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いつも見ていた世界  作者: 板井虎
第二章
29/57

第4話:立ちはだかるは…

「はッ!」


 私は剣を横に大きく振ると、突風を起こしてガイシスさんを遠く離れた後ろの壁際まで吹き飛ばした。だけどガイシスさんはそのまま壁ぶつからず、踏ん張って耐えた。

 ふむ、こんな感じか。じゃあもうちょっと強めにー‥オラァ!!

 今度は竜巻を起こす勢いで剣を振りガイシスさんに向けて飛ばすと、流石のガイシスさんも吹き飛び壁にぶつかった。やっぱり魔法は私のイメージと思いの強さで変わるみたいだ。こうなれ!とか思っていると、勝手に発動する。だから多分私に攻撃が当てようとしても、私がそれに気付いていればあんまり酷いダメージにはならないんじゃないかな?


 ≪落ちろ稲妻!≫


「うぁっ!!」


 私が魔法の解析をしていると、いきなり全身に衝撃が走った。くそぅ、不意打ちだからちょっと痛いじゃないか!遠くに吹き飛ばされたガイシスさんが楽しそうに笑いながら、ゆっくりと私の方に向かって歩き出していた。どうやらガイシスさんが雷の魔法を使ったらしい。軽く体が麻痺して変な感じ。


「ほら、座ってないでどんどんいくぞ!」


 ガイシスさんタフだなぁ。私はまだ痺れの残る体を起き上がらせると、魔法で体を軽くして一気に後ろへ飛んだ。とりあえず体の痺れが取れるまで、他の魔法を使って時間稼ぎでもするしかないな。私は距離をとりながら、サッカーボール大の炎を数個作り、ガイシスさんに向けて飛ばした。


 ≪疾風よ、我が剣の力となり全てを断ち切らん!≫


 そう叫ぶと、ガイシスさんの剣に風が纏い、私の飛ばした炎を綺麗に斬って攻撃を避けた。

 かっこいいー!あの中二病な言葉はどうかと思うけど。私、詠唱が必要なくて本当に良かった。このままじゃすぐに追いつかれるので、私は1m程の氷柱を大量にガイシスさんに向けて飛ばした。しかしそれも剣を薙ぎ払われて氷柱が砕かれてばらばらと地面に落ちていく。


「残念だが全部はずれたな」

「そうですね。だけどこれでいいんです」

「何だと?」

「すみませんが少し大人しくしていて下さい」

「っ・・!何だ?」



 私を追いかけるガイシスさんはその場所から動けなくなった。何をしたかと言うと、忍法・影縫いの術-!よく忍者がくないを影に向けて投げて地面に突き刺して、敵をその場から動けなくするという術ですね、はい。くないが無いので代わりに氷柱を投げてみました。本当はシカ●ルみたいにやってみたいんだけどね。

 さて、痺れも取れたし他の魔法も試してみますか。属性のある魔法は出来るけど、無属性の魔法も出来るのかな?何だろう…エネルギー波とでも言えば良いのかな。そう、かめ●め波みたいな!かめは●波…●Bを見ていた人なら一度は出してみたいと思う技。今なら‥出来るかな?でもなぁー‥うーん…。

 一人で葛藤している間に、ガイシスさんは炎の魔法を使って氷柱を溶かして脱出をしようとしていた。あー、早くしないと逃げられちゃう。どうしよう…。私はチート、チートなんだ。やれば‥出来るはず!

 私はゴクリと唾を飲み込むと、私は剣を納めると両手を左の腰元に持っていき、気を貯めた。


「か~め~…」


 あ、手の中がぽわ~ってしてきた!集中するとどんどんエネルギーが溜まってきているのが分かる。良い感じかも!


