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いつも見ていた世界  作者: 板井虎
第一章
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第2話:未知との遭遇~嫌な予感ほど当たるもの~



「‥ん‥‥」

 

 いったぁー‥あたま超ガンガンする…。これは絶対あたま打ったなぁ‥なんか右側いたいし‥‥。う゛っ!!‥きもちわるい…吐き‥そう……


 私は酷い頭痛と吐き気にうなされながらなんとか動き始めて目を開くと、周りは真っ暗だった。なんで暗いの‥?…それより早くせんめんじょ…。


 それよりも問題はこの吐き気だ。頭痛も酷いがこのまま玄関で吐く訳にもいかない。

 私は地面に這いずり、渾身の力を振り絞って生まれたての小鹿のように立つと、壁に手を支えに歩き始めたが、壁はやたらゴツゴツとしていた。

 ‥こんなに手触りわるかったっけ…?‥‥うっ‥!そろそろマジやばい…。

 

 息も荒く、頭を抱えてふらふらしながらもなんとか洗面所に向かおうとしたが、周りが暗くて洗面所どころか足元もよく分からなかった。

 誰だよ明かり消したの…!!みんな‥出かけっちゃったわけ…?

 壁にもたれて周りを見ると、ぼやけて周りが真っ暗にしか見えなかったが、遠くが白く光っていた。あ‥あれせんめんじょの蛍光灯じゃん…。あそこだ‥‥。

 

 私はふらつき今にもこけそうだったが、なんとか歩き始めた。ゆっくり歩いているけど、思ったより早くに着きそうだ。だけど歩いている速さと近づく速さを考えると明らかにおかしかったことに、その時の私は気がつかなかった。


 ようやく着いた…と思ったら、それは人の形をしたものだった。憔悴しきった顔で上を見上げると、白く光っている人と目が合い、じっと見つめてきた。

 

 

『大丈夫?』

 

 不思議そうにその人が尋ねてきたけど、私はもう限界だった。

 

「う゛っ・!!…ぐふぁあ゛っ…!!!」





 初対面の人の前で…………………リバースしちゃいました。

 私は初対面の人の前で盛大にリバースしていると、白い人は私の横に来て背中をさすってくれました。本当に申し訳ないです…。

 しばらくゲーゲー吐いて、腹の中の物を全部出し終わると、白い人は私の顔を覗き込んできてまた同じ質問をした。

 

『大丈夫?』

 

 

 いや‥だいじょうぶ‥じゃない…です‥‥

 

 ぜぇぜぇはぁはぁ言いながら私は白い人を見た。頭痛も酷くなり意識が朦朧としてきたので白い人がぼやけて見える。

 

『そっか、じゃあ少し休みなよ』

 

 では・・お言葉に甘えます…。

 私はなけなしの理性で自分の嘔吐物の反対側に転がるように倒れると、意識を手放した。

 

 

 

「う…ん…」

 

 

 私は意識が戻り目を開けると、やはり周りは暗かったが先程よりかは暗くなかった。…何で?

 まだガンガンする頭を抑えながらけだるい身体をのろのろ起こすと、左側が明るいことに気付いた。左を向くと…さっきの白い人がいました。

 

 

「あ、」

 

 暗い森、広がる自然、目の前には湖、そして白い人…。

 このおかしな状況に私は痛い頭を抱えた。何で私はこんな大自然に囲まれてんの?しかもこの人発光してるし。まぁおかげで周りが見えるから役に立つけど、普通光らないでしょ!?

 もしかして妖精さん?妖精さん‥アハアハアッハッハ~…はぁ、嫌な予感がする。

 そんな失礼な事を考えながら現実逃避していると、白い人は私の顔を覗き込んできた。

 

『大丈夫?』

「あ、はい。さっきよりかは‥大丈夫です…」

『まだ大丈夫じゃないの?』

「えっと‥まだ頭痛がひどいですし、少し気持ち悪いので…」

『そっか、じゃあ少し休みなよ』

「はい…」

 

 優しいなぁー…て、この人さっきも同じこと言ってなかったっけ?ん?さっき‥‥あっ!!!

 私は頭が痛いのも忘れて顔を見上げた。

 

「っつ!!!」

『?』


 やっぱり痛い…けどそんな事言ってる場合じゃない!!!


「あの、先程は本当に申し訳ありませんでした!初対面にも関わらず盛大にリバ・・嘔吐してしまって不愉快な思いをされたかと存じますがどうぞお許しください!!!」

『どうして謝るの?』



 頭を下げた私の上から気の抜けるような純粋な声が聞こえた。


「え、だからさっきの…」

『気にしてない』



 ……なんて懐の深いお方だぁああ!!!

