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いつも見ていた世界  作者: 板井虎
第二章
44/57

第19話:愛の掌

 謁見の間が近づくにつれ、私の心臓も早鐘を打ち始める。緊張で気持ち悪いし、脂汗も出てきた。

 初めて謁見の間に行った時はこんな風じゃなかったのにな。あの時の方が命が掛かっているという重大な場面だったというのに。

 思わず自嘲の笑みがこぼれた。



 どうしよう‥苦しくなってきた…。


「おいサーイェ、大丈夫か?」


 異変に気が付いたルーカス隊長がふらふらしている私を支えた。私はハァハァと息が荒くなってきた。


「…サーイェ、落ち着いて呼吸をしろ」


 ルーカス隊長は私を座らせ背中をゆっくり押した。落ち着けと言われても苦しいから息が荒くなる。


息を吸うのも苦しくなるのだが、止めても苦しいから結果吸ってしまう。


 だんだん手が痺れてきた…。


「息を吐く事を意識してゆっくり呼吸をするんだ」

「ハァッハァ!」

「大丈夫、良くなるから」

「ハァッハァッ‥ハッ!ハァッハァッ…ハァ‥ハァ…」

「そうだ、その調子」

「はぁ…はぁ…はぁ…」


 ルーカス隊長は苦しむ私を落ち着かせるよう抱き締め、優しく言葉を掛けてくれたお陰で、しばらくしてから私は落ち着き始めた。


「もう‥大丈夫です…」

「ん」


 ルーカス隊長は前に戻るとまた背中を優しくさすってくれた。


「大丈夫か?」

「はい…ありがとうございます…」


 私はお礼を言ったが、ルーカス隊長は複雑な表情をした。


「こんな状態で本当に陛下に会えるのか?」

「……会わなきゃ、テレウスさんが釈放されないんでしょう?」

「そうだが、その様子じゃ今会うのは難しいだろう?」

「…会うだけ会います。顔を見たら、すぐに帰りたいです」

「ならもう少し休んだらどうだ?」

「いえ、とっとと終わらせたいので行きましょう」

「……」


 決意が揺らぐ前に。


 ルーカス隊長を見据えると、私の意志が伝わったらしく、それ以上は何も言わなかった。


「立てるか?」

「はい‥」


 私はルーカス隊長から差し伸べられた手を取り、立ち上がった。


「辛いようならいつでも言え。ふらつくなら俺を支えにしても構わない」


 わざわざ言ってくれる辺りに、ルーカス隊長の優しさを感じた。


「じゃあ、あの…服、掴んでてもいいですか?」


 手を握るとか腕を組むとかは恥ずかしい。これくらいの距離が私達に相応しいと思う。


「ああ。好きなだけ掴め。ただし脱がすなよ」

「脱がしませんよ…」


 ルーカス隊長がクスリと笑いながら軽口を叩いた。そのお陰で、少し私の緊張が解れた。

 私はルーカス隊長の背中の服を掴むと頷くと、ルーカス隊長も頷き返した。

 私達は無言のまま歩き出した。先程までの嫌な緊張感はない。


 きっと大丈夫。早く、終わらせよう。








「黒鷲騎士団三番隊隊長、ルーカス・フォンド。陛下の命によりサーイェ・アマーノゥを連れてきた」

「御苦労様です」


 衛兵の許可が降りると扉が開き、私達は謁見の間に足を踏み入れた。


 ルーカス隊長が前を歩き、私はその後ろでルーカス隊長の服を掴みながらついていく。まるで子供の様だと思うが、こうでもしなきゃ私は歩けない。

 この手を離したら、私は歩みを止めるだろう。


 謁見の間には既に陛下とザビーがいた。ザビーはいつも通りの鉄仮面だが、陛下を見た瞬間、私は目を見張り、思わず歩みを止めた。

 高い玉座に座っている陛下が、少しやつれていたのだ。綺麗な顔立ちだがいつもより顔色が悪く、目の下に隈も出来ていて病的だ。そして左頬には痛々しく腫れ上がり、痣が出来ていた。何があったの?

 陛下を凝視していると、陛下は心底安心したような表情を私に向けた。

 それは暖かで、少し泣きそうな笑顔。



 何で?どうしてそんな顔するの?

 やめてよ!私は憎みたいの。そんな顔されたら…どうすればいいのか分からなくなるじゃないか!


