華街の占者(5)
別名、王様から見た2人。
育った場所は『天恵』をもつ子供を攫い、教育する施設だった。
戦乱の世、『天恵』は財産であり、戦争の道具ともいうべき存在だったのだ。
その場所には今では相方ともいえる瀬もいた。
二人が戦に初めて出たのは十二のとき。それからは戦いの毎日といってよかった。
ただ、国のために戦い、滅ぼす日々。
そんな毎日をいつしか疑問に思うようになった。
賛同するやつも多くいた。
少しずつ仲間を集い、国を興し、自分たちを育てた国を斃した。
国を落とした、その日。
見つけたのは一人の女の子。
小さな女の子が隠されるように、閉じ込められていたのは忘れられた地下牢だった。
檻の向こうに、その子を見つけたとき怒りに頭が白くなった。
―――こんな幼子を使ってまで、国を守ろうとしたのか?
その子は稀な『天恵』を持っていた。
身体のあちこちには傷や痣があり、その目は諦めと怯えしか映していない。
怒りで動けないでいると、後ろに控えていた瀬が前に出て、牢の扉を『チカラ』で壊した。
瀬は牢の中に入り、女の子の前でひざを付いた。
怯える、その子に笑いかけた。
そのことに状況を忘れて、唖然とした。
正直なところ、人を嘲笑うような嗤いしか見たことがない。
その子に向ける笑みは、真逆の優しいもの。
呆然としている俺をよそに、状況は様変わりしていく。
瀬は女の子を抱き上げ、牢を出る。
「―――何を突っ立っている」
瀬のいつも冷たい視線が突き刺さった。
「早く、ここから出るぞ」
「ああ…」
言うなり、自分の横を通り過ぎ地下から出て行く。
俺は少し遅れて二人の後を追った。
―――――
物心が付いた頃から、あの場所にいたという女の子には名前がなかった。
少女に請われ、『椎』という名を贈った。
まだ六つと幼いこともあり、椎は信頼が置ける孤児院に預けるつもりだった。
しかし、椎自身がそれを嫌がった。
そして、瀬が少女の願いを聞き入れてしまった。
椎の持つ『天恵』を惜しむ声も確かにあったのも事実。
結局、椎は軍に入ることとなった。
世に不慣れな椎の隣には常に瀬が寄り添うように付くようになっていた。
―――今、思えば最初から瀬はあの子に囚われていたのだろう。
ちなみに、彼らは当時十七歳。普通に考えてロリコンじゃね?とも思います。