表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

痛風

作者: 羽生河四ノ

今年の夏の始まりの頃だったかなあ。いや、夏ホのテーマが発表された直後だったかな。

「今年はラジオかあ」

ってなった記憶があるから、だからその直後かな。突然足が、右足が痛風発作みたいな症状に襲われてねえ。まあ本当に痛風発作だったのかどうかはわからない。正直な話、そんな症状初めてだったから。


「ええ?」

朝起きて、立ち上がった瞬間、信じられない程に痛みが、右足のその、足のさ、底面からと、外側の側面、小指側の底面から小指側の側面、外側にかけて、今まで体験したことも無いような痛み。地面に足を置く度、しびれるような、しびれあがるような痛み。


「これはなんだ?」

満足に歩行できない。右足を地面に置く度にしびれあがるような痛み。なんだこれ?何なんだこれ。で、すぐに思い当たった。思い当たったっていうか思い当たる節があった。日頃からゾンプラで内さまを観ながらお酒を飲むのが習慣となっている。習慣っていうかもう、私からしてみたら慣例ですよ。だから後はもうあれじゃん。マジカルバナナじゃん。内さま。三村さん。痛風。じゃん。シーズン0の有野さんゲストのカニ食べ尽くしツアーの時のオープニングトークで三村さんが痛風になった時の歩行の状態を描写されてたじゃん。あれですよあれ。

「足を地面につけたくない状態、描写」

あれ。


だからその右足の痛みを前に、震え上がった。

「あれかああ!」

ってなった。「あれかなああ!」って。いや、カニ食べたっけ?ってなった。甲殻類食べたっけ?食べてないけど!?ってなった。


それからあと同時に、夏ホになんか出来ないか?っていうのも考えた。これはもうあれですね。そういう中毒っていうか。チェーンスモーカーみたいなもの。何かあったら、すぐ、そういう事を考えちゃう。病気。


痛風。名前の由来にはいくつかの説あるらしいけど、その中の一つに、

「症状の出てる箇所に風を受けただけでも、痛いから」

っていうのがあるらしい。


そこで、ある一個の事を思いついた。まあ、マジカルバナナじゃん。痛風。風を受けただけでも痛い。今年の夏ホ。テーマはラジオ。風を受けるだけでも痛い痛風。ラジオ。ラジオをそこで受けたら痛いのか?それ話になりませんか?


という訳で、さっそくというか。

「こんな経験滅多に出来ないから」

右足の、その症状の出てる箇所にラジオを聴かせてみた。

「これは何?何しているの今?」

と思いながら、そういうことをした。馬鹿みたいだったけど、でもせっかく痛風みたいな、いやなったことないし、怖いから調べてもいない。今どきネットで調べたら痛風ってこういうのですっていうのは死ぬほど出てくるだろうけど、でも怖いじゃん。ガチの痛風だったら。ひえええってなるでしょう。でも、とにかく夏ホには何か書いて提出したいし。だから、ねえ。せっかくだから、ねえ。


風が吹くだけでも痛いという説のある、痛風。それなのかわからないけど、とにかく自分自身が思い描く痛風と同様の症状の出てる足。そこにラジオを聴かせてみた。


「……」

まあ、


「まあ、痛くはないなあ」

ラジオではパーソナリティがなんか色々と言ってる。それが音となって、ラジオのあの、ぶつぶつのスピーカーの所から出てる。そんでそれを足に聞かせてる。


「痛くはないなあ」

痛くはない。ラジオは痛くない。風は痛いのかもしれないけど、ラジオは別に痛くない。痛くないラジオなのかもしれない。もしこれがBoseのスピーカーとかから出てくる音だったら、それはさすがに痛いかもしれないけど。でも、今、この状態、アマゾンで1000円くらいで買った、木目調ラジオのスピーカーから聞こえてくる音は別に足には痛く感じない。ふーん……うーん……。


「何してんだこれ?」

そこでふと我に返った。


いや、これは、このままじゃいけない。私だってやることあるんだ。洗濯とか。皿洗うとか。あととりあえず、

「トイレ行きたい」

ラジオの電源を切って、慎重に椅子から立ち上がった。右足を地面に慎重に、慎重に慎重に設置する。

「ぴいいいい」

瞬間、痛みが電流の様に体を駆け上る。設置するかしないかのギリの状態の時ですら、痛い。相当に痛い。やっぱり痛い。夢じゃないこれ。


そうして右足に気を配って歩いていると、左足の小指を角にぶつける事案が発生した。


「ぎゃああ!」

家の中で転倒した。右足ばっかりに気を配っていたから、左足が嫉妬したのかもしれない。


それで心が折れたみたいになって、もう立てないってなって。そのまま這うようにしてトイレに向かった。様式便所の便座に腰を下ろして、

「ふーふー」

息を整えるように呼吸を繰り返す。落ち着け落ち着けと心の中で唱える。おでこから出てきた脂汗を拭う。


その甲斐あって左足の痛みが落ち着いてきた。それと同時に心も落ち着いてきた。

「とりあえずまあ、今日明日は痛み止めを飲んで様子をみよう。歯痛が日常生活だった頃に買った痛み止めがあるはずだから。とりあえずそれを飲んで」

心も落ち着いてきた。そういう考えも浮かぶようになってきた。


その時、声がした。何だと思った。すぐ近くから声がした。右足から声がしていた。さっきのラジオの声だった。すぐに分かった。さっき聞いてた話をする、してるんだもんだって。


痛風を起こした右足、多少腫れてた右足が、左足の小指をぶつけて転んだ時にかな、その時どっかにぶつけたのかな。


底面の腹の部分っていうのかな。その一部がちょっと裂けたみたいになってて、血が出てて、そこから同時に声も聞こえてきてる。ラジオの声。ラジオの音。聞こえてきている。きていた。


「それではここで一曲聴いてもらいましょう」

って、足から声がする。その後、最近TikTokで流行ってるとかいう曲が流れ出した。足から。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