 ぎゅっと強く拳を握ると、ルーカス隊長に小声で呼び掛けられ、我に返った。


「サーイェ、大丈夫か?」

「…はい」


 少しの我慢だ。早く終わらせよう。

 その旨を視線で伝えると、ルーカス隊長は頷き、再び歩き出した。


 少しだけ前まで歩くと、ルーカス隊長が止まり、軽く腕で私を制して、止まれの合図をして跪いた。私もそれに倣い、ルーカス隊長の服から手を放して少し遅れて跪いた。


「黒鷲騎士団三番隊隊長、ルーカス・フォンド、行方不明だったサーイェ・アマーノゥを無事、捕獲しました。牢獄に収容されているテレウスの釈放を御願い致します」


 ルーカス隊長の報告を受け、陛下は落ち着いた声で答えた。


「二人とも、面を上げよ」

「……」


 陛下の命令通り、私達は顔を上げて立ち上がると、陛下も立ち上がりゆっくりと階段を降りてきた。



「城から出て行ったと聞き、肝が冷える思いだった」

「……」

「サーイェ」

「……」


 自然と服を掴んでいる手に力が入る。そして陛下は床に降り立つと、ゆっくり私達の方に近付いてきた。


 やだよ、来ないでよ。


 私の気持ちとは裏腹に、陛下はどんどん近付いてくる。私はルーカス隊長を盾に、背中に隠れた。


「サーイェ、来い」

「……」


 私が沈黙していると、陛下は苛ついて語気が強くなった。

 そして私を掴もうと近付いてきたので、私はルーカス隊長の服を掴み、ルーカス隊長を盾にして後ろに逃げる。

 ごめんね、ルーカス隊長。


「来ないで下さい!」

「…サーイェ」

「私なら無事です、だから早くテレウスさんを釈放して下さい!」


 私は陛下の顔を見ず、捲くし立てるように言った。これだけ言うのにもドキドキしてるなんてダサいな…。

 沈黙していると、陛下の冷えた声が聞こえた。


「ルーカス、そこを退け」


 思わず顔を上げると、陛下の視線はすごく冷たかった。普段の陛下からは考えられないくらいで、部屋の温度本当に下がったんじゃないかと思った。まるで突き刺さりそうだ。

 私は怖くなり、ルーカス隊長の服を掴む力が強くなった。握り過ぎて手が痛い。



「来ないでって言ってるじゃないですか…!」

「サーイェ、本当に悪かった。もう二度とあの様な事はしない。約束する。余を、赦してはくれないか?」


 陛下は悲痛な声で私に許しを求めた。私は胸が痛くて顔が歪んだ。


「…無理です。赦せる訳無いじゃないですか。好きでもない男に犯され掛けたんですよ?しかも…」



 あいつを汚した。

 それが一番悔しい。


 私は歯を食いしばった。


「…最初は望まなかったにしろ、衣食住を提供してくれた陛下には感謝しています。だから騎士としての仕事はちゃんとやります。だけどもう二度と、私に近寄らないで下さい」

「サーイェ…」


 渦巻く感情を抑えながら、なんとか一番言いたかったことを伝えた。しかし陛下は諦めてはくれなかった。


「確かに簡単に許せる事ではないのは重々承知だ。お前が望む物があれば何でも与える。だからどうか赦してくれ」


 ふざけんな…今度は物で釣るわけ?

 そう言う問題じゃないんだよ!

 これ以上軽蔑させないで!



「これ以上、話す事はありません」

「サーイェ…」


 私は震えそうな声で告げた。重い沈黙が続く中、ルーカス隊長が口を開き私をフォローしてくれた。


「陛下、サーイェは疲労で体調を崩しております。先程も倒れかけましたが、テレウスを助けたい一心で陛下と御対面しております。何卒、一刻も早くテレウスの釈放とサーイェの休息を御願いします」

「……」


 ルーカス隊長の頼みに、陛下は何も言わなかった。再び沈黙が続いたが、カツカツと階段を降りる音が聞こえた。



「陛下に代わりテレウスの釈放と退室を許可する」


 ザビーの抑揚のない声。普通なら冷たく聞こえるが、いつもと変わらない声音が逆に私を安心させた。


「陛下、貴方にも休息が必要です。ここ数日、食事も睡眠もまともに採らず、治療も受けようとしない。そろそろ本格的に御身体に障ります」

「…………」

「陛下」

「サーイェ…」


 陛下はザビーの呼びかけを無視して私の名を呼んだ。


「余を、拒絶するな…」


 必死に搾りだした、まるで泣きそうな言葉に、私は胸が痛んだ。


 どうしろって言うのよ…!!


