表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華街の占者  作者:
10/12

華街の占者(10)

露は物思いに耽っていた。


近頃、城内が騒がしい。


隣国の姫君の滞在から毎日、何かしらの騒ぎが起きている気がする。

もっとも、原因のほとんどに瀬が関わっているのが実情だった。

主に訓練での(しご)きという名の八つ当たりが挙げられる。今では奴の周りはツンドラ地帯。侍従や侍女は近づくことさえ出来ない。その結果、各方面からクレームやら嘆願が引っ切り無しに舞い込んでくる。

執務室の机の上に溜まり続ける書類―――の大半を占める嘆願書に頭痛を覚えた。


―――俺にどうしろと…?


露はそもそもの原因となった隣国、茜の国王からの書状を思い浮かべた。



茜国は滝国の南に位置する。

国土は滝国と比べるとさほど大きくはないが、鉱物といった資源が豊富な滝国に対し、加工や細工技術が優れた茜国とは良い関係が続いていた。


そんな中、茜国の第三王女の滞在が決まった。

茜国王には四人の王女がいるのみで世継ぎとなる王子はいない。しかも、この四人の王女は正妃の子ではなく、側妃の子であった。

おそらく、第一王女の夫となる人物が王位を継ぐのだろう。


そう、思っていたのだが。


判断するにはまだ早いのかもしれない。

茜国王の書状には気になることが書かれていた。




「―――どうして、こう厄介事ばかり舞い込むんだが…」


瀬についての嘆願書を読みながら、ぼやいた。

正直、嘆願書を読む意味はあるのだろうか。瀬の不機嫌はまだ続く。少なくとも王女が帰国し、椎が王女の傍付きの役目を終えない限りは終わらない。

つまりは嘆願してもきりがない訳で―――



「嘆願書…放置してもいいよな」

「何を仰いますか」


小さく呟いた言葉を聞かれたらしい。

執務室に音もなく入ってきた少年が呆れた声で返事をした。


「していいはずだ。それより、一言声をかけてから入室しろ、(あお)

「それは失礼しました。―――それより」


藍は表面上はにこやかに装いながら、書類の束を机の上に置いた。


「―――これは…?」


―――嫌な予感がひしひしと…



「新たな嘆願書です」



侍従兼護衛である少年、藍は満面の笑みで返答した。




―――頭痛がしてきた…


露は新たな嘆願書の山を見て、ため息を零した。





王様は苦労性。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