二十七話 ???
ずっと、夜が続けばいいと思った。
この深い闇が世界のすべてを塗り潰し、明日という光を永遠に拒絶してくれればいいのに。
朝が来なければ、選ばなくて済む。
人類を救うための「最強」として立ち上がる自分か、ただ君の隣で微睡む「弱さ」を持った自分か。
どちらかを選び取るたびに、俺の心は削られ、砂時計のようにさらさらと死へと零れ落ちていく。
繋いだ手の中に残る温度は、もう、失ったものみたいに静かだった。
本当は、死にたくない。
世界なんてどうなってもいいから、君と二人のまま、あの騒がしいカラオケの夜を、何度でも繰り返したい。
「いつか」を語る君の横顔を見て、胸の奥が張り裂けそうになる。
俺には許されないはずの、眩しすぎる未来。
神様がいるのなら、この命と引き換えに、あと一分だけ時間を止めてほしい。
ヒーローとして死ぬことなんて、一度も望んだことはない。
俺はただ、君に愛される一人の人間として、君の隣で老いていきたかった。
けれど、太陽は残酷に、地平線の向こうで息を潜めている。
俺を呼ぶ怪異の咆哮が、遠くで風に混ざる。
──最後の怪異。
ごめんね、ユイト。
俺は君に、嘘をつき続ける。
「大丈夫だよ」と笑うたびに、俺の中の化け物が、君との未来を食い千切っていく。
夜が明ける。
俺はまた、君のいない戦場へ、君を守るために、君を捨てる。
――行きたくない。
――行かせてくれ。
二つの叫びを飲み込んで、俺はただ、掌に残る君の熱を、呪いのように抱きしめた。