 再び私は心の中で葛藤した。


「陛下」

「…………」


 再びザビーが陛下に呼び掛けるが、陛下からの返事は無い。

 息が詰まるような重い沈黙の中、この空気には似つかわしくない大きな溜め息が聞こえた。


「陛下、失礼致します」


 バチン!!!


「うっ!!」

「なっ!!?」

「………」


 ぶったぁああ〜!!!!!ザビーが陛下をぶった!!

 正確には平手打ちだけど。ザビーの平手打ちを食らった陛下は床に倒れた。ザビーはそれを何も言わずにじっと見ている。ちょっと怖い…。

 陛下は放心して自分の打たれた方の頬に手を当てると、思いっきりザビーを睨んだ。


「ザビロニス…貴様何をする!?」

「何、とは?」

「余に手を上げるとは何事だ!」

「返事がないので、意識の有無を確認をしたまでに御座います」

「見れば分かろう!?余は起きている!」

「そのようですね。御無事でなによりです。それでは行きましょう」


 ザビーすげぇ。あんなに怒ってる陛下を前にして眉一つ動かさない。まぁ普段も動いてないけどさ。

 私達が呆気にとられていると、陛下の纏う空気が変わった。


「サーイェ下がれ!」

「うわぁっ!!」


 突然ルーカス隊長の後ろに下がらせられると、目の前が炎に包まれていた。しかしルーカス隊長が炎から守ってくれたので無事に済んだ。


「あ、ありがとうございます」

「ん」

「ルーカス隊長は怪我してないですか?」

「防御したから平気」


 よかった…。ルーカス隊長は返事をしながら私を徐々に後ろへ下げた。一体どうしたの?

 ルーカス隊長の横から顔を覗かせると、少し顔を歪め、赤い空気を纏わせた陛下がいた。


「貴様、余を愚弄しているのか?」


 こんなに怒りに満ちた陛下は初めて見た。部屋の中は暑いのに、私は恐怖で身体が震えそうになる。

 ザビーも攻撃を避けたようで、涼しい顔をして少し離れた所にいた。


「…国王に対してその態度、余程死にたいと思えるが?」

「滅相も御座いません」

「どうだかな」

「……」


 陛下とザビーはお互いに睨み合い、空気がピンと張り詰めている。先程とは違う緊張で私はドキドキしていた。

 先に沈黙を破ったのはザビーだった。


「陛下、貴方はいつまでこの様な小娘に現を抜かしているおつもりですか?」

「現を抜かしているだと?」

「この者に振り回され、体調を崩し、執務に支障を来しているようでは否定は出来ないかと」

「……」

「しかも、今は冷静な判断力も欠けていかと存じます」

「貴様…!!」

「貴方はこの国の王です。御自身の御立場をお考え下さい」


 ザビーが淡々というと、陛下からバレーボール程の大きさの炎の豪速球がザビーに飛んできた。ザビーが呪文を唱えて氷の壁を作り、炎を消すとそれは硝子のようにパリンと割れて、パラパラと砕けちった。


「十分分かっている!余は国王だ。余に指図するな!」

「指図では御座いません。忠告です。このままでは、嘗ての愚王と同じになりかねません」


 その言葉に陛下はキレた。


「黙れ!!!」

「わっ!」


 陛下が叫ぶと部屋が炎に包まれた。だが再びルーカス隊長が魔法でシールドを張ってくれたので炎は当たらなかった。

 けどあっつい!!部屋燃えちゃわない!?

 きょろきょろと部屋を見渡したけど、部屋に炎は燃え移ってはいなかった。不思議だ。

 陛下を見ると、先程より強く光り輝く赤を纏い、結ばれていた髪が燃え上がる炎のようにうねっていた。まるで髪自身が意志を持っているようだ。


 怒りで我を忘れてる…!!ガチで!ふざけてないからね!陛下!そんな界王拳みたいなものしまって下さい!!


