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月明かりに照らされて  作者: ゆず
File.1 修学旅行費盗難事件
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File.1-1

「おーい、満月!」



 僕の名前を呼ぶ声が聞こえ、振り返ってみるとすぐ目の前には思い切り振りかざされたカバン。勢いのあるそれを避けることはできず、僕の顔に直撃する。



「痛いなあ、空。朝から何するんだよ。」


「ごめんごめん。今日は朝からカツ丼だったから元気が余っちゃって!」



 彼女は幼馴染の青野空(あおのそら)。見ての通り元気いっぱい天真爛漫な女の子。「元気なのは良いこと」と世間はよく言うが、最近彼女を見ていると元気すぎるのもどうかと思うようになってきた。というか、朝からカツ丼なんてよく食べる気になったな。



「うわ。目の下にすごいクマができてるよ。また遅くまで本読んでたんでしょ。」


「昨日は新作の推理小説が発売されたからね。」



 僕の名前は新満月(あらたみつき)。少し推理小説が好きな普通の高校生。眠たくて開かない目を擦りながら学校へ行き、空にぶっ叩かれ、学校で退屈な授業を聞き、友達と駄弁り、家に帰ってご飯を食べて寝る。この時はそんな日が続くものだと思っていた。まさかあんなことが起きるなんて…




「早く着きすぎちゃったね。誰かいるのかな。」



 空はそう言いながら思い切りドアを開けた。



「おはよう、空ちゃん、満月くん。二人とも早いね。」



 そう言ったのは同じクラスの学級委員の群青奈央(ぐんじょうなお)。とてもまじめでクラス、いや学校のアイドル的存在の可愛い女の子。それもそのはず、彼女は高校に通いながらアイドルとして活動している国民的スター。学校の中では「群青親衛隊」なるものが結成されるぐらいだ。学校のアイドルであり国民的スター、もはや前者の肩書き、必要ないのではないか。



「おはよう、奈央!」


「おはよう、群青さんこそ早いね。何かあったの?」


「今日は学級委員の仕事があったの。クラスも変わったばっかりでやることが多くて。」


「せっかく早く来たし手伝うよ。三人でやれば早く終わるんじゃない。」


「ありがとう、助かるよ。私一人じゃ終わりそうになかったんだ。じゃあ…」




 僕たちの作業も大方終わり、登校する生徒が増えてきた。


 そして、始業のチャイムが鳴ると同時に担任の秋元先生が入ってきた。チャイムが鳴ってもざわめいたままの教室。神妙な顔つきで入ってきた秋元先生が教壇に立ち大きな声を上げる。



「みんな席につけ、大事な連絡がある。」



 教室が静まり返ると秋元先生は続ける。



「昨日の放課後、昨日のホームルームに集めたクラスの修学旅行費が盗まれた。」



 秋元の言葉を聞き、教室がざわつき始める。


 クラスメイトの「あんな大金が盗まれたんですか?」という言葉に対し、秋元は「ああ。昨日の放課後、職員室の机に置かれていたのが盗られたんだ。」と返す。



「もしも盗んだ人がいるのなら正直に名乗り出てくれ。今なら…」



 と話を続けていたが、もはや誰も聞いていない。



「まじかよ」


「えー、こわーい」


「私のお金も盗られてないかな」



 教室のざわめきが止まらない。



「静かに!」秋元の黒板をバン!と叩く音で教室が再び静まり返る。


「そういえば…」秋元は僕の隣の席の群青さんを見る。



「昨日の放課後、群青は学校に残って何をしていたんだ?」



 その一言で教室中の視線が群青さんに集まった。



「え、私は、あの、学級委員の仕事で…」


「そんなに長引く仕事だったのか?職員室にも来てたみたいだしなぁ。」


「それは書類を提出しに…」


 群青さんの声から自信が失われていく。同時にクラスのあちこちから



「ええ、あの群青さんが?」


「でも確かによく残ってるよね。」


「みんなすぐに帰ってたしね」


 という声が聞こえ始めた。



 こうなるとだめだ。クラスみんなの目が疑いの目に変わりつつある。今朝も早くに来て一人で黙々と仕事していたぐらいだ。そんなことするはずがない…と僕も思っているが違うと言い切れる証拠がない。さて、どうしたものか。



「待って、待って!奈央はそんなことしないよ!」



 僕が考えていると、高く元気な声によってクラスが三度静かになる。そう、空が群青さんが疑われていることに耐え切れず声を上げたのだ。



「奈央は今日も早く来て仕事してたもん!クラスのみんなのために頑張ってるんだし修学旅行費を盗んだりなんかしないよ!」



 空の言うことはごもっともだ。僕もそう思っている。だが…



「青野が仕事をしているところを見たのは今朝の話だろう?昨日の放課後は何をしていたか知っているのか?」


「それは知らないけど…」



 そう、なんせ相手は秋元だ。秋元はとにかく性格が悪く、めんどくさい。普段は男子には厳しく、女子にはこれでもかというほど甘い。なんでよりによって秋元が担任なんだ。せめて他の先生なら何とかなったかもしれないのに。



「まぁ、青野の友達を思う気持ちに免じて時間をくれてやる。明日の放課後だ。それまでに修学旅行費を盗んだ本当の犯人を見つけ出したら群青を疑ったことを謝ろう。」


「やった!それじゃあ…」


「だが!犯人が見つからなかったときは分かっているだろうな?二人で責任を取ってもらうからな。」




 こうして始まった修学旅行費を盗んだ犯人探し。タイムリミットは明日の放課後。果たして犯人は見つかるのだろうか。

読んでいただきありがとうございます!

拙い文章で、内容も面白いかわかりませんが、また読んでいただけたら幸いです!

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