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いつも見ていた世界  作者: 板井虎
第二章
47/57

第22話:最大HP以上の攻撃力はもうバトルじゃない

 何か良い案はないのか!?


 →だまる

  しらをきる

  うそなき

  にげる


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………………………」


 こうかが ない みたいだ…。


 …次はこれだ!!


  だまる

 →しらをきる

  うそなき

  にげる



「…あの、ほんとに私‥覚えてない…んです」

「…………」

「私は、気付いたら森の中にいて、その前の記憶は思い出せないんです…」

「…………」

「……あのー、聞いてますか?」

「…………ああ、聞いている」

「だからですね、さっきの事は「本当の事を、な」

「……………」


 こうかは いまひとつ のようだ。


 ルーカスたいちょうのにらむ!


 いーやーだー!!!怖いよー!!

 さえに 52のダメージ!


 つ‥次!!


  だまる

  しらをきる

 →うそなき

  にげる



 あまり気乗りはしないがやるしかない!涙はオンナの武器だ!私は辛そうに顔を歪ませた。


「そんな事、言われても困ります!私だってひっく…記憶が無くてっ不安なんです…!!」


 私はひっく、ひっくとしゃくりあげながら体を震わせて、両手で顔を覆った。男なら諦めろ!!


「……サーイェ」

「うっ…ひっく!っ…」


 返事をすると、ルーカス隊長が柔らかく私の頭を撫でた。……と思ったら!!

 私の両手を掴み、ぐいっと自分の方へ向かせた。


「涙、出てないな」

「…………」


 ルーカスたいちょうの みやぶる!

 さえに 24 のダメージ!


 くそ、ピンチの時はアイテムで回復させるのが基本だが、そんなもの無い。ぼうぎょしても時々意味ないときがあるよね!もう最終コマンド…これだ!!


  だまる

  しらをきる

  うそなき

 →にげる



「離して下さい!」


 私が掴まれていた腕を引き剥がそうと、思いっきり体を捩ると、びっくりするほどあっさり放されてその勢いで私はコケた。


「うわっ!?」


 どさりと床に落ちると、ルーカスは私をちら見した。


「逃げるのか?」

「…いや…あの‥帰ります」

「その前に聞きたいことがある」

「…………」


 ルーカスたいちょうは アイテムを つかった!



 私が黙っていると、ルーカス隊長はごそごそとポケットの中からケータイを取り出した。


「これの使い方、分かるか?」


 さえに 658 の ダメージ! きゅうしょに あたった!

 …瀕死になって意識飛ばしたい。


「……それ、何ですか?」

「…知らないのか?」

「分かりません」

「そうか。俺も使い方がよく分からないから、サーイェに聞いてから使ってみようかと思ったんだが、サーイェが知らないんなら聞く必要は無かったな」

「…………」


 ルーカス隊長はそう言いながら、ケータイをパカパカと開閉したり、画面に触れたり、ボタンを押した。私はそれを黙って見守るしかない。


「…………」

「どう動かすんだろうな?」

「…さあ?」

「もしかしてこの中に何か入っているのか?」

「…………」


 私が黙っているとルーカス隊長はケータイを開いて逆パカしようと力を込めた。


「だめですだめですそれ完全に壊れます!!!」


 私は急いで駆け寄ってケータイを奪おうしたが、ひょいと避けられ、腕を伸ばして私の手の届かない所まで上げた。このやろう!!

 私がジャンプしても全くもって届かない。ルーカス隊長はその様子をじーっと見ている。


「使い方、本当に知らないのか?」

「知りませんよ!返して下さい!」


 ぴょんぴょん跳ねて取ろうとしたらルーカス隊長は両手でケータイを持ち逆パカ態勢入った。


「あぁ~ダメダメダメダメ!!!!」

「本当に、知らないのか?」

「知ってる!!知ってるから返して下さい!!」

「話を聞いてからな」

「…………」


 さえは たおれた!



