第7話 過ぎさりし悲劇 by心也
こんにちは、獅子乃です。
後書きにて割と重要な報告があります。
では、ごゆるりと行ってらっしゃいませ~♪
菊川家リビング。そこには、心也、ほたる、瑞穂の三名が風呂上がりの髪をタオルで乾かしつつ各自に宛がわれた座布団に腰を下ろして、『心也の体験記』発表会の準備をしていた。
心也は片手に牛乳の入ったコップを持って自分の席の前に置いておく。あらかじめ用意しておけばいいところで話を中断しないためでもある。
二人もやはり飲み物を持って来て着席する。ちなみにほたるは牛乳、瑞穂は麦茶を持ってきた。ほたるの牛乳はたぶん昼間のアレ(第4話参照)を気にしてるかもしれない。
「さて、準備は良いよね? 僕たちの方は話すだけでいいから、精々飲み物くらいだけど」
「いつでも良いわよ。それよりも心也はもうあの事ふっきれたのよね?」
「もちろん。師匠も昔の事でぐちぐち悩んでてもしょうがないから前を向けって! 怒られちゃったし、何よりも真くんや、お義母さん達がいるしね」
一通りの会話の中から心也の辛いと思われる過去に触れた事に、恐る恐るほたるは心也に質問する。
「お兄ちゃん、もしかして事故の事が……?」
その問いに、頷くと遠くを見るような眼をして心也は過去についてゆっくりと話し始める。
「そうだね。その事故からかな。じゃあ、そこから話をしていこうか……」
―――――――10年前。
僕は当時、たぶん5歳くらいだった思う。幼稚園をあと少しで卒業、そんな冬休みの事だったんだ。
僕たち――お父さん、お母さん、そして僕はその日冬休みの長期休暇を利用してお母さんの故郷に遊びに行った帰りだったんだ。
「あんた、こんな雨なのに帰るの? もう一日くらい止まってったら?」
「ごめんね、母さん。明後日から仕事だし、色々片づけなきゃいけないから」
娘を心配する母。僕からみたらお婆ちゃんとお母さんの会話だったんだけどね。
その日は、台風の近付く雨がたくさん降った日だったんだ。風も強かったし、実際警報も出てたって聞いた。お婆ちゃんがすごく心配してたと思う。
お婆ちゃんの家に来た時――ほんの一週間前はこんなに天気は荒れてはいなかった。むしろ旅行日和の良い天気だったのに……。
とにかく、この一週間の内に台風が来てしまったんだ。
「それじゃ、お義母さん。体に気を付けて下さい。あっちについたら電話するんで心配しないで下さい」
お父さんは運手席のシートベルトを締めながらお婆ちゃんに心配をしないように、気にしなくていいとニコニコしながら声を掛けてた。お父さんは眼鏡を掛けてたんだけど、その奥の目が、笑うと細まって、とっても落ち着いた印象を与える人だった。
「それじゃあ元気でね。体に気を付けて、何かあったら電話して。……ほら心也、お婆ちゃんにバイバイして」
「バイバイ、お婆ちゃん!」
お母さんに促されて僕はお婆ちゃんに手を振った。さっきまで心配げな顔をしてたけど、僕を見ていた時はとっても笑顔で、心配なんてどこかに飛んでいったようだった。
「バイバイ、心也も元気でね」
こうして、僕たちは雨の降る中お婆ちゃんの家を出発したんだ。
お婆ちゃんの家は地方の山奥――田舎って言うに相応しいくらい何も無かったと思う。でも、近所の人達は仲が良いし、自然が多いし。所謂、田舎の良い所を詰め込んだような温かい場所だった。
「視界が悪いな、台風なんてタイミングが悪すぎだ……」
「あなた、気を付けて。心也寝ちゃったし、安全運転でお願い」
視界の悪い時の運転って危ないよね。たぶん、お父さんは相当真剣に運転してたと思う。
と言っても途中から僕は寝てたんでこの先、僕が起きるまでは知らないけど。
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「了解。にしてもこんな風にまた旅行に行けたらいいなぁ……」
「そうねぇ……。心也もあと2カ月後には小学生だし。今度はもっと遠くが良いわね」
感慨深げな顔をする二人。些か気が早いが次の旅行の計画を互いに想像する。
「おお、北海道は食べ物が美味しいからな、でも沖縄も捨てがたい……」
「いっそ外国はどうかしら? ハワイはどう? 新婚旅行以来だし」
「あの時、そうだね。君は本当にはしゃいじゃって。子供みたいだったな」
とたんに顔を真っ赤にする。自分だけが見れるのだろうな、とちょっと得をした気分になる。自分の妻がこんな風に感情をさらけ出してくれる。それだけ心を許してもらえる関係である事、夫婦であって良かった、とまた再認識した。
「そんなこと……、別にそんなことないもん!それに、貴方だって……」
「それは、そうさ。君と夫婦になって初めての旅行だもの、嬉しくない訳ないだろ?」
「ずるい……。私も、嬉しかったからなのに……」
こんな他愛のない事で幸せな気分に浸れる。こんな天気じゃなかったら、と二人は思う。