「は~め~…」


 氷柱を溶かしていたガイシスさんは私が変な事をしているのに気がつき、炎を溶かすのを止めた。どうやらエネルギーを溜めている私を危険だと判断したらしい。


 ≪我らを護るハハなる大地よ!我に慈あイの加護を授け給エ!!≫


 ガイシスさんが呪文を唱えると、彼の周りにバリアのようなものが現れた。呪文がカタコトだったけど大丈夫か?まぁどっちにしろそんなバリアじゃ防げないよ!何てったってか●はめ波は山一つ吹っ飛ばせる程の破壊力だからな!

 私の掌の中でエネルギーがバレーボールを超えるほど溜まった。

 よし!●仙流奥義を受けてみろ!!いけっ!!


「波――っ!!!!  ぽすっ  ………は?」


 私が両手を前に突き出してかめはめ波を出そうとした瞬間、掌の中のエネルギーが急に消えた。



 えー何でー!?何で出ないの?!さっきまで手の中でエネルギー溜まってたの何だよぽすっ…って!やっぱり●仙人の下で修行してないから出来ないのか?!!それとも著作権法違反か?うわぁーんそんなぁ~!!!

 私がてんぱっていると、その様子を見ていた皆は目が点だった。こいつ何してんの?みたいな。あ、私あのポーズのまんまだ。

 …はーずーかーしー!!!痛い痛い痛い!!あーもー馬鹿!20歳にもなってかめはめ波を出そうなんてガチでヤバイだろ!!

 海外ではかめはめ波大会があるけど、彼らほどなりきれてない!ていうかなれる訳がない!!



「うぅ~…」


 恥ずか死ぬぅ~…。顔が熱い。顔から火が出るとか言うけど本当に燃えてるように顔が熱い…。

 私は唸り声を上げ、真っ赤であろう顔を隠してその場に座り込んでしまった。


「サーイェ、どうしたの!?」

「どこか痛むのかい!?」


 ええ、もう痛過ぎて心が悲鳴を上げてますよ…。あぁ‥何でかめはめ波なんてやろうとしてしまったんだろう…。そうだよさっき中二な呪文を唱える必要がなくて良かったなんて思ってたのに、何でそれ以上に痛い事してんだよ!!いくら憧れと好奇心が疼いたからって…。

 うぅ、チートだから何でも出来ると思ったのが間違いだったよ。調子に乗ってごめんなさい。だけどそれが出来るのがチートじゃないのか?

 はぁ、ここに来て初めて自分はエセチートだと言うことが分かったよ…。みんなが元ネタ知らないからまだマシ‥いや、それ以前の問題だ。知る、知らないじゃなくて、いい大人としてやってはいけない一線を越えてしまった…。もう駄目だ。オワタ。


「おい、大丈夫か?」


 …ガイシスさん、氷、溶かせたんだね。みんな心配して私の所に来てくれるのは嬉しい。嬉しいことだけど…ぶっちゃけ今は来て欲しくない。ていうか散れ。


「‥大丈夫ですけど大丈夫じゃありません。だけど大丈夫なんで放って置いてください」

「どっちだよ」

「そこまで落ち込まなくて良いと思うけど…」

「いえ…落ち込む事なんです。私の沽券に係わる事なんです。ええ、もう本当に…」

「そんなに辛いなら、私が慰め「結構です」

「…釣れないな」


 アドニスさんは残念そうにふぅ、と溜息を吐いた。誰が釣られるか!お前はウ●タロスか!!だったら大人しくデンラ●ナーでコーヒー飲んでろ!!!


「ほら、いつまでも落ち込むな」

「うぅ~…」

「座り込んでたら試験が出来ないだろう」


 恥ずかしい…。まだ顔が熱い。絶対赤いよ。だけど試験しなくちゃいけないし…。もう最悪だ。仕方なく私はゆっくり顔を上げると、じーっとガン見されていた。もういやー!


「そんなに見ないで下さいよ!」


 私はまた顔を隠した。何でこんな恥ずかしい目に合わなければいけないんだ!あぁもう穴があったら入りたい!!塵になって消えたいわ!!!



