第16話 もう、何か疲れた…… by心也
スンマセン! マジスンマセン! ごッさスンマセン!
金森商店街の路地裏、一波乱あったあの場所は今まで通りの平穏をすっかり取り戻していた。
カツアゲ犯に一発入れたあと、一体あの場にいた関係者に何があったかのかというと――
「あたた……掠っただけで良かったね。直撃だったら流石にお義母さん達にバレるところだったよ……」
《いやぁ面目ない。追い詰められた人間……まさに手負いの獣ほど侮れないたぁこう言う事だな、ハハハ……》
《ハハハ……では無いでござるッ! 真、そこに座れ。あれ程殿に危害が及ばぬよう真剣にやれと……》
「臣くん、そんなに怒らないで。最後の方は僕も頭に血が上ってたからお相子でいいじゃん。怪我は大した事無いしさ。これってティアお姉ちゃんの加護のお陰もあるのかな?」
《と、殿がそう言うなら……っじゃなくて、頭部の怪我は馬鹿にならないんでござるよ? ましてあんな鉄の棒で殴られたともなれば……》
「はいはい、僕は大丈夫だから。こんなの公園で転んだ時の方が痛いさ、さっきみたいにね……」
心也一行は金森町のとある公園のブランコで反省会を行っていた。
と言っても、無理をした心也と真を一方的に臣が叱っているのは言わんとせずともおわかりだろう。
事件の後、心也は真と入れ替わると頭部の応急処置をさっさと済ませ警察に連絡。
ピアス男の仲間だったスキンヘッドの男は最初にいた地点のすぐ近くに縛られて放られていた。
見ると結構ボコボコな感じで気を失っていた。
当然やったであろう銀牙とニット帽の少年はすでにその場からを姿を消していた為に詳細を聞く事は出来なかった。
とりあえず、と目の前に転がるスキンヘッドの男を引き摺りながらピアス男の近くに転がす事数分。
パトカーで現れた警官に事の次第を説明しカツアゲ犯の身柄を渡して一件落着。
と、行きたかったのだがパイプを掠った部分を見られて病院に搬送されそうになったり、真の瞳で覗いた真相が詳しすぎた為に逆に事情聴取をされそうになったのだ。
頭部の怪我は軽いものだと言って誤魔化しは付くが如何せん真相は……。
相手の頭の中を覗きました、などと言えば頭部の怪我とは別の病院にまで運ばれてしまっては敵わない。スキンヘッドをボコボコにして口を割らせた、と適当に誤魔化し早々にその場を去り、今に至るのだ。
その際、周りに注意を巡らした過ぎた所為か――灯台もと暗し。
公園の僅かな段差に躓きバタンと顔から地面にキスをする羽目になったのだ。
《マスターはマスターのくせによく転ぶからなぁ~》
「うん、一点に集中しちゃうとどうも……」
《いや、いつもだから絆創膏とか傷薬とか包帯とか――》
「いや、もういいから。リアルに傷心中なのにこれ以上僕を傷つけないで……」
公園にポツンと一人。この時間帯は基本的に人がいないのは当然の如く平日で、しかも学生や会社員の通勤通学者がいなくなるためである。
そんな公園にはもちろん犬の散歩に来たおばさんやら散歩好きなお爺さんもいない。つまり一人。その上独り言をボヤボヤと呟いている。あ、待って、通報しないで!
《今日の殿は何故か冷静さに欠けているような。素人相手に『第一解放』まで使うのは些かやりすぎでござる。やはりあの青年、銀牙殿でござるか?》
「そ、そうだね……。今思えば、というか最初っからやりすぎな感じだったね……」
《そうか? 口ではそう言っても俺との同調率は相当なものだったぞ。最後のパンチは相当な魔力の充填がしっかりしてたっつうか……》
「そりゃそうだよ。僕の親友を蔑ろにした罰だね。……でも、泡まで吹いてたっけなぁ」
《今日は二人で反省会をするでござるよ? 拙者が晩御飯を作ってる時にでも反省文を書いて貰うでござる♪》
「《えぇ~~~~》」
心也としても少しやりすぎた感は否めないな、と反省している心はあるのだ。
しかしながら今回のカバンの持ち主と共闘した相手が自分の関係者で無ければここまで被害は拡大しなかった。
心也の、真也の使った『第一解放』。言うなれば心也の潜在能力を真が心也の体を借りて、真也として力を引き出し、重ね合わせることを指す。もちろん『第一』と付くくらいなのだからその先ももちろんある。が、使いすぎれば副作用が無いわけがない。
最近巷で流行りのチートな能力では断じてない。まぁ、一般人からしたらチートなのだろうが……。ともかくだ。使いすぎれば後々に祟る、という事である。
主な症状として筋肉痛。潜在能力は隠れているからこそ潜在能力な訳で、そんなものをいつも以上に行使するのが原因であるとみられる。