「余はアルフェルドとは違う!!どこが愚かと言うのだ?誰かを想うことが愚かな行為だと貴様は言うのか!?」

「違います。女に執着して御自分のすべき事を疎かにする事が愚かだと言っているのです。陛下、御自分の価値を御理解下さい。貴方が倒られるのならば、この国も倒れる可能性あるのです」


 陛下の纏う赤が揺らいだ。


「この者を気に掛けた事によって、陛下自身やこの国を危険に晒すと言うならば、私はこの者を殺しても構わないと考えております」

「えっ!?」

「その様なことは余が許さぬ!!」

「ならばきちんと国王としての職務と責務を御果たし下さい。この小娘を側に置く事でそれが出来るのならば、私はこの者を弄ぼうが監禁しようが性奴隷にしようがお好きにして構いません」

「ちょっ!!何ですかそれ!?」

「それではアルフェルドと変わらぬ!!」

「性格が破綻していようが結果が全てです。それが嫌なら繋ぎ止める方法をお考え下さい。媚薬を使って身体に教え込ませるとか、薬漬けにするとかいっそのこと催眠術でも掛けては如何ですか?」

「ちょっと待てぇええー!!!」


 私はついに叫んでしまった。


「何だ小娘?」

「何だじゃないですよ!!さっきから聞いていればおかしいですよね!?監禁とか性奴隷とか外道じゃないですか!!私の意志が全くありません!」


 余りにもムカついてザビーに詰め寄ると、明らかに面倒臭そうに私を見た。


「だから何だ?王の権力を持ってすれば、この様なこと簡単だと言ったはずだが?」

「だからっておかしいですよ!!無理矢理そんな事させるなんて!」

「私は陛下が執務に集中出来るなら貴様がどうなろうが構わん」

「私は構います!!ほんとに城出ていき」


 バシンッ!!


「ッツ!!」

「サーイェ!」


 左頬に鋭い痛みが走り、思わずよろけた。どうやらザビーにはたかれたらしい。目を丸くしてザビーを見ると、初めて会った時のように冷たい氷のような視線が私を貫いた。


「甘ったれるな」

「!」


 思わず私はビクついた。初めて出会った時のように鋭く、怒りが強く伝わってきた。



「貴様も自分の身の程を弁えよ。自ら庶民がいいと望んでおきながら、この様に陛下に懇意にしてもらい、庶民以上の待遇を受けているのにまだ我が儘を言うつもりか?」

「……」

「衣食住の安定した生活、騎士の中でも安全な仕事をし、支えてくれる仲間もいる。確かに陛下は無理矢理貴様を犯そうとはしたが、その事については陛下御自身が病むほどに反省している。それにも関わらず貴様は許す余地も与えない」

「……」

「いいか、世の中には子供でも泣き言も許されずひたすら働き続けなければならない者もいれば、人種差別により常に命の危険に晒されている者など、貴様以上に理不尽な生活を強いられている者など大勢いる」

「……」

「陛下を許す、許さないのは貴様の自由だ。だが今まで受けた恩と、自分の立場、境遇をよく考えた上で判断するんだな」

「…お‥」

「何だ?」

「お義母さま…」

「誰が貴様の義母だ」


 しまった!!つい口に出てしまった!!!だってビンタしてこんな説教してくれるなんてお義母様としか…!


子『い、痛い!何するのよこのクソババァ!』

義母『馬鹿な子ね…お義母さんの手だって痛いのよ!』

 …みたいな。


 はっとして周りを見ると、ザビーは青筋を立てて私を睨み、陛下は呆けて、ルーカス隊長は笑うのを必死で堪えていた。そんなにぷるぷる震えてたらモロバレだよ!!

 は、恥ずかしい…。


「…まあいい。よく考えたうえでも許せないと言うならば」


 そこで一旦区切ると、ザビーの氷の視線に鳥肌がたった。


「貴様を殺す」

「えぇっ?!!」


 殺害予告!?脅迫じゃん!!全然良くないよ!!完全に怒ってるじゃないか!!


「城から出た瞬間、この世に生まれてきたこと後悔する程、無惨に「もう良い、ザビロニス」

「……」


 ぺしんと陛下はザビーの頭を叩いた。ザビーが叩かれるなんて…!!