「あ、すまん‥」

「うん、ごめん…」


 ガイシスさんとロイスさんは決まり悪そうに謝ってた。何が思わずだ!羞恥プレイなんて望んでないっつーの!!


「だけどそんな風に可愛らしく頬を染めて潤んだ瞳で見つめられたら、誰だって君に見惚れてしまうよ」





 ……はぁ?アンタ馬鹿ぁ?私は呆れてアドニスさんを見上げると、彼はニッコリと微笑んだ。


「そんな愛らしい瞳に見つめられたら、僕の方が照れてしまうな」

「……」


 この冷めた視線をそんな風に受け止めるなんて、随分おめでたい思考回路だ。なんか一気に冷めたわ。一瞬でこの恥を消し去るほどのクサイ台詞を言えるなんてすごいなお前。もういい、この事は忘れよう。


「心配を掛けてすみませんでした。ガイシスさん、試験を続けましょう」

「え?ああ、そうだな」


 よっこいせっと。もうこうなったらとっとと終わらせよ!


「わっ!サーイェ!私の側で剣を振らないでくれよ!!」

「あーすみません、つい勢い余ってしまって」


 私は素早く剣を引き抜いたその勢いでアドニスさんに剣を当てようとしたけど、残念ながら避けられてしまった。ちっ。


「次は気をつけて」

「はい」


 次は避けられないように気を付けますよ。アドニスさんは肩を竦めると、ロイスさんと一緒にトリスさんのいる所へと戻っていき、ガイシスさんとは距離を取った。

 あー、もう。アドニスさんのせいでイライラしてきちゃったじゃないか。とりあえず殴りたい。先程の醜態を思い出すと、私の中でむくむくと怒りが膨らんできた。自分で自分を殴りたい。あの記憶を消去したいわ。

 だけど本当に何で出なかったんだろう?うーん、他にも版権物をやってみようかな。だけどさっきみたいになる可能性が…。いや、もうこれだけ恥かいたんなら何しても恥ずかしくない!最初からクライマックスだ!


 (魔●剣!!)


 私は超こっそりと技名を呟いた。テイル●シリーズでお馴染みの技!思いっきり剣を振ったけどやっぱり出ない!!だが、今回の私はさっきとは違うのだ!私はそのまま剣を振った勢いで一回転して、大きな風の刃を飛ばした。

 ふぅ、失敗したのを上手く誤魔化せた。それにしても…こんな所まで著作権法が働くなんて思ってもみなかったよ。異世界なんだからいいじゃないか!ネズミの国じゃないんだからそれくらい許してよ!!!

 心の中で叫んでいる間にガイシスさんが近づいていたので、地面を剣で抉り、ガイシスさん目掛けて地面を隆起させた。やっぱり技名を考えないと出来るんだよなー…。もういいや。版権技は諦めよう。ガイシスさんの足場を崩した瞬間、思いっきり剣を振り下ろした。何でも良いから当たれ!スッキリさせろ!!

 だけど私の願いは叶わず、ガイシスさんは地面に尻を着きながらも私の剣を受け止めてしまった。やっぱり力が強い。全力で振り下ろしているのにも関わらず、びくともしない。手がぷるぷるしている。


「残念だったなサーイェ」

「残念だと思うんでしたらっ‥大人しく当たって下さい!」

「それは断る。最初のしおらしさはどこに行ったんだ?」

「力を試す、良い機会、なんでしょ?」

「そうだな。じゃあその力で俺を倒してみろ!」

「うわっ!」


 ガイシスさんは勢いよく起き上がり私を押すと、バランスを崩した私は後ろに反り返ってしまった。もうガイシスさんは剣を振り下ろそうとしていた。やばい防御が間に合わない!!私は次に来るであろう痛みに目を瞑った。


「よっと!」

「あいたーっ!!」


 うぐぉ…!!よ、横腹はちょっ‥キツいっす…!私は思わず腹を抱えこんで悶えた。正面から攻撃が来ると思ってたら、ガイシスさんは私の横腹を柄で突いたのだ。軽く突いただけなのに横腹は痛い。地味に痛いんだよ地味に!!ぬぅ~‥!!!