他に強烈な虚脱感、吐き気、めまい、頭痛、発熱、等々……。
もちろん体の持ち主が心也なので今上げた症状は全て心也が受ける事になるが、もう一方はどうなるのか。
真達は精神置換時に一定以上の能力を行使すると一定期間の休眠を強いられる事になる。
常の精神置換ならば低電力モードみたいなものなので大した体力消費にはならないのだが『第一解放』、これによって本格的に体力消費が始まり、今回の場合真が使用した魔法。
こんな非常識なものを使えば消費量は格段に上がり――結果的にエンスト状態になる訳である。
ちなみに、真の言っていた同調率というのは某新世紀のロボットアニメに出てくるシンクロ率と同等のものだと思って貰って構わない。これが高ければ高い程威力も上がるうえに消費も最低限、とってもエコなのである。
さらにさらに、これまでの疑問の一つ。真達も含めた6人のもう一人の心也の内4人はこれが原因で現在『心の談話室』にて休眠中なのである。
「さてと、治療も済んだし、休憩は終わりにして……次は何処いこっか?」
心也はブランコから立ち上がるとパンパンとお尻に着いた細かい砂をはたき落とす。
《買い物は済んだでござるし、荷物も式神に頼んだでござるし……》
臣が顎に指を添えて考える様子がフッと浮かんでくる。
そこを頭に豆電球が浮かんだように閃いた!と立ち上がる真が割って入る。
《あそこはどうだ、恵泉寺! あそこの和尚の所にも顔出しといた方が良いだろ》
そうだねぇ~、と自身もまた顎に指を添えて今後の段取りを考えたり行き先リストを脳内で組み上げながら――
「……よっし! じゃあ和尚さんの所に顔出してみようか。お昼にはまだ早いし、上手くいけばあーちゃんに……は無理か。学校だもんね」
《和尚殿にはたくさん御世話になったでござるしこれからもきっと顔を合わす事になるでござる。時間があるなら行っておくべきでござるな》
《よっし! じゃあ出発進行だァ!!》
がらんとした公園を一人歩く少年をブランコがゆらゆらと揺れながら見送っていた。
また来てね、と手を振っている様な。そんな風にゆらゆらと。
――姫上市・彩詠町――
彩詠町は姫上市北部に位置し姫上市内でも群を抜く緑に囲まれた町である。
ただの田舎、と称すれば話は早いかもしれないがそれだけではないのだ。
春はお花見、夏はキャンプ、秋は紅葉狩りと親子連れや同級の仲間や同僚、はたまたお年を召したお爺さんお婆さんまでもが利用する自然公園と天然の要塞、鼠茉莉山が最大の特徴と言えよう。
心也は瑞穂に引き取られた後、幼馴染二人とこの周辺で遊ぶ事があった為に思い入れのある場所でもあるのだ。
中でも鼠茉莉山のハイキングコースから分岐する形で生えた長い石段を登った先にある御寺。名を金剛院恵泉寺とそこの住職・金剛院零泉氏が大好きでよく修行僧のまねをして念仏を唱えたり座禅を組んだり。まさに門前の小僧と言ったところだろう。
そんな風に修行のまね事をしたり境内で相手をして貰っていた当時の記憶を頼りに心也達は山道の入口に立っていた。
「相変わらず、だね。この匂いと、この温度……二人と来てた頃と変わりないみたいだね」
《そうだな。和尚とかもまだピンピンしてるんだろうなこの様子じゃ、クククッ》
「あれ、何か真くん嬉しそうだね?」
《そう言う殿も口元が緩んでるでござるよ? のう、真?》
《いやいや、臣もガンガン尻尾振ってんじゃんよ》
《いや、それは、別に、何でも無いでござるよ!!//////》
「ははっ、それじゃ行こうか。和尚さんに会いに!!」
《おうっ(でござる)!!》
――――5分後、先程まで軽い掛け合いをしていたハズの心也一行は……挫折。
「こ、こんなに階段あったけ? 僕ってもっと小さい頃に上ってたんだよね?」
《それは自問自答か? ああ、自分が答えてる時点で自問自答か、ハハハハハァ…………》
《いや、子供の体力とは。スタミナとは違う何で出来ているのでござるな……》
脚が棒になる、とまでは行かずとも軽く震えるくらいに疲弊してきもなお続く階段。
そう言えば修行僧達は朝一でここをランニングしていたっけ? と野武士か何かを軽く小馬鹿にしたような体力に疲れが増した様な気がする心也。
《とりあえずよ、登りきってからにしようぜ》
《そうでござる。マラソンでも「あそこまで走る法」は有効と書いてあったでござる》
「いやいや、真くんみたいに羽が生えてたら良いけど僕は脚だよ? ましてこの階段。……休もう! うん、休もう!」
「いやいや、この様な所で休まれては拙僧達が通れなくなってしまうのだが……」
