旅立ちの準備
深淵の迷宮への挑戦を決意したレオは、本格的な準備に取り掛かった。これまでの冒険とは比べ物にならないほど危険な場所であることは、容易に想像できた。入念な準備こそが、生還への可能性を高める唯一の手段だと、レオは固く信じていた。
まずレオが向かったのは、街一番の武具屋だった。これまでの装備では、深淵の迷宮の魔物たちには到底通用しないだろう。より強力で、耐久性のある武具が必要だった。
店に入ると、熟練の職人といった風貌の老人が、奥の作業場で何かを打ち付けていた。
「いらっしゃい。何かお探しかな?」
老人は顔を上げ、レオに声をかけた。
「深淵の迷宮に挑むための装備を探しています」
レオの言葉に、老人は一瞬目を丸くしたが、すぐに表情を引き締めた。
「深淵の迷宮……か。無謀だとは言わん。だが、生きて帰ってくるつもりなら、それ相応の覚悟と準備が必要だ」
老人はそう言うと、奥からいくつかの武具を持ってきた。どれも重厚で、見るからに頑丈そうだ。レオはその中から、軽量でありながらも高い防御力を持つ鎧と、切れ味鋭い短剣を選んだ。
次にレオが向かったのは、薬屋だった。深淵の迷宮では、どんな状況に陥るかわからない。回復薬や解毒薬はもちろん、特殊な効果を持つ薬もいくつか用意しておくに越したことはない。
薬屋の店主は、レオの目的を聞くと、いくつかのアドバイスをくれた。
「深淵の迷宮では、特殊な毒や状態異常を引き起こす魔物もいると聞きます。これらの薬も持っていくと良いでしょう」
店主はそう言って、いくつかの薬を勧めてくれた。レオはそれらを全て購入し、しっかりとリュックに詰め込んだ。
プルンのための準備も怠らなかった。深淵の迷宮は、通常の環境とは大きく異なる可能性が高い。プルンが快適に過ごせるように、特別な食料や水を用意する必要があった。
レオはエマの研究室を訪ね、プルンのための食料について相談した。エマは快く協力してくれ、高カロリーで栄養価の高い、プルン専用のゼリー状の食料を開発してくれた。また、様々な属性の魔力を含んだ特殊な水も用意してくれた。これは、プルンが融合進化の力を維持するのに役立つという。
「レオさん、これはプルンの力を一時的に増幅させる効果を持つ魔法薬です。もしもの時に使ってください」
エマは最後に、小さな瓶に入った魔法薬をレオに渡した。それは、以前の研究で開発されたもので、プルンの力を一時的に限界以上に引き出す効果があるという。ただし、使用後の反動も大きいため、本当に切羽詰まった状況でしか使うべきではないと、エマは付け加えた。
「エマさん、本当にありがとうございます」
レオは心から感謝の言葉を述べた。エマの協力は、レオにとって大きな支えだった。
全ての準備を終え、レオは出発の日を迎えた。街の入り口には、多くの人々が集まってきて、レオとプルンの旅立ちを見送っていた。中には、リナやガルド、ミリアの姿もあった。
「レオ、気をつけてな! 無事に帰ってくるのを待ってるぞ!」
ガルドは力強くレオの肩を叩いた。
「レオさん、プルン、必ず生きて帰ってきてくださいね!」
ミリアは心配そうにレオとプルンを見つめた。
リナはレオの目を見つめ、静かに言った。
「レオ、信じてるわ。あなたなら、きっとやり遂げられる」
リナの言葉に、レオは力強く頷いた。
「行ってきます!」
レオはプルンと共に、深淵の迷宮へと続く道を進み始めた。二人の冒険は、新たな段階へと突入した。未知の危険と、未だ見ぬ景色が待つ、壮大な旅が、今、始まった。