 腹を抱えながらガイシスさんを睨むと、ガイシスさんは楽しそうに笑っていた。


「よくもやってくれましたね…」

「隙だらけなお前が悪いんだろ?」


 そういってガイシスさんは悶えている私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。くっそぉ~!舐めやがって!!てめぇは俺を怒らせた!!


「絶対に『あべし!』って言わせてやります…」

「何だそれ?」

「とにかくそれ位すごいやつを喰らわしてやるって事です!」

「そうか、じゃあ頑張れよ」

「言われなくとも!!」


 私は剣を横に振って周囲に風を巻き起こしてガイシスさんをふっ飛ばすと、今度は縦に振って雷を落とした。


「くっ!!」

「まだです!」


 私は剣をガイシスさんに向けると、ボールをイメージして気の塊を打ち込んだ。手加減したから多分バレーのアタックくらいにしかなってないと思う。だけどバレーボールって結構痛いんだからね!アタックNo.●を見るとよく分かるよ!!

 ガードの遅れたガイシスさん攻撃を全部受けて吹っ飛んだので、私は後ろの壁まで大きくジャンプして壁に着地した。カカ●先生、上手くチャクラコントロール出来るようになりました!褒めてください!‥って言っても誰も褒めてくれないんだけどね。さぁ…


「約束通り、すごいやつを喰らわしてやりますよ」


 全力でぶん殴ってやる!私は強く拳を握ると、宙を舞うガイシスさん目掛けて思いっきり壁を蹴った。


「オラッ!!!‥ってうわっ!!」


 ヤバイ!蹴りと思いが強過ぎた!!!


「ガイシスさん避け「ぬぐぉおッ!!!」

「ひでぶっ!」



 こ、こんなはずじゃ……!酷い悲鳴を上げてぶつかると、私達は無様に地面に落ちた。私はもう、死んでいる…そんな気分だ。ガイシスさんに『あべし!』って言わせたかったのに、まさか自分が『ひでぶっ!』って言うことになるとは…。もう泣きたい!




「‥確かに、すごいやつを喰らわしたな」

「…すみません」


 呆れたように言うガイシスさんに、私はまともに返事をする気力も無かった。もう痛い‥痛すぎる。心身ともに今までで一番痛いわ。体がじんじんする。だけど骨とか折れてはなさそうだからまだいいか。あー‥色々痛いし疲れたから動きたくない。



「サーイェ!ガイシス!2人とも大丈夫か?!」

「ガイシス!何をしているんだ!早くサーイェから離れろ!!」


 アドニスさんうるせー‥まるで私が危険物みたいじゃないか。まぁ間違っちゃいないけど。ミサイルみたいな捨て身のタックルはなかなか出来ないからね。私はカミカゼか?


