宝玉の力
クリスタルの竜から与えられた試練を乗り越え、レオはついに宝玉を手にした。宝玉は温かく、優しい光を放ち、レオの体内に溶け込んでいった。レオは、体の中に、今まで感じたことのない、強大な力が満ちていくのを感じた。
しかし、その力は、レオの想像を遥かに超えるものだった。体中を駆け巡る奔流のような力に、レオは圧倒され、意識が朦朧としていくのを感じた。
「う……あ……!」
レオは苦悶の声を上げ、膝をついた。体中が熱く燃え上がり、骨の髄まで痺れるような感覚が襲ってくる。
「レオ!しっかりして!」
プルンが心配そうにレオに呼びかけるが、レオは答えることができない。意識が遠のき、まるで深い眠りに落ちていくようだ。
その時、クリスタルの竜の声が響いた。
「宝玉の力は、強大すぎる……生半可な器では、その力を制御することはできない……」
クリスタルの竜の言葉通り、レオの体は、宝玉の力に耐えきれなくなっていた。このままでは、力が暴走し、レオ自身が破壊されてしまうかもしれない。
その時、レオの意識の中で、かすかな声が聞こえた。それは、かつてこの迷宮に挑んだテイマー、アレンの声だった。
『レオ……聞こえるか……?』
「アレン……さん……?」
レオはかすかに答えた。
『そうだ……私は、かつてこの場所に挑んだ、アレンだ……』
アレンの声は優しく、レオを落ち着かせようとしているようだった。
『宝玉の力は、確かに強大だ……だが、恐れることはない……その力は、お前自身の心と繋がっている……心を静め、その流れを感じるんだ……』
アレンの言葉に、レオは意識を集中させた。体の中を駆け巡る力の流れを感じようとした。最初は、制御不能な奔流のように感じていた力が、徐々に、規則的なリズムを刻んでいることに気づいた。
『そうだ……その流れを感じるんだ……そして、お前自身の心と重ね合わせるんだ……』
アレンの導きに従い、レオは自分の呼吸と、力の流れを同調させていった。すると、不思議なことに、今まで制御不能だった力が、徐々に落ち着きを取り戻していくのを感じた。
『大切なのは、力に支配されるのではなく、力を支配することだ……お前自身の心で、その力を導くんだ……』
アレンの言葉が、レオの心に深く響いた。レオは、自分の意志で、宝玉の力を制御しようと試みた。最初は、ほんのわずかな力しか制御できなかったが、徐々に、その範囲を広げていった。
やがて、レオは完全に宝玉の力を制御できるようになった。体中を駆け巡っていた熱い感覚は消え、代わりに、穏やかな、暖かい力が満ちているのを感じた。
「ありがとう……アレンさん……」
レオは心の中で、アレンに感謝の言葉を述べた。
『礼には及ばない……お前自身の力で、この力を制御したのだ……』
アレンの声は消え、レオは再び、クリスタルの竜と対峙した。
クリスタルの竜は、レオの変化を感じ取ったようだ。
「……見事だ……本当に、宝玉の力を制御したか……」
クリスタルの竜は、感嘆の声を発した。
「汝らは、この迷宮に眠る力に相応しい器であることを証明した……この力を使って、世界に平和をもたらすことを願う……」
クリスタルの竜はそう言い残し、再び祭壇の背後に姿を消した。
レオは、手の中に宿る宝玉の力を見つめた。それは、強大でありながら、優しく、暖かい力だった。
「プルン……僕たち……やったんだ……」
レオはプルンに語りかけた。プルンは嬉しそうに、レオの手に体を擦り寄せた。
レオとプルンは、深淵の迷宮を後にした。彼らの冒険は、まだ終わらない。宝玉の力を使って、世界を救うという、新たな使命が始まったのだ。
そして、レオとプルンの名は、伝説のテイマー、アレンと並び、人々の記憶に深く刻まれることとなるだろう。彼らの冒険は、永遠に語り継がれる物語となるだろう。