に指名したのだった。そのため、椎は瀬の傍にいないわけなのだが…


―――いいかげん、納得しろよ。


しかも、椎にはその素振りも見せない。

そのため、瀬の八つ当たりの被害を(こうむ)るのは瀬の部下と王、時々その他諸々(もろもろ)


「―――椎も楽しそうにしているんだし、それに時々顔を見せに来ているだろう?」


―――バキッ


瀬の筆が折れた。

何かの琴線に触れたらしい。どんだけ、心が狭いんだ。

瀬はゆらりと席を立ち、扉へと向かう。


「左手の剣を持って、何処行くんだ?」


瀬の背中に問い質し、瀬はゆっくりと振り返った。

その顔は不機嫌を通り越し、目に殺気を宿していた。あまりの形相に背筋に冷や汗が流れた。


「―――訓練場」


行き先のみを答え、瀬は執務室を出て行った。

残された露は崩れるように椅子に寄り掛かり、


「今日の被害者は何番隊か…」



今日の被害とやってくるであろう、苦情、嘆願書を思いため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