「離れろって言われても、サーイェが退かなきゃ無理だ‥」

「え?」


 そういえば動くのがたるかったから気付かなかったけど、確かに地面じゃない感触。顔を上げるとガイシスさんと目がった。私、ガイシスさんに乗っかってる。


「………」


 私はさっとガイシスさんから退くと、土下座をして一息も着かずに謝罪をした。


「すみません捨て身の攻撃を受けて痛いのに更に重たい思いをさせてもうホントごめんなさい」

「いや、大丈夫だから気にしなくていい。最初に思いっきりやれって言ったのは俺だしな」

「だけど…」

「そうだよサーイェ、君が謝る事はないよ。悪いのはガイシスなんだから」


 アドニスさんは何を根拠に言ってるんだ。明らかに私が悪いだろう。


「ほらサーイェ、私が治してあげるから傷を見せて」

「大した怪我じゃありません。ただの擦り傷なので放っておけば治ります。先にガイシスさんを治して下さい。ダメージが大きいのはガイシスさんですから」


 私の怪我はさっきの捨て身のタックルで扱けた時の擦り傷しかない。雷も少しビリビリしただけで、そんなに痛いものではなかった。多分だいぶ手加減してくれたんだと思う。それに横腹は痛かったけどあの時だけだしね。それに比べてガイシスさんは風で吹っ飛ばされるわ、雷に打たれるわ、ボールで滅多打ちにされた挙句、捨て身のタックルをもろくらったからね。絶対痛いでしょ。


「ガイシスは放っておいても簡単に死なないから大丈夫だよ。それにトリスがやるからね」

「そうですか…」

「君は優しいんだね、サーイェ」

「は?」


 アドニスさんは優しく微笑むと私の手を取った。え、何?


「私は優しい女性は好きだよ」

「……」


 だから何だ。誰もアンタの好みなんて聞いて聞いてないんですけど。

 それに普通、怪我人は酷い方を優先するもんでしょ。あんたが優しくないだけじゃないの?あー、この人がいると毒舌が止まらない。

 気落ちしていると、アドニスさんに握られた手がふわふわと温かくなり、それが全身に行き渡ると私の体の疲労と傷は癒えていた。


「まだどこか痛い箇所はあるかい?」

「いえ、ありません。ありがとうございます」

「当然のことをしたまでだよ」

「はぁ…」


 キラキラとした笑顔のアドニスさんは少し‥いや、かなりかな。鬱陶しいけどやっぱり白騎士団長だけあるわ。

 前にアンヌに怪我を治してもらった時と比べるとかなり早い。まぁあの時はもっとぼろぼろだったけどね。

 ガイシスさんの方を見ると、トリスさんに怪我を治し終えたところだった。


「ありがとな」

「ああ」

「ガイシス」


 アドニスさんが真顔で立ち上がると、座っているガイシスさんを見下ろした。


「何故こんな事をしたんだ」

「入隊するに当たって必要だからだ」

「それは分かるよ。僕が言っているのは最後の事だ」

「最後?」


 最後ってタックルの事か?あれのガイシスさんの何が悪いんだよ。


「女性に跨ってもらう事だ」

「はぁっ?!」


 真面目な顔して何言ってんの!?ていうか問題はそこ?!


「いくら偶然の事故だからと言っても女性に恥を‥「黙れアドニス!!!」

「ぐっ!!」


 私が呆気に取られていると、トリスさんがアドニスさんの頭をぶん殴った。おぉ…ナイスパンチです。


「お前のその考えの方が恥だ!!」

「しかしトリス!これはとてつもなく重要な事だ!」

「重要も何も無い!大体お前はいつも…」


 それから二人の口論が始まり、やがて内容が跨るだの何だのから普段の行動やモラルの話になって行き、それをぽかーんと見ていると、ロイスさんが溜息を吐いた。



「サーイェ、この二人の事は気にしなくていいから」

「いつもの事だからな」

「そうですか…」


 ていうことはいつもアドニスさんは不謹慎っつーことだよね。アホくさ。



「それよりお前の入る隊は決めたからな」

「どこになったんですか?」

「三番隊だ」


 へぇ、三番隊なんだ。三番隊って確か付加魔法だっけ?


