華街の占者(3)
すこし昔、この大陸は戦国時代といっていい状況であった。
五十年ほど前、大陸を統一していた大国が斃れ、そこからいくつもの小国が乱立し、戦国の世となった。
続くと思われた戦国の世は十年ほど前、ある国が興ることによって、とりあえず収束することになる。
現在、大陸には大小、六つの国がある。
十年前に興った国は今では大陸一の大国と称されている。
その国の名は滝国。
当時、十七才の若き王『露』はその溢れる才をもって国を興し、大国へと押し上げた。
彼の下には多くの才能ある若者たちが集い、国を強くしていった。
その中でも、他国から恐れられた男がいた。
滝国将軍『瀬』。
彼の圧倒的な力の前では何もかもが無力であった。今の世となっては操り手が少なくなった『天恵』を持っていたことだけでなく、彼の武術、策謀すべてが他を圧倒していた。
戦国の末には『滝王の抜き刀』とも呼ばれていた。
他国に知り渡り、恐れられていた『滝王の抜き刀』。
それとは別に定かではないが密やかに囁かれた『懐刀』の存在があった。
けして、戦場に出ることはない存在。
彼の者は『天恵』を持つのだという。
過去を、今を、時には先を視るチカラを持って、戦を制するのだと。
ただでさえ、操り手の少ない『天恵』の中でも類稀なそのチカラ。
その操り手は当時、まだ七つにも満たない幼子であった。