 ルーカス隊長はソファのある方へ歩き出すと、顎をくいっとやって私を来るように促した。私が黙って見ていると、ルーカス隊長はにやりと口角を上げた。うわぁー、良い笑顔ですねー。


「捕って食ったりはしないって言ったろ?」

「はぁ…」


 そういえばそんな事言ってましたね。うーん、ルーカス隊長かぁ。色々お世話になってるし、信頼しても大丈夫、かな?

 …しょうがない、もう観念しよう。全部吐いて楽になろう。うん。

 私は溜め息を吐くと、覚悟を決めてこの世界に来た経緯を説明した。










「……………と、こんな感じです」

「ふーん」


 ふーん、て。反応薄いな。こっちは色々考えながら話したのに、それで終わりなんすかね?もうちょっと反応があった方がいいような…。まぁいいや。

 ずっと説明していて喉が渇いた私は、すっかり冷えている紅茶を飲んだ。

 今まで黙って聴いていたルーカス隊長はソファに凭れた。


「つまりサーイェは異世界に住む普通の人間だったが、理由が分からないがこちらの世界に強制的に連れてこられたって事か?」

「はい」

「異世界人か…。その発想は無かった」

「まあ、あんまり考えませんよね」


 レイも異世界からは来た人は初めてって言ってたし。


「森の中で会ったという人物は何者なんだ?」

「私もよく分かんないんですよ。一度神なのかどうか聞いたんですけど、本人は違うって言うし、中身もわんこみたいに可愛いから違うかなって思います」

「わんこ?」

「はい。素直だし従順で甘えん坊だから可愛いんです。褒めるとすごい喜ぶんですよ!」

「へぇ」

「私に褒められたくて、色々一生懸命な姿がまた微笑ましいんですよ!」

「へぇ」

「それで叱るとすぐしょんぼりするんですけど、うるうるした目で見られちゃうとつい許しちゃうんですよね!」

「へぇ」

「見た目が神々しい美人さんなのに、こんな可愛い性格なんて犯罪ですよね!けどこの間は結構男っぽくなっていたんでびっくりしました」

「へぇ」

「美人よりもカッコいい方になってきたんですよ。だけど中身が変わってないからギャップがまた萌えるんですよ!!」

「ふぁ…」


 私が熱く語っていると、ルーカス隊長は大きなあくびをした。


「…聞いてます?」

「ん。お前がその森の住人が好きなのはよく分かった」

「なら良かったです」

「その森の住人には会えるのか?」

「うーん‥それが放浪癖があって、なかなか会えないんです」

「ふーん」

「それで忘れた頃にひょっこり現れる。まさに神出鬼没ですよ」


 この間だって黙って行っちゃうし…まったくもう!