「拙僧? 臣くん、拙者の次は拙僧? 時代劇の見過ぎでしょ幾らなんでも」
《いや、拙者は何も言ってないでござるよ?》
「へ? あ、そう言えば語尾にござるが……」
「あの、もし? 拙僧達は急ぐのだが……独り言ならば少々脇に避けて頂けるだろうか?」
嫌な感じを背後から猛烈に感じひきつった笑顔を貼り付けながらギギギと振り返る。
黒い袈裟、藁で編んだ笠、光沢のある頭皮(笑)
「あ、あの、ごめんなさい! 今退きます、すみません、すみません……」
「おや、その顔。見た事があるぞ……、待て、言わないでくれ、ここまで出ているんだ……」
喉のあたりを擦っている目の前の坊主。深く考え込んでいるのか眉間に皺を寄せて考える人のポーズ。
――――出たぞ、一元さんの考える人のポーズ――――
――――あのポーズを取ったら最後見た事あるものならば全て記憶から引き出せると言う――――
――――あの少年、心也君じゃないか?――――
――――本当だ、久しいな。昔はよくここに遊びに来ていた子だったな――――
「……い、今、先に答えを言った者ぉ……ま、前へ出ろ……」
一元の後ろに並んでいた坊主様ご一行がざわざわと囁く中いち早く心也に気づいた者から伝染し懐かしさから手を振ってくる者や笑みを浮かべこちらに視線を送る者。一元が最初に言った言葉など無視して……。
「お、お久しぶりで――」
「貴様らァァ!! 拙僧が先程申した事、忘れたとは言わさぬぞぉぉぉぉ!!」
「い、一元さん! 落ち着いて下さい!! こんな所で乱闘になれば怪我人が……てか階段だし、それよりお久しぶりです! ……って聞いてないか」
一元。金剛院恵泉寺の門下生にして主席。次期後継者として零泉の信頼を一身に受けている人物である。が、出家前はそういう感じの組合に所属していた過去を持っているらしい。
そんな人間がよくも悪くも坊さんに。それを受け入れる時には古参の方々と零泉とで相当揉めたらしいが今となってはそんな事もなく。信頼のおける人間に育ったもんだ、と8年も前に零泉から直に聞いたのだった。
「フッー、フッー、フッー……拙僧はなぁ、拙僧は、拙僧が申すまで誰も申すなと言ったはずだろう!!」
――――出た、一元さんの《瞬間湯沸かし器》――――
――――先に言われたくらいで大人げない――――
――――子供の前なのに、情けないねェ――――
――――心也君、かりん糖食べるかい? 本堂に一緒に、あ、そうだ、零泉殿の所に――――
「貴様らぁ!! それまで奪ったら許さんぞぉぉ!! 退け! 退け! さ、心也殿。私たちは本堂に行きましょう。……さっさと行かぬかぁ! てかもう帰ってくんな!! どっかもげろ!!」
「(後半部分について、というか全体的にツッコむべきかな?)」
《いや、もう、仕方ないだろ。気にすんな、ふっきれ》
《一元殿……大人げないでござる……》
《瞬間湯沸かし器》一元との思いがけない再会。喜ばしいはずが何とも言えない空気になってしまったのはさておき、心也一行は金剛院へと再び脚を運び始めたのだった。 続く☆
「え、ちょっと、終わりのなッ!?」
《もう、何だか疲れたでござる……》
ぐっだぐっだスンマセン!
お久しぶりです、獅子乃心であります。
この度は何だかんだで1カ月以上もほっぽり出してしまって……。
待って下さった方、ごめんなさい……。
生徒会が……という言い訳は聞き飽きたでしょうからカットします。
この際割り切って、気長に待つスタンスでお願いします。
期待しながら待たれると今回みたいに待たせた時申し訳ないので。
※ここからは雑談です。よろしければお付き合いください。
いや、最近急に涼しくなりましたよね。半裸で寝てた自分は寒さのあまり起きるのが常になってまいりました。みなさん、服は着ましょうね?www
さて、秋と言えば食欲、スポーツ、音楽、ゲーム、そして読書。
折角の秋なのに自分は生徒会やってます。忙しい、いや忙しい。
それなのに、世間はポケモンの新作やってるし……。
高校にDS持ってくる奴増えたし、不良ポケモンやってるし……。
いいなぁ……。
あ、そうそう。でも自分MH予約しましたよ!
早くやりたい!3rdやりたい!てか遊びたい!
……ん?執筆はしっかりやれよ?
も、もちろんですとも。ラブプラスに惑わされて執筆進まなかったとか。
カラオケ行きまくって金ねェとかそんなの置いといて執筆はしますとも!
……あれ?今、俺、墓穴掘った?
ま、まぁ、皆さまのご意見ご要望、感想欄にてお待ちしてます!
罵詈雑言は嫌いですが場合によっては自分の戒めの為に……。
では、次回の更新にてお会いしましょう(@^^)/~~~