華街の占者(4)
一番、古い記憶は檻の中の世界だった。
暗い、光の届かない場所で『視』続けていた。
過去を、今を、先を。
希われるままに、その望みを視た。
視なければ、何をされるかわからなかったから。その恐怖から逃れるために視た。
けれど、その世界は突然終わった。
終わらせたのは二人のオトコの人。
一人は黒灰色の髪に金の目をした人。
もう一人は白金色の髪に紅い目をした人。
彼らは私に世界を見せてくれた。
彼らは私にとっての絶対のヒト。
彼らに逢って、はじめて私は『椎』になれたから。
だから付いて行くことを決めた。
少しでも役に立てるなら。
彼らのために出来ることを―――そう、思った。
それがどんなに罪深いことだったのか、当時の私は分かっていなかったけど…
―――――
長い眠りから目が覚め、椎はゆっくり身体をおこした。
その時、右の足首に違和感を感じた。視線をやると、そこには繊細な細工の施されたアンクレットがあった。
「―――なに、これ―――」
そして、気を失う前の光景が頭を過ぎった。
「そうだ…」
みつかってしまった。
彼につかまってしまった?
「どうして…」
どうして、私をさがすの?
わたしはもう必要ないのでしょう?
だって、わたしにはもう、確かな未来を視る力はないのだから。
もう、彼らの役に立てない。
そう思って、離れたのに。
なのに、どうして?
―――どうして、連れ戻したりするの?
椎の目から涙が一滴零れた―――