第14話 火霊羅射守にコロッケってどうかな? by心也
お久しぶりです。獅子乃です。
まぁ細かい事は気にせずGOです!
……べ、別に気にするような事なんか(汗)
ちょっと危ないワードなんか入ってないんだからね/////
……ごほん、ではごゆるりと行ってらっしゃいませ~♪
朝。一日の始りにしてあらゆる動物たちが再び生命活動を開始する。と言ってもこの言い方だと少々ご癖がある。このままでは死んでいたみたいなので予め訂正しておこう。
さて、これは姫上市にある菊川家の住人たちも同じ事。
心也は修行中に身に着いた起床時間通り6時に目が覚めて体を起こ――せなかった。
「何で二人がここにいるんでしょうか……」
《ああ、殿おはようでございまする。ふふっ何やら大変なことになってるでござるな》
「いや、大変ってさ……こうなる前に起こしてよ……」
《あれ、気づいてなかったのか? 談話室で話してる時に腕に感覚“来なかった”のか、こうなんていうんだ、『むぎゅっ』と言うか『むにゅっ』と言うか……あったよな?》
《はい、しっかりとあったでござる。それはもう……のう、真?》
自分の身に何が起こったのか、感覚を共有する二人を当てにしていたのだが……イマイチ気づかなかったのは自分だけだったらしい。しかも、二人の顔は見えないが鼻の下はビロビロに伸びているであろうことは想像に難くない。
「どっちでもいいから助けてくれない? あんまり朝から“こういう”のはイケナイと思うんだよね……ハハハ、もうどっちでもいいからさ……」
《もったいね。二人の好意を無駄にするなんてなぁ……》
「真くんなんてもう知らないからね……? それじゃ主人に忠実な“大親友”の臣くん、お願いできるかな?」
《任せるでござ――》
その時、両端の内大きい方のクッションが動き出す。もぞもぞと辺りを探りながら自分がしがみ付く腕をたどって心也に行きつくと――にっこりと笑った。
「んぅ…………? あはぁ……心也だぁ……。おはよぉ~」
「お、おはようお義母さん。そ、その腕を放してくれない? 色々当たってたりで結構マズイし。ね? 放し――」
心也は瑞穂の覚醒と同時に自身の放漫なアレから腕の介抱を求めるのだがどうやら聞いていないようだ。むしろ、その……何故だろう。一度開いたぱっちり二重を閉じ心なしか唇が近いづいている気がする。
「ね、ねぇ、お義母さん。あの、起きてくれない? 二度寝しないで、ほ、ホラ。ちょ、じょ冗談が過ぎるよってば!! も、もうはうあぁぁぁ!?」
《お、落ち着けってばはお前だって。家族でチューくらいやるだろに、そんなに深く考えずにほっぺで受けちまえよ》
「そ、そっかそうだよね、ほっぺはセーフだよね。ハハ、ほっぺに…………あの、お義母さん。いつの間に馬乗りに? ね、ほっぺだよね? そこじゃ唇に、えっと、お義母s――」
真の助言を実行に移そうと思った時には瑞穂の拘束は腕だけに留まらず馬乗りにランクアップ。どちらにせよ頬で受けてしまえば問題はない、そう考えた矢先首が回らない。気づけば瑞穂の腕がしっかりと首に巻きついているではないか。これは絶対に確信犯であると気づいた頃には遅すぎた。これはもう男として腹をくくれと頭の奥から真の無責任な声が聞こえた時、心也のせめてもの牽制を打ち消すようにもう一人のクッションが覚醒した。
「んぅぅぅぅぅ…………あはぁ……お兄ちゃんだぁ……んぅぅぅぅ、ちゅっ」
へ? と間抜けな声を上げる心也。まぁ目の前で繰り広げられている事をそう簡単に受け入れられるのは精々菩薩の様な寛容さを持ち合わせている全世界の母親だけだろう。いや、母親も無理か……。
《なぁ真。これはどのタイミングで止めるべきでござろうか》
《いや、正直良い感じの画ではあるがマスターにはまだ早いんじゃないかな》
「あ、がっがががががあががががああががぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
