醜聞で失脚した天才お笑い芸人の俺を相方が死ぬほどイジってくる
いくら天才といえども、家から出られなければ意味がない。
俺、加賀童夢は全ての仕事を失った。キー局看板番組が3本、地方局のレギュラーを2本、ラジオ1本、その他営業。
俺はお笑いコンビ『スキッパーズ』のツッコミで『30年に1度の天才』と言われていた。
失脚の理由は『脱税』である。名ばかり社長だった会社が派手に脱税していた。俺は世間的にはバカの範疇にいた。
矢面に立ったのは鴻巣正。俺の相方。
レポーターに囲まれた鴻巣はニコニコと言った。
「まあまあみなさん……加賀も色々あるんですよ……市中引き回しの上打ち首で勘弁してやって下さい!」
「死刑やないかい!!」
俺はテレビの前でツッコんだ。
鴻巣は俺の番組ほぼ全ての代役を買ってでた。
番組内で俺を罵倒しまくった。「ろくでなし」「これがあいつの通知表」
仲良く『1』が並んだ通知表を実家から持ち出しやがった。世間が『こんなバカなら脱税もわざとじゃなかったのでは』と思うのに時間はかからなかった。
謹慎1ヶ月目にいきなり鴻巣から電話が掛かってきた。
「今日1日何食べたの?」
「何って……朝菓子パンと夕方にカップ麺」
「はあ? 昼飯どうした?」
「家から出ないから腹減らないねん」
「バカが!」
電話が切れた。
翌日女の子が俺の家にやってきた。
「ハウスキーピング『スマイル』ですぅ」
目がクリクリッとして死ぬほどタイプだ。名前はユリちゃん。
ユリちゃんの料理を食べていたら生気が戻ってきた。何かやりたい。台本は書けないから、自伝でも書こう。
俺はバカだから自伝に1年かかった。
原稿を読んだ編集者が「加賀さん。これ映画にできますよ」と言ってくれた。復帰のタイミングで出版されることが決まる。極秘情報だ。緘口令が敷かれた。
俺はユリちゃんにプロポーズした。ユリちゃんは受けてくれた。
鴻巣が全ての現場で頭を下げ続けたことを、後輩から知らされた。
「あいつは天才なんです。どうか芽を潰さないでやって下さい」
涙ながらに訴えたという。
俺は明日、復帰の舞台に立つ。
1年半ぶりで緊張する。鴻巣に舞台上でイジリ倒される予定だ。
結婚の報告をすると「俺が苦労している間にイチャイチャしやがって!!」と罵られた。それであいつは100万円の入った『結婚祝い』をユリちゃんに渡し、「加賀を頼みます」と頭を下げたそうだ。
おのれ鴻巣。復帰と共に俺の自伝が出版される。どんなにお前がいい奴か全部書いておいたから、本屋の前で1人赤面しやがれ。
【純文学】日間1位☆☆週間1位☆☆月間2位☆☆四半期10位☆☆年間36位☆☆ありがとうございます。
╰(*´︶`*)╯♡
↓↓こちらの作品に関したエッセイを書いております。
スクロール下にリンクあります↓↓
『ただいま月間3位の私が「タイトルを変えたらPVが体感8倍増えたよ!」ということをお伝えしたいだけのエッセイ』