しかし、現実は残酷だった。こんなにも幸せなのに。これから先、まだまだ幸せな未来が待っている、そう信じていた二人には残酷すぎる悲劇が待っていた。
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お婆ちゃんの家に来る時に通った、たくさん木が生えていた森を抜け、トンネルを抜けしながら薄暗い山道を通っていた時、偶然にもその悲劇は起きた。
結論から言うと、土砂崩れに巻き込まれた。
本当に偶然、山道が雨と風の影響で崩れてきたって聞いた。
ドドドって轟音がするでもなく、僕たちの車を待ち伏せたように土砂が僕たちを襲ったんだ。
土砂がぶつかった音で僕が起きた時には真っ暗だった。元々天気が悪くて月明かりも出てなかったけど、それに加え土砂が窓ガラスを塞いでいたから道の脇に立ってる街頭の光すら遮ってたんだと思う。そしてすごい衝撃もあった。お父さんはその時にどこかにぶつけのか頭から血が出ててぐったりしてた。窓ガラスはヒビが入って今にも割れそうで、天井部分はぐしゃっとへこんでたと思う。
僕はちょっと苦しかったけど、ひどい怪我は無かった。
それは、お母さんが全部、窓ガラスや何から何まで僕を庇ってくれたから、僕はここにいられるんだよね。
「はぁ、はぁ、心也……。大丈夫よ、大丈夫、貴方は必ずママが守ってあげるから……」
「お母さん! 血が出てるよ!?」
ぜえぜえと喘ぎながら、お母さんは僕を抱きしめたくれた。こちらから背中の様子は見えなかったけどたぶん血だらけだった思う。服は何かの液体――たぶん血液で濡れてたし、お母さんがとても苦しそうに呼吸してたから結構な量が出てたんだと思う。
「大丈夫、大丈夫。この前、包丁で指切っちゃった時も大丈夫だったでしょう?」
その時の僕はそんな事でなっとくしちゃったんだよね。明らかに無理してるって、今なら包丁なんてレベルじゃないって分かるんだけど。
痛々しいその姿になってもなお、僕を怖がらせないようにいつにみたいに笑ってたお母さんは出来るだけ動かないように、と僕にそれだけ言うとお父さんに声を掛けて意識を確かめてた。
けど、何度声かけても動かなかったから体をゆすって、最後には口のあたりに手を持って行って今度は呼吸を確かめてた。しばらくするとお母さんの顔はもうそれを辞めちゃったんだ。たぶん、もうその時にお父さんに息は無かったんだと思う。
「お母さん……、お父さんは?」
「うん……? 大丈夫、気を失ってるだけよ。だから、だから、きっとだいじょ……」
眼に涙を一杯貯めながら笑って言ってくれた。でも、涙声で、本当はもっと声をあげて泣きたかったと思う。お父さん達、僕も含めて本当に仲は良かったから…………。
「お母さん、痛いの? 血が出てるし、大丈夫?」
もっと気の利いた事が聞けたらよかったんだけど、昔はそれが精一杯。痛いに決まってるのに、心も、体も。でも、お母さんは――
「大丈夫よ、心配しないで。そのうちきっと助けが来るから。ママと一緒に待ってよ……」
相変わらず笑ってた。本当は痛いし、泣きたいし、けど僕を守ってくれようとしてたんだ。
そして、結局何時間待っても助けは来てくれなかったんだ。
正確に言うならば、お母さんが生きている間には。
土砂が崩れてから数時間。第二波が僕たちの車を襲ってきて、車が押しつぶされた。
車のあちこちがギシギシ言いながらへこんできて、次第に苦しくなって。
でも、最後までお母さんは笑って、僕に頷いてくれた。
その笑顔を見ていると、次第に意識が薄れて、車が押しつぶされるその苦しさで僕は意識を落とした。
そして、これがお母さんの最後の表情で、最後の笑顔だった。
お疲れさまでした。
今回は結構色々な実験を兼ねてみました。
心也視点でお話を読ませてみました。
たぶん変なとこや違和感がたくさんあると思います。
なので、これはまた書き直します。
と言っても僕だけじゃたぶん無理です。
なので、誰か助けて下さ~~い!!(切実)
まとまりがないこの文をどうにかしたいんです。
結構お話のキーになる部分なのでしっかり書きたいんです。
誰か、お願いします。
これを読んだ、お兄様、お姉様、先輩作者様。
どうか、知恵を、感想を下さい。
それだけが、私の望みです。
話は変わって、人物紹介なんですけど。
やっぱりこれって作るべきですよね?
どの方も必ず書いてるし……。
いつ書こうかな……。
とりあえず、意見を頂けると嬉しいです。
では、長々とした小説を読んで下さりありがとうございました。
またのお越しをお待ちしておりま~~す(@^^)/~~~
追記:長くてすいません。先輩作者様からの助言を受けまして、
このお話は分割修正することにしました。
次回のお話は、このお話の後半部分になります。
ついでに肉付け・修正を加えます。
なので、語られなかった部分が追加されるでしょう、たぶん。
なんだかご迷惑をおかけします。ごめんなさい……。
4月27日 獅子乃 心