《《遅かったか……》》
部屋の中は異様なまでに朝とは掛け離れた光景となり果て心也自身もバグったSFCの様な音を出しながらガタガタ煙を上げている。肉体を持たない真達にはどうする事も出来ないのだが……どうしよう……。
部屋に響く妙に汁気のある音を聞かないようにしながら臣主体の“臣也”となり変わると出来る限り二人の邪魔をしないように部屋を後にするのだった。
「…………ああ……也、上手……あっ…そう、もっと………」
「お……ちゃ……好……んぅっ………あんっ…ふぅんっ………」
《臣、急いで下に行け! 心也の精神汚染に繋がるぞ!!》
「ふぅ……まだ早い時間でござるから7時頃にもう一度お越すとするでござるかな……」
《ううっ……女…同士……は…駄……目………》
「う~~~ん!! はぁ、おはよう心也♪ 何だか体が軽くて軽くて、10歳くらい若返っちゃったみたいだわ。心也の添い寝が効いたのかしらね~」
「そ、そっかそうなんだ、ハハ、ハハハハハ……」
朝の出来事から。臣也は主に変わり二階の自室で【諸事情により自主規制】をしているだろう瑞穂とほたるの分も含めた朝食を作り先に食べていた時に起こすまでもなく瑞穂が二階から降りてきた。
……どうやら先程の事は憶えていない様で体が軽くなったとか自覚症状はともかく肌がツヤツヤしているのは敢えてスルーを決め込む様に心也は苦笑いを浮かべている。心也としてもあの惨状は出来る限り思い出したくないしろものだ。無駄に傷口を抉って痛い目に会わないように生活する、小学2年生の頃にこの家を出て師匠の元で培ったことの一つだ。
「お、お義母さん。今晩の夕飯は臣くんが作りたいって言ってるんだけど良いかな? 昨日のお礼がしたいんだって」
昨日の晩(といっても日付的には今日だが)に受けた臣からの申し出を瑞穂に伝える。瑞穂も興味深そうに聞きながら今朝方怪しい光を浮かべていた瞳を子供の様にキラキラさせて心也を見つめている。
「おみくん? 心也のもう一人の人格の子、でいいのよね? そっか、いいんじゃないかな。心也が体験した別世界の料理なんて面白そうじゃない。じゃあ今晩の御夕飯は任せちゃって良いかしら?」
《もちろんでござる! 拙者、腕によりを掛けて夕飯を作らせてもらうござるよ!!》
「もちろんでござる! だってさ。じゃ僕はお昼の間に買い物したり探検に行ってくるから、夕方には帰ってくるつもりだから心配しないで」
そう言ってとっくに終わっていた朝食の食器を流し台に持っていこうと立ち上がりながら視線は瑞穂をそのまま捉えている。
「ご、ござる? なんか変わった子ね。といあえずは分かったわ。私は6時頃まで仕事あるから」
瑞穂は母子家庭と言う事もあり収入の安定している市役所に勤めている。と言ってもだ、学生時代は結構やんちゃしていたらしくそんなに難しい事は出来ないと言っていたのだが何故OKが出てしまったのかは分からない。
「それじゃ、行ってきま~す」
「はい、いってらっしゃい。気を付けてね、カツアゲとか変質者はいつの時代もいるんだから」
フラグでしかない一言を聞かなかった事にして心也は商店街の方向へと足を進めていった。
ちなみに、瑞穂と会話している間にまったく二階から降りて来なかったほたるだが――見事に学校には遅刻したようだ。本人曰く幸せすぎる夢を見ていたらしく目覚めてしまうのがおっくうだった、と友人に述べたらしい。
――――姫上市・金森町――――
姫上市金森町。姫上市の東部に位置しその中でも目を引くのは町一番の大きな商店街である。繁華街と言っても過言ではない程のそれは不景気にも負けない活力にあふれていた。
「何か懐かしいにおいがするね~」
《そうでござるな~、昔食べたコロッケの香りがするでござる》
心也一行は金森商店街をキョロキョロしながら進んでいた。
