第4話 ただいまとお帰りと……。 by心也&瑞穂&ほたる
こんばんは。作者です、獅子乃です。
今回も長くなっちゃいました。ごめんなさい。
もっと上手くまとめたいですね……。
さて、今回はサブタイトルと同じく、
テーマは『ただいま』と『お帰り』です。
では、ごゆるりと行ってらっしゃいませ~♪
「…………心也? ねぇ、聞いてるの? もう、心也くん!?」
「あ、えと、聞いてなかった……。何の話だっけ?」
「もう……。お母さん拗ねちゃうぞ? 拗ねたら今日の晩御飯がカップ麺になっちゃうかもだぞ?」
「ごめんなさい……。カップ麺は勘弁です」
走行する車中。物思いに更けていたのか瑞穂の話を上の空で聞いていた。
何を考えていたのか、そう問われれば他愛のない事なのだが、駅での再会の時……、
「お帰りなさい……、心也。ずっと会いたかったわ。本当に大きくなったわね♪」
「うん……、ただいま、お義母さん」
確かこんな感じだったと思う。ここまでを見ればどこかのドキュメンタリー、もしくはイイハナシダナーってなる事だろう、……たぶん。
しかし、ここは屋外。自分の家でもなければ物陰でもなく、昼間の駅。時間帯を考えると、学生が家に帰る途中だったり、主婦のおば……お姉さん達が駅前のスーパーの特売商品を、空から獲物を狙う鷹の如く鎬を削る時間帯。
駅はその特性上人が集まる。よくイカした兄ちゃんや渋めのおっさんがギターを片手に良い声を響かせてる光景を目にするが、今回の場合は――――
『ねぇ、見て! あの人達抱き合ってるよ♪』
『ホントだ。彼の方メッチャ可愛いよ。いいな~』
『あら、最近の若い子達はこんな所で……』
『木村さん、よだれ出てますわよ?』
『お、オホホホホ…………』
『ママぁ、見てぇ~。あの人達恋人なの~?』
『しっ! みちゃイケません。さ、卵買えなくなっちゃうから行くよ』
『ねぇ、パパとママもこの前ベッドでぇっむぐぅ……!?』
『…………(ひたすらにダッシュして去って行った)』
――――彼らは、傍から見れば公然の目の前でバカップルの如く抱き合っていた(瑞穂が一方的に後ろから抱きついている)のである。
彼女――瑞穂の外見は明らかに若すぎるのだ。年齢さえ言わなければ、そんじょそこらの大学生よりも若く見えなくもない。心也が義妹と呼ぶほたるは一つ下の年齢だから今年で15歳。20で産んでもすでに35歳である。子持ち、三十路過ぎのおばさん。これ聞いた人で驚かなかった人はいないらしい。
心也は言うまでもないだろう。その二人が公衆の面前で熱烈なハグをしているのだ。嫌でも目に留まるに決まっている。
次第に人だかりができると心也もこの状況に気づき打開しようとする。
「お義母さん……。そろそろ放してくれない?」
「そんなっ! まさか、反抗期!? 反抗期なのね!? みなさん!! ウチの心也が反抗期です!」
「そうじゃなくて、人に見られるのが恥ずかしいから離れてって!」
「恥ずかしい!? こんなのがお母さんだから恥ずかしいのね!? みなさん、ウチの……」
…………ここから同じ様な掛け合いを何度か繰り返し、心也が振り切って逃げるまで続いた。
「本当に恥ずかしかった……」
「あの事? いいじゃないちょっとくらい。私たちの愛情の深さを世間に見せたって、罰は当たらないでしょ?」
「でも、あんなに人がいっぱい……。お義母さんは恥ずかしくなかったの?」
「何を恥ずかしがる事があるの? さっきも言ったけど、親子の久々の再会の感動を分けてあげたと思えば何も恥ずかしくないわ♪」
「(ダメだ。この人には一生掛かっても勝てそうにないや……)」
「で、師匠との生活はどうだったの?」
「うん。特に何事もなく過ごせたよ。……けど、家事がまったくダメだったから僕が代りにやったけどね。それ以外は何も。楽しかったかな?」
「そう、あの野郎が私の心也に家事を一方的に押し付けてだらけていた、と……。成程ね、分かったわ。安心して、アナタに変わって粛清を加えておくから♪」