「そいつに会えれば少しはサーイェがこちらに来た手掛かりが得られるんじゃないか?」

「うーん、そうですか?じゃあまた会えたときに聞いてみます」


 レイの事だから『そうなの?』ばっかりで話が進まないだろうけど。


「ああ。あと俺達と話が出来るよう手引きしてくれ」

「俺達?」

「事情を知っている俺と陛下とザビロニス様だ」

「あー‥多分難しいと思いますよ」

「何故?」

「この間、私が勝手に城を出て行った時、偶然森の中で出会ったんですよ。その時に愚痴を聞いてもらったんですけど、そしたら陛下を『消す』発言を…」

「何だと?」


 ルーカス隊長の眉がピクリと動いた。


「いや、だからそんな事にならないようにちゃんと止めましたから!だけどその人は陛下への印象は良くないと思います」

「………」

「大丈夫ですよ!あの子は私の事、大好きだからちゃんと言うこと聞きますよ!」

「…それならいいが、サーイェ」

「はい」

「お前はもう少し自分が周りへ及ぼす影響力を考えた方がいい」

「影響力‥ですか?」


 ルーカス隊長は体を起こし、少し改まったように話した。


「理由は分からないが、お前は俺達の世界に来た。そして只の人間だったお前に、俺達魔人以上の力を与えた謎の人物に好かれている。これで何が出来ると思う?」

「…何でしょう?」

「お前がその人物に指示して、この世界を破壊出来る可能性がある」

「えっ!?そんな事しませんよ!!何の意味があるんですか!!?」

「落ち着け、可能性の話だ」

「はい…」


 私は驚いてつい身を乗り出したが、大人しく元の場所に戻った。


「それにお前が陛下に気に入られているのは、前回の事件での陛下の反応を見ればよく分かる」

「………」

「世界で最も影響を与える人物の一人にそれ程まで好かれていれば、国を操作する事も可能だ」

「だからそんな事しませんよ…」

「そうかも知れないが、お前を利用して間接的に国を、世界を操作しようとする奴も現れるかもしれない。森の住人もお前のためを思って、勝手に邪魔者を排除しようとするということも考えられる」

「…つまり感情にまかせて軽率な行動をするなって事ですよね?」

「ん」

「はぁ…」


 私はため息をついて項垂れた。なんだってこんな事になってしまったんだか…。それにこうまで言われてしまうと、自分が信用されていないみたいで、少し寂しいわ。

 私は顔を上げると、ルーカス隊長をしっかりと見据え、はっきりとした声で言った。


「ルーカス隊長。私、世界を破壊するとか、操作するとか本当に考えてませんから」

「………」

「特に、レイにはそんな事絶対させません。あの子にそんな悲しい事をして欲しくないんです」

「………」

「それに陛下には出来れば近付きたくないです。ていうか関わりたくないです。だけど私に酷いことをしたのは確かですが、国王としては優秀なのは知っています。それにもし陛下が道を踏み外しかけても、周りには立派な家臣達が居るからきっと大丈夫です」

「………」

「本当に、平穏に暮らしたいんです!もし私が特殊設定も無く普通の容姿だったら、騎士団に入団なんてしないし、普通に店で働いて、普通の家に住んで、普通の生活をすると思います!」

「………」

「つまり、世界征服なんで一番厄介で面倒臭いとはやりたいと思いませんって事です!」

「ぷっ…」


 私が力強く言い切ると、ルーカス隊長の吹き出す声が聞こえた。


「ルーカス隊長、ここ笑うところじゃないですよ?」

「サーイェの余りにも必死な姿が妙に可笑しい」

「あのですね…これは切実な問題なんです!元から地味な私がいきなりこんな事目立つ事させられるんですよ!?そんなの自宅警備員にいきなりギャル系の服着て渋谷109に一人で買い物に行ってこいって言ってるようなもんです!!面倒くさがりのルーカス隊長なら分かりますよね!?」

「例えがよく分からない」

「えーと……とにかく無理って事です!」

「ふーん、お前の世界は家に一人は自宅警備員がいるのか?」

「居たら困ります!!」

「?」

 

