表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華街の占者  作者:
12/12

華街の占者(12)

今、この時期に隣国へと赴いたのは賭けだった。

ごく僅かの側近たちだけを連れ、この国を訪問した。表向きは友好のため。けれども、本当の目的は唯一つ。



己の望みを叶えるため。


そのために自身の未来を差し出してもかまわない。

あの日から、そのためだけに生きてきたのだから。すべてはあの人のために―――



さあ、舞台は整った。






     ―――――



建国祭。

年に一度、国最大の祭りは春の訪れを告げる国花『フィジク』の開花から一月後(ひとつきご)と決まっていた。

国花『フィジク』はこの国特有の花であり、春になると一斉に開花する。そのため、春を告げる花と呼ばれていた。

建国祭は『フィジク』の開花一ヶ月後としたのは、建国が戦乱の最中だったため『いつ』だったのか定かではないこと、戦乱の世が終わったのが冬の終わりだったことに由来する。

『フィジク』の花は二月ほど咲き誇り、そして一斉に散る。

建国祭は花の盛りの時期に行われるため、人々は建国祭を『花祭り』とも呼んでいた。

建国祭は三日間に渡って行われる。

本祭とされるのは三日目。三日目には王城が公開され、祭の最後には王城のテラスから王が祭の終わりを告げる。

そのため、テラス前の広場は人で埋め尽くされる。

去年までであれば、テラスに続く部屋でその様子を見ていた。では、今年はどこで見ることになるのだろうか。


ああ、でもその前に。

この状況をどうしたらいいのだろう。


椎は後悔していた。

周りを見渡すと、祭に浮かれた人々。真横を見ると、楽しそうな杏さま。


―――どうして、止められなかったのだろう。


でも、どんな言葉でも王女は止められなかった気がする。

せめてと、同行だけはさせてもらうことにしたけれど、内心は焦りと後悔でいっぱいだった。

いくら、王女の護衛である騎士が二人同行しているとはいえ、一国の王女に何かあったらと思うと心配の種は尽きない。

どうにかして、早々と城に戻るようにしないと―――



建国祭三日目。

城内が公開されるということは、反対に城外へ出ることも容易であるということ。

滝国の客人であるはずの茜国の王女、杏は周りの目を掻い潜り、祭に賑わう城下へと足を運んでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