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華街の占者  作者:
1/12

華街の占者

新興国の一つ、(そう)国。

若き王が興した国である、滝国の外れにある華街『(かすみ)』には一人の占者がいるという。

その占者は失せモノを見つけてくれる―――そう。物であっても者であっても。

ときには先の相を視ることもあるという。

その噂を聞いて、訪ねてくる人間は後を絶たない。

けれども、その占者に会うことは叶わない。


その存在を疑っても街の華達は揃って占者は存在すると云う。


―――何故ならば、占者は(はな)達だけにその力を見せているのだから…




     ―――――



華街には必ず花の名が入っている。辺境の『霞』であっても、その因習は変わらない。

(うつつ)の世とは一線を画した、この街の昼はどこか他と違っている。夜になれば、浮世と化す街は、昼の時間とあってはどこか沈んでいるかのよう。


その街の人気の少ない通りを一人の少年が歩いていた。

立ち並ぶ建物の一つから女が飛び出てきた。


「―――(しい)!ちょうどよかった!(あね)さんが視てほしいって言ってるんだけど、今いいかい?」

「いま、用事を頼まれてるところだから、その後なら大丈夫だよ」

「いつぐらいになる?」

「一刻後には行けると思うよ」

「分かった!姐さんにはそう伝えておくよ。よろしくね」

「うん。じゃあ、また後で」


少年―――椎はふわりと笑い、その場を後にした。


椎がこの辺境の華街に流れ着いたのは一年前。

ある日、突然現れた椎を拾ってくれたのは、一人の妓女だった。

『華』と揶揄される妓女たちの世界で暮らすようになり、しばらく経ってから恩返しの意味で妓女たちを占うようになった。

よく当たると評判になり、噂を聞いてやってくる人間が出始めたが、椎は妓女以外を視ることはなかった。

占いも客が来る前、昼に行っている。

これ以上、噂が広がるのは避けたいところでもあった。





     ―――――



約束していた、占いを終えて店を出ると外はすでに陽が沈む頃になっていた。

ちらほらと客が姿を見せ始める頃。

普段であれば、とっくに家に戻っている時間でもあった。


「早く帰らないと…」


少しばかり焦りの色を(にじ)ませて足早に店を立ち去る。

街の外れ、あと少しで我が家というところまで来たとき、背後から聞き覚えのある美声がした。


「みつけた」


その声はこの場所では聞くはずのない声のはずだった。

恐る恐る振り返り、声の(ぬし)の姿を確認すると、逃げ切ったはずの、ココにいるはずのない人物

が立っていた。

椎は恐怖で顔を蒼白にした。


「やっと、みつけた」


彼は口元に笑みを浮かべながら、椎に近づく。

金縛りにあったかのように、動かせずにいる椎を腕に抱きこみ、


「―――迎えに来たよ、椎」


―――さあ、帰ろう?


2人の足元に光る陣が浮かび、2人は『霞』から消えうせた。

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