 自宅警備員を皮切りに、私はケータイやMP3を使いつつ、しばらく私の世界の詳しい話をした。






「これがサーイェの母親か?」

「はい」

「黒髪でも問題は無いんだな?」

「はい。個人差はありますが、私の民族は大体黒髪、茶色目です」

「ふーん」


 ルーカス隊長にケータイの使い方を少し教えたので、ルーカス隊長は自分でケータイをいじり、カメラフォルダを見ていた。


「このサーイェは、やたらキラキラして目がでかいな。鼻もない」

「ああ、プリクラだから仕方ないですよ。最近…私がこっちに来る頃の撮影機は、勝手に目を大きくしちゃうんです。鼻がないのは色が白飛びしちゃったからです」

「これも機械が撮っているのか?」

「はい。機械の仕組みは知らないので聞かないで下さい」

「ん」


 ルーカス隊長は大人しく引き下がってくれた。ルーカス隊長が次々と画像を見て質問してくるのを横で答えながら、私も昔の思い出に浸った。


「何だこの服は?」

「ああ、これは着物です」

「キモノ?」

「はい。私の国の伝統衣装です」

「普段は着ないのか?」

「普段から着る人もいますが、着物は値段が高いし、大体は祝い事の時とかに着ますね。ドレスみたいなものです」

「へえ。この時は何の祝いだ?」

「これは成人式です。私の国では二十歳で大人と認められているんですよ」

「…サーイェ、お前は成人なのか?」

「あ…」


 し ま っ た !


 これはまだ伏せていたのに!!


「いや、これは…!」

「…だから陛下が手を出したんな」

「え?」


 はぁ、とルーカス隊長は深い溜め息を付き、髪をかきあげた。せ、セクシー!


「陛下は結構潔癖だから、倫理的に問題のあることは余りしない。それなのにお前に手を出した。それにお前のやたら大人びた発言や態度にも納得がいく」

「いや、だからその…」

「あとサーイェ、お前男を知ってるだろ」

「そんな聞かれ方初めてされましたよ」

「処女じゃないな?」

「今度はストレートですね!」

「どっちなんだ?」

「…処女じゃないです」


 男性と下トークした事無いからちょっと困るんですけど!!私が気まずく答えると、ルーカス隊長はニンマリと微笑んだ。


「そうか、良かった」

「…何がですか?」

「この間美味かったからついやりすぎてしまったが、子供で処女じゃない分、罪悪感が少し薄れた」

「そう言う問題でも無いような気がするような…」

「初めてよりかはマシだろ?」

「うーん…そうですね」


 だけど大抵の女の人は、こんなイケメンにキスされてもそんなに傷つかないんじゃないか?うまかったし。私がじーっと見ていると、ルーカス隊長はフッと笑った。


「安心しろ。緊急で無い限りサーイェに手は出さない」

「面倒ですからそうして下さい」

「ん」

「あと年齢は絶対バラさないで下さいね!ちょっと嫌ですけど、女扱いより子供扱いの方が問題が起きないと思いますので!」

「分かった」



 それからしばらくまた私の世界の話をしていたら、すっかり時間が経ってしまい、帰りの時間は10時を過ぎていた。

 素直にゲロったからケータイとMP3も返してもらえ、ルーカス隊長に送られて帰宅すると、ラヴィーナに心配されながら迎えられた。

 夜も遅いし、ラヴィーナにはすぐに寝てもらい、私は風呂に入りベッドに寝転がると、しばらく音楽を聴きながらケータイをいじった。



 今日も疲れたなー。…ルーカス隊長に本当の私の事がバレちゃったけど、少し気が楽になった気がする。やっぱり一人で秘密を抱えるよりか、誰かと共有している方が楽だ。

 だけど誰かに秘密を明かすことは、その人に重荷を分けることになる、って誰かが言ってた。

 ルーカス隊長はいい加減な所があるけど、信頼できる人だ。だからこの事が重荷にならないといいな…。

 私は枕に顔をうずめた。……うん、やっぱり考えても仕方ない。色々考えても結局なるようにしかならない。だってそういう運命だもん。

 ゲームとかで運命に抗えとか切り開けとかよく言うけど、元から抗うとか切り開くのが運命だったかもしれないじゃん。悪いことだけが運命じゃないよ。運命なんて無限にあるでしょ。

 まぁ運命が決まってようが決まって無かろうがどっちでもいいんだけどね。その運命の内容なんて私は知らないんだから。

 だから私は、私に出来ることをやって満足すればいいんだ。


 新たな不安を抱えつつも、私は出来るだけ前向きに考えて眠りに就いた。






 一応元ネタ解説


・自宅警備員―ニートや引き籠もりの別称。自宅で勤務し、24時間体制で家庭内の警備をする警備員のこと。



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