「お義母さん、何かすごい怖いんだけど……」
それからは、他愛も無い近況報告をしあったりしていたら目的地その2にしてゴール――菊川家に到着したのだった。
「さて、久々の我が家よ。準備はいいかしら?」
車から降り、門の前から見た我が家は幼い時に見たそれと寸分も狂いなく鎮座していた。
二階建ての他の家と対して変わらないそれは、駐車スペースと小さな庭があり、白塗りの壁に赤い屋根。ついに帰って来たと思うと心也の表情は少し強張る。
「そう言われると何か緊張しちゃうな。……よし! いつでも行けるよ!!」
「別にそんなに力まなくともいいのに。じゃあ入ろうね、…………ただいま! ほたるちゃん? いるの? お兄ちゃん帰って来たわよ~♪」
玄関を開けた音に反応したのか、2階から足音が近づいてくる。降りてくるのは恐らくほたるだろう。よく自分の後ろをお兄ちゃんお兄ちゃんと着いてきていた彼女が、どのように成長したのか。大きな期待と少しの不安をないまぜにしながら彼女が降りてくるのを待つ。
降りてきたのは、たぶん学校で指定されたであろうシンプルだが歴史のありそうな制服に身を包んだ少女。髪を肩の辺りまで伸ばし、赤いカチューシャを付けてまとめている。
その少女――ほたるは母ともう一人の少年が目に入るとその顔にはじけるような笑顔を浮かべる。
「ほたるちゃん、久しぶり。元気にしてた?」
「お兄……ちゃん? 心也お兄ちゃんだよね? お兄ちゃんだ!!」
とたんに廊下をダッシュし、玄関に立つ心也に狙いを定めるとその胸に飛び込んでいく。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん…………お帰りなさい!!」
数年振りの兄との再会。ほたるは胸にすりすりと頬を擦り寄せ目一杯兄に甘える。くっついたその体は年頃の女の子の柔らかさを備え、昔はぺったんこだった胸も少しばかりは膨らんだのでは? 何て少しやましい感情を心の内に秘める義兄。
「ただいま。すっかり大きくなっちゃたね~」
「でしょ? でも、本当に誰に似たんだか、ココはまだまだ発育途上だけどね♪」
「やめてよ、ママ!! ママだって最近ちょっと垂れてきたんじゃないの!?」
「あら、このおっぱい吸って大きくなったのは貴女でしょ?」
「そんなの知らないもん! これから大きくなるんだから大丈夫だもん!!」
「心也くんはどう思う? 少し形が崩れちゃったけど大きい方が良いわよね?」
「垂れたおばさんのよりも、これからが旬の若い実の方が良いよね?」
あえて聞きましょう。貴方はこの状況でどちらだ、と断言できるだろうか?
少なくとも彼には不可能だった。自分を我が子として家に迎え入れてくれた義母におばさんのは無理ですとは言えない。かと言って、自分を実の兄の様に慕い、自分の後ろをチョコチョコと着いてきた彼女に、貧乳には興味ないんだ、とは口が裂けても言えない、言いたくない。
「う、う~~ん……、さぁどっちだろうね?」
《マスター、はっきりしろよ。俺的には瑞穂の方が……》
「「ねぇ!! どっちが良いのッ!?」」
「(いつになったら家に入れるんだろう…………)」
《仕方ないさ、まぁ、帰って来たんだしな。家族水入らずで団欒とすればいいさ》
こうして、心也は数年振りの我が家に舞い戻ったのである。もっとも家に入ってゆっくりするにはもう少し時間が掛かりそうなのだが…………。
お帰りなさいませ。何かビミョーな終わりになっちゃいました。
次回でもう少し、補足的な書き方をしたいと思います。
それと、まだまだ始まったばかりのこの小説もお気に入り登録してくれた方が…!
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では、今回も読んでいただいた読者様。
次回の更新でお会いしましょう♪