第13話 ふぅ……お休み by心也
皆さまこんにちは。
例の如く獅子乃です。
いや、活動報告で早めに更新出来るかも的な事を言っておきながら……。
まぁ、いつもの事って割り切って頂けるとありがたいです。いや、面目ない。
では、ごゆるりといってらっしゃいませ~♪
「まぁ、そこで突然窓から――」
――――ピピッ!! ピピピッ!! ピピッ!! ピピピッ!!――――
心也の体験談を遮るように、時計のアラームが鳴り響く。
「あら、もうそんな時間かしら? あんまり興味深い(主にティターニア)もんだから、まさに時を忘れていたわ」
「ホントホント、お義兄ちゃんの体験談、本当に色々出てくる(主にティターニア)から聞き入っちゃったよ」
心也は、恐らくこの話が二時間三時間で語れるような薄い内容じゃない事を身をもって知っていたので予め、話を始める前に時計のアラームを12時にセットしておいたのである。
まぁ、区切りが悪いようだが明日にでも同じ話は出来るし、これからまた一緒に暮らすのだ。晩御飯の後とか、風呂上りとか、今回の様に少しずつ話していっても良いだろう。
「そうかな? うん、そうだね。現実世界じゃ絶対に見られないからね、翼竜とか」
「翼竜!? あのドラ○エとか、ファイ○ルファ○タジーに出てくるアレ?」
「そうだね。あ、でも思ったよりも大人しい性格するんだよ、最近のは」
「ねぇ心也。最近のって、昔はもっと危なかったみたいな。それこそ実体験が基づいてるみたいね?」
「いやッ! あ、その、ティアお姉ちゃんと一緒に乗っ――」
「それよ! そのティアって人! お義兄ちゃんに変なことばっかり、その、羨ましくはないケド……」
一旦打ち切ったお話、と言っても二人は心也に話に基本的に相槌しかしてなかったぶん区切ってしまった今は言いたい放題になって収集が付かなくなってくる。
《はぁ、ホント。マスターは女の人になかなか免疫つかないねェ~》
《真、殿の良いところは誰にでも分け隔てなく優しく、特に女性に対して――》
《はぁ、お前も。心也一筋なのも良いけどさ、そんなに良い子ちゃんしてて疲れないのか?》
《これだから鳥風情の脳味噌は単純に出来ていて羨ましいでござる》
「(二人ともケンカは後にしてよ。今はこの二人を静めないと眠れないんだから!!)」
「「話し聞いてるのッ?」」
手遅れだった。
「…………まぁ良いわ。後でじ~っくりと聞かせてもらうから、そのティアさんとの関係とか、どこまで行ったとか、母親として。別に羨ましいな~とか、そういうんじゃないからね、OK?」
「…………はい」
「むぅ……じゃ、いいもん。また明日絶対聞かせてよね。あ、でもお義兄ちゃん。このお話って真お兄ちゃん達も出てくるんでしょう? まだ出て来ないのかな?」
「ん? あ、そっか。アハハ言うのを忘れてたね」
「むむむぅ……何で笑うのぉ~」
「いや、僕がお城にいる時に会った人、憶えてる?」
心也に笑われてしまったのが少し気に食わないのか、口を尖らせているほたるは顎に指を付けて首をかしげる。合わせて瑞穂も面白そうだと思ったのかニコニコ顔に戻って同じく考えているようだ。
少しして顔を上げると、一人ひとり指折りしながら名前を挙げていく。
「えと、変態さん、変態給仕さんと……」
「衛兵さんとマッチョさん、それから変態給仕さんの同僚二人かしら?」
「もう、ママ! 今言おうと思ったのに!!」
「まぁ、まぁ。だいたいそんな感じだよね。じゃあ問題です、その中に、何と!! 真くんが隠れてま~す。さて、誰でしょう!」
折角セットしていた時計のアラームもむなしくクイズ大会が始まってしまう。ちなみに現在12時30分。