この商店街の一様は先程説明したが、この周辺にスーパーやデパートが無いわけではない。
近くにそう言ったものが出来ると時代遅れと見られがちな商店街は衰退の一途を追うのが通例ではあるが、ここは違った。
商店街にかかるアーケードに反響しているのか、元気なお兄さんや笑顔のおば……お姉さん達の声が響き渡り店側のやる気がひしひしと伝わってくるのが分かる。
何にせよ店の人達の気遣いやこの活力が未だに人々を引き付ける要因になったのは間違いないだろう。
《なぁ心也、俺あのコロッケ喰いてェ! なぁ、良いだろ? コロッケコロッケ!!》
「もう、火霊羅射守の材料が買えなくなるでしょ、駄……う、あ、一個くらい、良いよね……。よし買っちゃお♪」
一通りの問答の末コロッケの魅力に勝てず一つ買う事になった。
見るからに歴史のある趣のある店の前で止まってふと思う。
「そう言えばここって源三お爺ちゃんのお店だよね、まだ元気に作ってるかな?」
《ああ? あの爺さんならまだ元気に作ってるだろ。生涯現役だのなんだの言ってたくらいだ、どうせ油まみれでコロッケ作ってるよ》
《そうでござるな、あのご老人であればそれも言えるでござるな》
「そっか、ふふっそうだよね。僕の事憶えてると良いね」
心也はくすりと笑うと『コロッケの柏木』と書かれた暖簾をくぐった。
「いらっしゃませ~♪ あれ、見かけない人ね。外の人?」
「あ、えと、源三お爺ちゃんいますか?」
入ってすぐのカウンターに立っていたのは見知った老人ではなく、見知らぬ女性だった。
女性は笑顔で接客をしてくれるが思いもよらないハプニングにおどおどしながら老人がいるかどうか問うた。
「え、お爺ちゃん? えと、君はお爺ちゃんの知り合いなの?」
「あの、お義母さんに連れられて、あ、菊川瑞穂って言うんですけど――」
「もしかして、心也くん? 心也くんでしょ!?」
女性は視線を少し疑う様な目つきに変えると老人との関係を問いただす。
心也は過去に瑞穂によって小さいほたるも含めてよくこのコロッケ屋に来ていた事を伝えると女性の態度が一変して親しげに、しかも自分を知っているようだった。
「そ、そうですけど。お姉さんは、何で僕を?」
「もう、忘れちゃったの? 庵よ、庵。柏木庵よ、憶えてないの?」
「庵お姉ちゃん!? えと、お久しぶりです」
「何でそんなに他人行儀なの? 一緒にお風呂にだって――」
「嘘っ!? そんな、お、お風呂だなんて!!」
「あははは、まぁ嘘だけど」
《これは、一本取られたでござるな殿》
《だな、庵もこんなに立派になったんだな……》
柏木庵はこの『コロッケの柏木』の看板娘として心也が小さい頃からお店の番をしている事があった。もちろん源三のサポートをしながらコロッケを作ったりしてよく食べさせてもらったのを憶えている。
そんな彼女が大学生になった今でも店番をしていたのは祖父:源三からお店を継いだからだそうだ。
「へぇ~昨日こっちに帰って来たんだ。修行だっけ、見ないうちに立派になっちゃって、もう!!」
お店の中でもコロッケが食べられるように付けられたベンチに腰掛けながら話をしていた二人。庵は一通り聞いて感心したようで心也に熱烈なハグをしかける。
「ふむぐぅ!? むぅ、むぅぐ!!(ちょっ!? ちょ、ちょっと!!)」
「やあもう! 本当に見ないうちにもう! 可愛さに磨きがかかったんじゃない? うりうりうりうり!!!」
心也の批難声をガン無視しながら心也に頬ずりしながら8年の間に成長したのであろう膨らみでぱふぱふと挟みこむ。
《はぁ~、役得でござるなぁぁぁぁ~~~~……何て言ってる場合じゃないでござる!!》
《そうだが……イマイチ瑞穂や陛下には届かないな……》
「ちょっ! ま、待って下さいってば!!」
「ああんっ!!」
――――ふにゅんっ♪――――
砲丸にしては少々柔らかすぎやしまいか?