 私は白い御方(もう人なんて呼べない!!)に感動していた。初対面なのに目の前でリバースしてあまつ意識が戻るまで一緒に居てくれる面倒見のいい人には初めて出会ったよ!!!


「ありがとうございますっ‥!!」

『うん』

 

 私が顔を上げて白い御方を見ると、白い御方は(なんかよく分かんないって感じが出てるけど)無邪気に微笑んでいた。…なにこの人、なんて素晴らしく美しいのにこんな可愛らしい笑顔をするの!!!

 今までちゃんと白い御方を見てなかったから気付かなかったけど、白い御方はかなりの美人さんだった。


 肌は陶器のように白くすべすべ。もちろんニキビやシミ、そばかす、ホクロなんて皆無だ。パッチリとした大きな目にはトパーズが埋め込んであるのか!…と思うほど綺麗で透き通っている。絹のようにつやつやでサラサラした真っ白な髪は、超ロングだけどストレートですごく綺麗。私は天パがひどいから余計に羨ましいのさ!!

 顔は中性的な感じで、美人で麗しく、可愛らしさも備えているなんて素敵過ぎる!!!

 テレビでも見たこと無いよこの美しさ!!!ていうかこの御方自身発光しちゃってるけど、もうそれすらこの御方の美しさを際立たせているから気にしない!

 服も真っ白でゆとりのある布がヒラヒラしてるのに、あまり露出してないのがこの御方の神々しさを演出してるよ。


 私は体を動かしたりしなかったが、白い御方の美しさで脳内暴走寸前だった。そして白い御方の無邪気なニコって笑顔にノックアウトされた。

 もうダメ…これからは畏れ多くてご尊顔を拝見できません…。恋する乙女の如く下を向いてもじもじと恥らっていたが、ハッと思い出した。

 そういえばゲロはどこだ?てか私臭くないかな?


 まだ頭痛が酷くて動くのも億劫だったが、臭いが気になるので白い御方からちょっと離れると、不思議そうな顔をされた。


『どうしたの?』

「いや、私は先程貴方様の前で盛大に嘔吐してしまったので、臭いかなと思い、あなた様にこれ以上不快な思いをされないように距離を…」

『さっきのやつはもう無い』

「え?」

『さっきの所は寝にくいと思ったから、こっちに移動した』

「移動って‥えっ?!!」


 さっきは木々の中、今は湖畔の芝生の上。そうだよ、 こ こ は ど こ ?

 あー、嫌な予感がどんどん確信に近づいてきている気がする…。


『口の汚れも無い』

「あ、ホントだ」

『だから臭くない』


 そういうと白い御方は優しく微笑んで私の隣に座りなおしました。

 …なんて優しくて美しい御方なんだぁああ!!!

 初対面なのに目の前でリバースしてあまつ意識が戻るまで一緒に居てくれてさらにゲロの処理までしてくれる面倒見のいい美しい御方には初めて出会いましたよ!!!

 私は再び感動に浸っていた…が、流されて忘れかけていたけど

 

「…ここはどこですか?」

 

 私は下を向きながら白い御方に尋ねた。白い御方のお顔は見ちゃダメ。私が白い御方のご尊顔を拝見するのはおこがましいよ。


『ここは、【神聖樹海(しんせいじゅかい)】と呼ばれている場所』

「しんせいじゅかい?」

『うん』

 

 …どこだそれ?

 

『だから神聖樹海』

「あ、はい‥」

 

 

 神聖樹海って何?どこ?それっておいしいの?なんで家じゃないのさ。そうだよまずそこからだよ。

 私は奈由と遊びに行こうとしていた、うん。それで奈由が迎えに来てくれたから出かけようとしたら発作が起きて、気が付いたら森の中。そして白く発光する神々しい御方との遭遇。


「………」




 オワタ。もうこれは、あれしかないよね?


『何が終わったの?』

「あぁ‥なんかもう色々あり過ぎて私の理解の範疇を超えた現象が起こり、もう夢なんじゃないのかっていうか夢であって欲しいという感じになっておりまして…」

『夢じゃないよ』

「え?」


 私はもうご尊顔を拝見できないとか言ってたくせに、思わず白い御方のご尊顔を拝見してしまった。

 

『ここにいるよ』

「だけど…」

『夢なら寝て、起きたら醒めるよね?』


 ‥‥そうだよ夢オチ!それがあったじゃないか、ナイス白い御方!!もうそれに賭けるしかない!!!


『じゃあ少し休もう?』

「…はい」



 正直もうこれ以上頭が働かなかった。今まではなんとか我慢していたけど、頭痛も激しくなりもう何も考えたくなかった。

 私は頭を抱え、白い御方の顔を見ないように、私の顔が見えないように横になって目を閉じた。するとふわりと暖かい温もりが頭を撫でた。


『おやすみ』



 優しい声に思わず目頭が熱くなった。

 

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