 その事に目を丸くしながら 陛下をちらりと見ると、先程まで纏っていた赤い輝きは消えており、少し寂しそうな笑みを堪えて私を見つめた。


「サーイェ、お前が余を許さなかろうが、余はお前を責めることはしない。ただ、余が反省していることを理解してくれ」

「…………」

「ザビロニス、心配を掛けたな。行くぞ」

「は」


 陛下は身を翻すと、扉に向かって歩き始めた。




 陛下、すごいな…。自分の過ち認めてちゃんとそれを受け止めている。それに比べて私は…。悔しくて私は拳を握り締めた。


 本当に、ザビーの言う通りだ。私は自分で思っている以上に恵まれていて、甘ったれている。…このマンモーニ!!しっかりしろ!


 私はもう少し、陛下に歩み寄るべきかもしれない。目を伏せ気持ちに整理をつけると、陛下を呼び止めた。


「あのっ!!」


 急に大声で呼び止められた陛下は、びっくりしたように私を見た。


「…何だ?」

「あの、私は陛下を赦せません!恨んでます!」

「……」

「だけどこのまま陛下をずっと恨むのは辛いし…多分後悔すると思うんです。だから、えーと…」


 だから…どうしよう?その後のこと大して考えてなかった!必死に考えてあたふたしていると、ぽんと肩を叩かれた。振り向くとルーカス隊長が黙って私を見つめて頷いた。…うん、よく分からん!

 だけど何故かそのお陰で気持ちも落ち着き、私も頷き返した。


「今は赦せないけど…いつか、陛下を赦せるよう努力したいです」

「……」


 すごく我が儘なのは解っている。だけどこれ以上の譲歩は今の私には無理だから…。


 頑張って陛下の目を見つめると、陛下は柔らかく微笑んだ。



「有り難う」



 その笑顔が優しくて美しいから、私は思わず見惚れてしまった。


「…では、余もサーイェから信頼を回復してもらえるよう努めよう。今日はもう休め。顔色が悪い」

「…お互い様です」

「そうか」


 陛下はくすりと笑い、軽く手を上げるとザビーを連れて部屋から出て行った。




 私は陛下が出て行くのを見届けると、大きく息を吐いて安堵した瞬間、体から力が抜けた。


「ぁ」

「っと」


 私が地面に崩れ落ちる前に、ルーカス隊長が私を受け止めた。


「あ、ありがとうございます」

「お疲れ様。よく、頑張ったな」

「…はい!」


 ルーカス隊長がポンポンと私の頭を撫でるのを満面の笑顔で応えた。するとルーカス隊長はじっと私を見つめるので、何事かと考えた。

 ……あ!私の笑顔がキモい件ですね!急いで顔を引き締めようとすると、ほっぺをむにっと摘まれた。


「…らにしゅるんれすか!」


 キモいからってほっぺ摘むなよ!余計ブスになるじゃないか!!

 むきっ!と怒ると、ルーカス隊長はまるでいたずらっ子のように爽やかに笑った。


「……!」



 普段の蠱惑的なフェロモンは無く、無邪気な笑顔。不意を付かれて私は固まってしまった。

 ルーカス隊長はくいくいっと私のほっぺを軽く引っ張ってから私を放した。


「じゃあ、俺達も行くぞ」

「…ぁ、はい」


 私は硬直が溶けると、歩き出すルーカス隊長の隣に慌ててついて行った。



 一応元ネタ解説


・界王拳―DBの主人公が界王様に教わった技。使用すると、体が赤いオーラに包まれ、界王拳の倍数と同じだけ戦闘力が上昇する。





 過呼吸の応急処置について


 過呼吸の応急処置で有名なのが、紙袋を口に当てて呼吸をするというものですが、紙袋をもたせて呼吸をさせると 二酸化炭素不足のまま呼吸を続けているつもりが、実は酸欠になってしまう大きな危険があります。


 過呼吸の正しい応急処置は、まずは、呼吸のリズムを整える。

ゆっくり吐くことを意識することで、二酸化炭素不足を解消できます。


1. 息を吐くことを意識する

2.「吸う:吐く」が1:2になるくらいの割合で呼吸する

3. 1回の呼吸で10秒くらいかけて吐く

(息を吐く前に1~2秒くらい息を止めるくらいがベター)

4. 胸や背中をゆっくり押して、呼吸をゆっくりするように促す


過呼吸の状態から ゆっくりでいいので少しづつ元の呼吸のリズムに戻していくことが先決。あわてないで そばにいる時は やさしく背中をおしてあげるだけで充分だそうです。


 内容はほぼコピペです。

 板井虎も専門知識がある訳ではないので、詳しくはためしてガッテン等の信頼のあるHPや本をご覧下さい。

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