「女の人って感じじゃ無かったよね、ママ」
「そうね、じゃあやっぱり……」
「「アゼルさん!!」」
確信を得たかのような顔。クイズを解くときの人の顔はいつになく真剣だったり、解けた時の爽快感というか、何と言うか。そんな顔をしながら名前を叫ぶ。
「ふふふ、大正解だ。俺がアゼルこと真ってわけだな」
いつの間に入れ替わっていたのか、目元が幾分鋭い印象を与える真と入れ替わった様で答えを発表するのだった。
結局、そこからまた話が始まってはキリが無いので真也モードの真が就寝へと促して今日の体験談は幕を閉じたのだった。のだが――――
「……ねぇ、なんで二人が僕の部屋にいるのかな?」
「いいじゃない、今日は数年振りの再会なんだから一緒に寝たっていいでしょ? あらら、もしかして心也くん。お義母さん相手に……」
「もう、なんでもいいから出てってよぉ!!」
「お義兄ちゃん~いいでしょ~今日は再会を祝って親子水入らずで、川の字で――」
「もう、ほたるちゃんまで。だいたい僕のベッドじゃ二人も入らないでしょ? ほら出てって出てって。はい、じゃあお休み」
「「もう、(心也/お義兄ちゃん)のいけずぅ!」」
なんとか部屋から追い出すことに成功する心也。真はもったいねぇなぁ~とか何とか言っているがこの際は無視である。
「ふぅ、でも少しくらいな寝てあげても良かったな。いや、昼間の事もあるし余計な事は考えないようにしなきゃ」
そう言ってベッドに入って眼を閉じる。すると今日あったこと、道に迷ったり、瑞穂に抱きつかれたり、ほたるに抱きつかれたり、ご飯を食べて過去の話をしたり。
何だか今日全部あった事なのに3日分くらいの出来事に感じる。気づかれというか、何というか。ため息が出る。でも、嫌な訳じゃなくて、満たされている時の溜息と言うのだろうか。
なんにせよ学校が始まるまでは暇なんだし、変わってしまった町並みでも見て回るのも良いだろう。
そう言えば――
「ギンちゃんとあーちゃん、元気にしてるかな……」
《殿の御友人たちでござるか。ふむ、彼らなら、元気にしているのではないでござろうか?》
《そうだな、アイツらの事だし、ギンって言う奴は相変わらず泣き虫で》
《あーちゃん殿はきっとみんなの中心にいるでござる》
「そうかな、ふふっそうかもね。ああ、そうだった。いま『そっち』に行くよ」
昔の思い出、その中にいる掛け替えのなかった二人の親友。彼らの事を考えながら今後の生活を思い描いていく。昔は、自分も含めて幼かった。昔と変わらないならきっと二人に会えるだろう。
一息ついて目を瞑ると手を重ねて胸の前に置く。そして――
「――――開け――――」
一言つぶやくと心也はまるで死んだかのように、安らかな寝息を立てて眠りについていたのだった。
「心也、心也。ほら、起きろって」
「ん、あぁ……? 真くん……と臣くん」
「いや、いや、談話室来るって言うから待ってたのに寝たまんまだし」
ジト目でこちらを睨むのは真。幾分かデフォルメ、というかちっちゃくなっているが鋭い目元は合い変わらずだ。
二人、いや三人がいるのはどこか洋風の館の一室。部屋の中心部の壁には暖炉が煌々と炎を上げて部屋を明るく照らしている。その周りを囲むようにして三人掛けのソファを二つ、一人掛けを一つの計7人分のソファが中央に置かれたテーブルを囲むようなありがちな位置で設置されている。
心也はそのうち一人掛けに体育座りの形で眠っていたのだ。ふかふかとした感触はまるで母親に包まれているような、うとうとしてしまうどころか元から寝むっていたのならなかなか起きようとは思わない。