「お前は信じられないほどの魔力や俊敏さを持っている。だがその力を自分でも持て余しているんじゃないか?」

「そうですね…」

「だったらそれを最小限に抑えて有効に使った方が良いだろう。付加魔法を覚えれば、力の弱さもカバー出来る。それで自分の力が上手くコントロール出来る様になったら二番隊に、武術の腕も上がったら一番隊に入ってもらう」

「分かりました」

「三番隊の隊長はルーカス・フォンドだ。覚えてるか?」

「あ、はい。部屋の外で警護して下さった泣きぼくろのある人ですよね?」

「ああ。あいつは頭が切れるし人を見る目がある。考え方も柔軟だから問題は無いだろう」


 確かに参謀って言ってたね。私の中の参謀って地味なイメージだったから、説明されなきゃあんなにフェロモン垂れ流してる人が参謀だと分からなかった。目だけで妊娠させるとか言われてそう。うん。これも色々と危ないと思うから、悪いけどあんまり近寄らないようにしよう。


「隊についての詳しい話はルーカスにさせるから、お前は部屋に戻っていてくれ」

「分かりました」

「それからサーイェ」

「何でしょうか?」


 真面目な顔になって真剣みを帯びた声でガイシスさんは真っ直ぐ私を見据えた。



「今日からお前は我が黒鷲騎士団の一員だ。これからお前には様々な苦難が待ち受けているだろう。だがお前は一人ではない、俺たち仲間がいる。決して、誇りと自分を見失うな。心を強く持ち、気高く生きろ」



 漫画とかに出て来そうな台詞だけど、この人はそれを本気で言ってくれている。それが今の私にどれだけの勇気を与えてくれているんだろう。本気で言ってくれるからこそ心に響く。この人ほど団長に相応しい人は居ないと思う。この私でさえ一瞬で、この人に付いていきたいと心から思えたのだから。


「はい…ガイシス団長」

「ああ」


 私が笑顔で応えると、ガイシス団長は爽やかな笑みを浮べて私に手を差し伸べた。私はその手をしっかり握って立ち上がった。握った手はとても大きくて固く、熱く感じた。


「ありがとうございます」

「じゃあ俺は陛下に報告しておくから、後はロイスの指示に従ってくれ」

「はい」

「ロイス、サーイェの事頼んだぞ」

「ああ」

「よし、じゃあ入隊試験はこれで終わりだ。アドニス達もつき合わせて悪かったな」


 ガイシスさんの言葉にアドニスさん達はようやく口論を止めた。


「え?ああ、全然構わないよ。サーイェとも仲良くなれたからね」

「…‥」


 どこが?あなたと仲良くなった覚えないんですけど。むしろ私はあんたの印象が悪くなったよ。正直私はアドニス…団長にはあんまり居て欲しくなかったんだけど‥まぁいいや。


「皆さん今日は有り難うございました。これからもお世話を掛けると思いますが、よろしくお願いします」

「遠慮せず何でも言ってくれて構わないからね」

「…ありがとうございます」


 じゃあとりあえず黙ってくれ…とか言いたい。アドニス団長に苦笑を返すと向こうはキラキラとした笑顔を返してくれた。そしてガイシス団長を始め3人は、ロイス副団長を残して部屋を出て行った。


 一応伏字&元ネタ解説


・シカマ●-人気忍者漫画のキャラクター。影を使った忍術が得意で頭がかなり切れる。

・か●はめ波-ドラゴンボールに出てくる技。気を凝縮させて一気に放出する。

・D●-ドラゴンボールの略。

・亀●流奥義-武天老師の流儀。

・亀仙人-ドラゴンボールに出てくるキャラクター。主人公の師。武天老師の別名。

・ウラタ●ス-仮面ライダー電王に出てくるキャラクター。かなりの自信家な上キザで女好き。口がうまい。

・デン●イナー-電王に出てくる時の列車。

・●人剣-ゲーム・テイルズシリーズの最も基本的な技。剣を振ると地を這う衝撃波を放つ。

・ア●ックNo.1-青春スポ魂バレー漫画及びアニメ。普通のバレーじゃない。

・カ●シ先生-人気忍者漫画のキャラクター。主人公の班の教官。一応天才忍者。

・あべし、ひでぶ-北斗の拳の断末魔の悲鳴。

・カミカゼ-神風特攻隊。




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