第3話 三つ子の魂百までってさ……。 by真
こんにちは、獅子乃です。
今回はこの前の二つの比じゃないくらい長いです。
作者のスキルがミジンコばりなのでこんな事が多々起こると思います。
それと、軽く一話の伏線にかすります。
では、ごゆるりと、いってらっしゃいませ~♪
あれから数時間。さんさんと輝く太陽はもっとも高いところを超え、日は少し傾いている。彼がどうなったかと言えば――
《まだ繋がらないのか? マスターも本当に不幸だね~》
「真くん……。暇なら地図見るの手伝ってよぉ……」
――まだ迷っていた。
あれから何度も電話で連絡を付けようとしたが電話はかからず。仕方なしに歩くがどちらに行けばいいのか分からなくなってしまった。駅やメインの道路に出れば現在地を確認できるが、それも今は不可能なのである。
ふと心也の頭を過る。このまま家に着くことが出来なければ心配をかけてしまう。今までどうしていたのかと問われた時、自分はこの年で迷子になったと言えるだろうか?――否、言える訳がない。この地を離れる時、確かに立派になって帰ってくると約束した。一つ年下の義妹にこんなのが義兄だと思われたら……。
「絶対に……、嫌だ……。死んでも、嫌だ……」
想像しただけで泣けてくる。一人っ子だった自分に兄が出来た、と当時は喜んでくれたのにこんなのでは絶対に軽蔑される、と思う。
《だったら手元を見な。地図、逆さじゃないか?》
ここまでの道をところどころサポートしてくれた相棒は決定的な指摘をする。
「えっ……? そんな事ある訳ないじゃ……は、ははは……そ、そんなわけがあったんだ……さ、逆さだった……」
おかしかった。どうもおかしかった。地図位は読める。それなのに進めど進めど見つからない家。それもそのはず、地図が逆さじゃ着くはずが無いのだから。
《うん。それは良かった。このままお前を野垂れ死にさせたとあっちゃ陛下に示しがつかん》
「ありがと、真くん……」
何だか泣けてきた。情け無いってのもあるけど心強い味方がいて本当に良かったって。
《ほら、もう……、そんな事で泣くんじゃねェ……》
「うん、ごめん。それじゃ行こうか?」
こうしてまた心也はまた歩き出す。自分の身に宿る心強い味方と共に。
30分後…………。
《マスター。もうこれは地図の所為じゃないと思うんだが……?》
「真くん……。冷たすぎるよ……」
未だに家には着いていない。地図は見ていた。しっかり進行方向通りにもなおした。が――
《マスターの方向音痴はいつになったら治るんだろうな……》
「そんな遠い目で見ないでよ……。それにほら! 昔から言うでしょ? 三つ子の魂百までって……」
《そんなマスターにあったら、きっとほたる達はガッカリするだろうな……》
「それはダメッ! 絶対ダメッ!」
《麻薬じゃないんだから……。ほら、もういいだろ? いい加減俺と変われって》
真の言ってる事は正しい。自分がこれ以上足掻いても時間が過ぎるだけ。ならば……。
「分かった……。それじゃ、お願いね真くん」
心也はそれだけ言うと周りに誰もいないことを確認し、胸に手を置き目を閉じる。そして、ゆっくり。自分に言い聞かせるように、言葉を紡いでいく。
「我、女王より賜りし、六匹の獣に告ぐ。我が半身にして【真】の字を冠する鷹よ。我に変わりて、我が道を示せ――――精神置換――――」
《任せな…、マスター》
真がその呼び掛けに応じると心也の体が淡く光った。数回それが点滅し、一際光が強くなった後スーッと光は引いていった。
そこには先程から目を伏せ、手を胸に当てている心也が立っているだけだが少し様子がおかしい。先程まで目に涙を滲ませオロオロとしていた小動物の様な彼はもういなかった。
目にはしっかりとした意思を湛え、表情も男としての力強さが見えてくる。
「さてと、マスター聞こえるか?」
《OK大丈夫だよ。それじゃとりあえず駅に向かおうか》
「何だよ、変わったら急に強気になっちゃって」
《ご、ゴメン……。これで家に帰れると思うと嬉しくって》
「おう、任せておけ。命に代えても辿り着いて見せるさ」
《それは、少しオーバー過ぎるかな? それじゃ、出発!》
ポツリと立つ一つ分の影は、今度こそ我が家を目指す為に歩を進めた。
そこからは今までのロスをひっくり返すかの如くだった。先ずはメインの大通りに出て、それから駅への道をひたすらと進む。さすがにメインの道となると先程の道とは別次元だった。車はもちろんの事人だってたくさん。かの有名な大佐ならきっと「見ろ! 人がゴミの様だ!」と言ったに違いない。確かに今日は休日だし、季節的に春休みが絡んでるからかもしれない。先程からこの容姿の所為で女子高生くらいの人に声を掛けられた。皆一様に――――君、可愛いね? で始まるから溜まったもんじゃない。そんなこんなを繰り返し、人の波をかき分けてついに最初の目的地、姫上駅に到着した。
「やっとだ……。あの女達の好奇の目といい、このひとごみと言い……、吹き飛ばしたくならないか?」
《真くん、お願いだから落ち着いて。君が言うと本気に聞こえるし、この体は君だけのものじゃないんだからね? 君が指名手配犯になるってことは、僕が指名手配犯になるってことなんだからね!?》
もうお気づきの方もいるだろう。彼らは一つの体に複数の人格を所有する多重人格者なのである。
故に、誰もいなかった通りで心也と真が話していたのである。次いで、先程の通りで行った『精神置換』についても少し補足をしておこう。
心也が唱えた呪文らしきもの、主人の願いに対して従者である真が叶える為に、主人に変わり――今回は駅までの道を代わりに歩いたのである。……まぁこんな使い方でいいのだろうか? という質問は大いに受け付けよう。
そんな訳で到着した姫上駅のトイレにて主人に体を返した一人と一体(?)が人に道を聴くか聴くまいかを思案してる所に一本の電話がかかってくる。――どうやらお目当ての人からの電話らしい。
「もしもし、心也です。お義母さんですか?」
『はいはいその通りよ。電話してくれたよね?』
「はい……、途中で迷っちゃって……」
『そっか、じゃあ迎えに来て良かった~』
「え? 迎えに来てくれたんですか? えと、今どk……」
電話先の人間の現在地を聞こうとした時、不意に後ろから何かに包まれる様な感触がした。首に巻き付かれた腕、背中に当たる柔らかな感触、そして懐かしい温かな体温と優しい香り。
「お義母さん……?」
「お帰りなさい……心也。ずっと会いたかったわ。本当に大きくなったわね♪」
その優しく澄んだ声、血の繋がりもない他人の僕を、家族として、息子として迎え入れてくれた人。
紛れもなく菊川瑞穂――僕のお義母さんであった。
お帰りなさいませ。長かったですか?
自分としてもまだまだまとまりがなって無いと思います……。
誤字脱字と、文の矛盾。ありましたらご指摘ください。
それと……、感想なんかもらえたら嬉しいです。
この小説を書き始めもう一週間。アクセス数が上がるたびに頬の筋肉が緩みます。
では、次の更新でまた会いましょう。
あ、もちろん感想欄でも待ってますよ~♪