魔の瘴気
第十七話:魔の瘴気
レオとプルンが辿り着いた地は、かつては緑豊かな場所だったとは信じられないほど荒廃していた。大地は黒く焼け焦げ、立ち枯れた木々が不気味に空を覆い、濃い紫色の瘴気が立ち込めていた。その瘴気は、レオの肌をじりじりと焼くように刺激し、呼吸をするたびに肺を締め付けるようだった。
「プルン、気をつけろ。この瘴気はただの毒ではない。魔の力が凝縮されているようだ。」
レオはプルンに注意を促した。プルンもまた、周囲を警戒するように低い唸り声を上げていた。
レオは宝玉に意識を集中させた。宝玉は微かに脈打ち、周囲の魔の力を感じ取っているようだった。レオは宝玉の力を使い、瘴気を浄化しようと試みた。しかし、瘴気の濃度は想像を遥かに超えており、宝玉の力だけでは完全に浄化することは難しいと判断した。
「この瘴気の発生源を探す必要がある。」
レオはそう呟き、プルンと共に瘴気の中を進み始めた。視界は悪く、数メートル先も霞んで見えない。足元は焼け焦げた土と岩で悪く、何度も足を取られそうになった。
進むにつれて、瘴気はますます濃くなり、レオの体力をじわじわと奪っていく。プルンも苦しそうに咳き込むようになった。
その時、レオの耳に微かな音が聞こえた。それは、苦しそうなうめき声だった。
レオは音のする方へ注意深く近づいた。すると、倒れている人影を発見した。それは、この地に住む村人だった。村人は瘴気に侵され、意識朦朧としていた。
レオは急いで村人に駆け寄り、持っていた水筒の水で口を湿らせた。そして、宝玉の力を使い、村人の体内に侵入した魔の力を僅かずつ浄化していった。
しばらくすると、村人は意識を取り戻した。
「あ…ありがとうございます…。」
村人は弱々しい声で礼を言った。
「一体何が起こったのですか?」
レオが尋ねると、村人は震える声で語り始めた。
「数日前から、この地に黒い霧が現れるようになり…その霧に触れた者は、体が痺れて動けなくなってしまうのです…そして、霧は日に日に濃くなり…今では、このように…」
村人は再び意識を失いかけた。レオは再び宝玉の力で村人を支えた。
「その黒い霧…つまりこの瘴気の発生源はどこにあるのですか?」
レオが再び尋ねると、村人はかろうじて指を指した。その先には、巨大な岩山が見えた。
「あの…山の奥に…瘴気の…源が…」
村人はそう言い残し、完全に意識を失った。
レオは村人を安全な場所に運び、プルンに見張りを頼んだ。そして、自身は岩山へと向かうことを決意した。
岩山へ向かう途中、レオは次々と倒れている村人たちを発見した。彼らは皆、瘴気に侵され、瀕死の状態だった。レオは一人一人に宝玉の力を使って応急処置を施していった。
岩山に近づくにつれて、瘴気の濃度はさらに増し、空気は重く、呼吸をするのがやっとだった。レオは宝玉の力を最大限に使い、自身の体を守りながら進んだ。
そしてついに、レオは岩山の奥深くにある洞窟の入り口にたどり着いた。洞窟からは、今まで感じたことのないほど強烈な魔の力が溢れ出ていた。
「ここが…瘴気の発生源か…」
レオは覚悟を決め、洞窟の中へと足を踏み入れた。洞窟の中は真っ暗で、一寸先も見えない。レオは宝玉の光を頼りに、慎重に進んでいった。
洞窟の奥に進むにつれて、レオは異様な光景を目にした。洞窟の中央には、巨大な黒い水晶のようなものが鎮座しており、そこから絶え間なく瘴気が噴き出していた。
「あれが…瘴気の源…!」
レオは黒い水晶を見つめた。それは、邪悪な力に満ち溢れており、見ているだけで吐き気がするほどだった。
その時、洞窟の奥から、低い唸り声が聞こえた。レオが声のする方を見ると、巨大な魔物の姿があった。それは、黒い鱗に覆われた巨大なトカゲのような姿をしており、口からは瘴気を吐き出していた。
「まさか…この魔物が…!」
レオは身構えた。この魔物が、瘴気の発生源である黒い水晶を守っているのだ。
レオと魔物の、激しい戦いが、今、始まろうとしていた。