「殿、お目覚めでござるかな? では、拙者特性のココアでござる。あ、まだ熱いでござるから気をつけるでござるよ」
「ありがとう、臣くん」
この部屋と繋がる幾つかの扉の内、『厨房』と書かれた扉から出てきたのは臣。
だが幾分その姿は異型というか、執事服を着用しての登場だった。もちろん心也を含め真もそれに対していまさらどうこう言う事はない、これが基準服だから。
しかしながら、純朴な顔立ちに優しげな瞳がにこりと細まると心に安らぎを与えてくれる。真と同様に心也サイズに収縮されている身長は真よりも幾分か低め、だがスラっとした体つきはその服装にマッチしている。
臣は手に持った銀のお盆に乗せたカップを心也の眼前に置く、とそこで真の声が上がる。
「おい犬。俺の分はないのかよ」
「……しっかりあるでござる。さぁありがたく飲むでござる」
「もう、もっと仲良くしてよ。これからほたるやお義母さんと暮らす中で変な誤解を生んだりしたら嫌だよ?」
「う、わかったよ……」
「申し訳ないでござる……」
どうもこの二人の仲がよろしくない。
様に見えるのはオモテ面だけで割と仲良く会話をしていたり、ボードゲームをして暇つぶししたり、一緒に心也を通して世界を現実を覗いていたりする。
実際このあと目線でお互い謝っているように見えたので心也はニコニコ顔で真たちを見ていた。
「――で、僕は明日から学校が始まるまでの間に身の回りを整理整頓して、時間が余ったらほたるちゃんに街を案内してもらおうかなって思ってるんだ」
臣特製のココアを啜りながら今後の計画を二人に告げる。
他の部屋にも人はいるのだが現在この場にいるのは三人だけ、会話の切れ目には暖炉の木がパチパチと火の粉を上げる音もするほど静かである。
と言っても気まずいようなそんな雰囲気ではなく、限りなく穏やかな一時とでも言っておこう。
「そうかい、良いんじゃないか? 久々に帰って来たんだ、いろんなところが様変わりしただろうしな。探検気分で回ってみるか。あ、ひとごみで俺と変わるの止めろよ、じゃないと」
「真、落ち着くでござる。昼間は大変な目に会ったようだが、次は拙者と変わればよかろう」
「大丈夫だって、ここは師匠の所と違って突然襲われるような事なんてないんだから」
「そうか、そうだな。この前の依頼で他の奴らはへばってるからな、出来る限りそういうことが起こらない事を祈るしかないか」
「あ、殿。拙者少し買い物をしたいでござる」
少し物騒な流れから、臣は気づいたように声を上げると心也に思いの旨を伝える。
その内容が買い物、であった。先程も厨房から出てきたことが関係あるのだろうか?
「買い物? 何買うの?」
「いえ、今晩の食卓は豪勢なものばかりだったでござる。手厚い歓迎会を行って貰ったお礼に、拙者達も何かと思ったのでござる」
「それで、何かアクセサリーか服でも見立ててやるつもりか?」
「いや、拙者は手料理を作ろうかと思っているでござるよ、それで明日の朝に瑞穂殿にこの旨を伝えてほしいのでござる」
「そっか、いいね料理か。何を作るつもりなの?」
「そうだな、いっそ幻獣界の物でも作ってやるのか? お前の飯って美味いからな、楽しみだぜ♪」
「そうだね、何を作るの?」
臣のアイデアに賛成の二人。料理には料理で、恐らく今晩食べた料理をみて執事魂に火が付いたのだろう。
「では、牛肉と隆々芋、千年人参に紅蓮玉葱に変わるものを用意して――」
「「火霊羅射守ッ!!!」」
火霊羅射守。幻獣界に伝わる伝説の中でも、料理人や食に携わる職種の人間に語り継がれる伝説の料理である。