「あ、その、事故です! くそ、離れろ、離……ッ悪気は、悪気はないんですぅ!!」
「ああ……、そんな、そんなに、あはぁ……ッ!!」
――――もにゅ、もにゅ、もにゅ――――
心也の意に反して独り暴走するマイハンズ。かといって真が遠隔操作してるとかそんなんで断じてない。
瑞穂やティターニアに比べると霞んでしまうのでアレだが、何せ揉んでいて柔らかい。まぁ、何がとは言わないが。
心也の弁明をマッハでぶち壊すように、心也のこれまでの印象を蹴っ飛ばすかのように心也の魔手(?)は庵を揉みしだく。どこをとは言わないが。
「ああぁ、も、もう大胆、ね……んっ!! はぁ、こんなお店の前じゃ誰かに、みられ、ちゃぁ!!」
《ひゅ~やるねぇやるねぇ。マスターの手腕に掛かればどんな堅物もイチコロよぉ!!》
《真、いい加減にしないと株が下がってしまうぞ? と、言っては見るが。さてどうしたものか……》
商店街、まだ午前中の人が少ない時間だからと言ってドア一枚挟んでの乱痴気騒ぎ。相手は久々にあった馴染のお姉さん。心也は心也でペコペコと謝るが一向に手が止まる気配はない。心強い味方はパニックに陥る主人をどう助けたものかと、頭を悩ます。いっそこの場で入れ替わるのも良いが何分一般人に見せて理解が出来るかどうか。庵は……言うまでもないだろう。
「(そ、そろそろ離れろ! こ、この、くうううう!!!)」
「庵~ぃ、庵~ぃ! まったく店番放ってどこに、うん? いるじゃないか庵……のほぉっ!?」
急転、暗転、ブラックアウト。
目の前が真っ暗に、先程までの勢いが嘘かの様に心也の手が止まり庵を放す。
目の前にはよく知った老人と、ふにゃふにゃになったお姉さん。
心也は目に一杯の涙を浮かべながら力一杯――叫んだ。
「み、み、みちゃらめぇぇぇぇぇっ!!!!」
《帰って来た!幻獣界語録》
・シャインオレンジ【陽光蜜柑】
所謂オレンジ。陽光、と付くだけに日中に浴びた日の光の様に輝いている。
夜間もほんのりとだが光っているため街頭の代わりに植えられている事も…。
・ジェミニバナナ【双子甘蕉】
所謂バナナ。木には二本で一房になっている。
《幻獣界》では病気になった時にこれを食べると効くらしい。
・雑貨屋 ブラウニー
鬼人:アンドルフが営む雑貨屋。主に小物やアクセサリー、お菓子などを扱う。
人の入りは極わずか。立地の悪さ(東通りの一番端)と店主の形相が原因。
実は魔術装具の品揃えがよく、収入のだいたいがコレだったりする。
・アンドルフ【オーガ】
『雑貨屋ブラウニー』の店主。寡黙で優しい雰囲気を持った青年。
髪や容姿の所為で老けて見られがちだがまだ20代前半。
ティターニアの古くからの友人らしい。
・レインボーキャンディ【虹飴】
最近《幻獣界》で流行っているお菓子。見た目はまんまチュッパ○ャップス。
何でも口の中で七種類の味がするらしい。味は特に決まっていないので、
買ってからのお楽しみ。
・霊孤のお面【頭部用防具】
装着後に変化の術を唱えると狐獣人に変化できる仮面。
使用者との適正にもよるが上手くいけば本来の種に遜色なく変化できる。
ちなみに、防具として活用するには脆すぎるためユーザーは極僅か。
・変化の術【フォームチェンジ】
毎度お馴染変化の術。呪文を唱えながらイメージする事で発動する。
が、結構技術がいるようで初心者が使う様な魔法ではない。
上記の『霊孤のお面』触媒に使用したり、
狐が化けるときに使う様な葉っぱを触媒に使うと上手くいくとか。
※第11話の単語より
はい、まぁこんな感じになってしまいました。
こんなはずじゃなかったのに……。
今回で幼馴染に会える予定だったのに……。
考えてもしかたないですね、ホントスンマセン。
とりあえず、今回は獅子乃的に無かった事にして。
次回はもう代替手を付けています、というか長くなった後半部分です。
ええ、後半部分では……おっとここからは禁則事項です。
そう言えば……
PVが21.783 ユニークが2.903 に到達しましたぁ!!!
これも皆様のお陰、カウンターをまめにまわしてくれる方。
いつも感想を送ってくれる方。
私は胸いっぱいの感動を感謝に変えてお礼いたします!
本当にありがとうございます!!!
どうかこの小説に温かい眼差しと救いの手と温かい言葉を下さい。
引き続き頂けるだけで、自分は執筆出来るのですから(笑)
では、次回の更新にてお会いしましょう!