その昔、ジンと名乗る火精霊の料理人が数多の魔獣を倒しながら修業の旅を続ける中で生み出したとされる108の料理の一つ。…………読んで字の如くカレーライスなのだが幻獣界に伝わる秘伝通り作ると、火精霊の加護に包まれたような感覚に陥る――らしい。
「そ、そうでござるな。火霊羅射守を作るつもりでござるよ。ふむ、ほたる殿は辛口でも大丈夫でござるかな?」
「う~ん、どうかな……小学校に上がったばっかりの頃だったからねぇ~」
「ほたるの事だ今でも甘口なんじゃないか?」
――ほたるの部屋――
「ハックション!! ……んむぅ、風邪かな? うぅ、早く寝ないと……」
心也との久々の再会やさっきまで聞いていた体験談。そのせいか気が昂ぶってしまいなかなか寝付けないほたるは現在自分の噂話をされているなど米粒ほどにも思っていなかった。
――談話室――
「それじゃ、明日の昼間は買い物とお散歩がてらに探検、でいいよね?」
「そうでござるな。ふふっ、腕が鳴るでござる!!」
「おお? 久々に臣が興奮してんな。これは明日が待ち遠しいねぇ~♪ あ、そういや他の奴らは消耗気味だからなぁ……いや、臣の飯食えないなんて可愛そ♪」
「語尾に音符が付いてるよ真くん。それじゃ、僕は寝ちゃおうかなぁぁぁふぅ……」
欠伸をしながら心也はソファから立ち上がると談話室の暖炉正面、いうなれば心也の座る席の後ろにある部屋に向かって歩き出す。
「お休みでござるよ。今日は長旅で疲れたでござるからな、ゆっくり休んで下され。では、拙者も」
そう言って臣も席から立ち上がると厨房の隣に『おみくんのへや』と子供が書いたと思われる看板を下げた部屋へと入っていく。後ろ姿は嬉々として、腰の辺りから生えた尻尾はふりふりと、ご機嫌な様子だった。
「ふぅ、じゃ俺も寝るかな。動ける戦闘員俺だけだし」
「うん、お休み。絡まれたらお願いね真くん♪」
「よせやい、ほらさっさと寝ろよ」
最後に立った真は厨房とは反対側に沿って付けられている階段を上って二階にある自分の部屋へと消えていった。
「さて、じゃあ僕も……」
こうして、長かった一日も終了した。義母や義妹との再会。二人とも会い変わらずの様子で、昔と何も変わらなくて、本当に安心した。
明日から始業までの間は身の回りの整理や、この街の観光と瑞穂達との時間に当てよう。
そう思案しながら心也も疲れた身体を休める為に深い眠りに就いた。
ふぅ……お疲れさまでした。
今回は久々に母娘の登場です。
いや、そう言えば心也が帰って来てから1日立ってないんですね(苦笑)
と、まぁそんなわけで。
当分陛下が来る事はないかなぁ……みたいな。
一応物語上その日の晩にちょっとずつ話すような形で更新します。
いや、なんか半端(苦笑)
心也の誘拐も犯人分からずじまい、どうなったかもわからない。
でも生きてるからあそこにいるわけですけどね(笑)
さて、次回は姫上市の探検をしたいと思います。
…………以上です。
ではここから雑談です。
最近生徒会が忙しいです。はい、入ったばっかりの自分は即戦力だそうです。
なにぶん会長が言うには……
会「獅子乃! お前PCでプリント作っといて」
獅「俺がッすか?」
会「いまお前に頼んだじゃん?」
獅「いや、だって会計って俺以外にも……」
会「いや、お前のタイピングなら他の奴の1.5倍は早く終わっからさ、ね?」
獅「いや、ね? って言われても……」
会「じゃ、頼んだよ~」
……みたいな。
獅子乃は視力が最近落ちてきたのではとビクビクしております。
はぁ、心の支えは日に日にちょっとずつ伸びるカウンターと。
感想欄に顔を出してくれる方、そして偶に上がるお気に入り。
ふぅ、では感想お待ちしております。
獅子乃の戯言コーナーにお付き合いくださった皆さまありがとうございました。