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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

殺された妹からの最期の留守電

作者: ヒロモト

俺は何十回と聴いた留守電をまた再生した。


『もしもしお兄ちゃん?ぜーんぜん連絡くれないじゃん?最近元気?あのね。私はね……』


他愛のない世間話。こいつは本当におしゃべりなやっだったな。うっとうしいぐらい元気で明るくて。

俺とは正反対の性格。周りからも好かれていた。


(お兄ちゃんがお母さんのお腹の中に置いてきた良いものぜーんぶ私が取っちゃった)


そんな冗談なんか言ってたさ。あいつは冗談のつもりでも俺はめちゃくちゃ傷ついたんだぞ?いつもいつも『妹じゃない方』扱いされた俺の気持ちがお前に分かるか?


『でさー大学でさー。毎日ナンパされてうぜーの。ふってもふってもキリがないのー』


お前は勉強も出来たよな。俺は大学受験失敗して高卒で働いてるのにお前は良い大学に入学出来たんだよな。羨ましいよ。顔も俺に似ないで美人。ベースは同じなのに顔のパーツは全部俺の上位互換。

俺の手足は短いのにお前は長い。何でだよ。

お前のせいで俺はいつも失恋ばかりしていたんだぞ。


『遊びに行くから住所いい加減教えてよー。お兄ちゃんの作るご飯が食べた~い』


……でもお前は俺になついてたよなぁ。甘えん坊でいつもベタベタくっついてきて。ブラコンで彼氏もいなくて……もしかしたら処女だったかもな。

住所なんて教えないよ。お前へのコンプレックスで東京に逃げてきたのに。


『んあ?お客さんだ?はーい。えっ?誰?⚪⚪さん!?何で私の家しってんの?やめて!包丁なんて危ないから捨てて!』


一番の盛り上がり所だ。激しくもみ合う音の後にレタスの葉っぱをまとめて握りつぶしたような音がした。妹は刺されたのだ。犯人は妹にふられストーカーになってしまった40代の男。


『……痛い……助けてお兄ちゃん』


妹が苦しんで死ぬまでの音。声が全て入っている。この留守電は一生消せないな。聞くたびに胸が苦しい。これは俺の罪だ。

男に妹の住所を教えたのは俺なんだ。彼に嫌われたくなかった。俺にとって妹は命より大切な存在だったが彼だけは渡したくなかった。彼は俺の事を好きになってくれただろうか?俺の事は警察に話さないという約束は守ってくれているのできっと好きになったはず。今度こそ俺の恋は叶う。俺は彼を信じてる。人一人殺したぐらいじゃ死刑にはならないだろう。彼が出てくるまで何十年だって待つ。結婚にはお金がかかる。さぁ今日もお仕事頑張ろう。

玄関の扉を開けた瞬間に3人の男が俺を取り囲んだ。俺が出てくるのを待っていたのだろう。俺はまた妹のせいで失恋したんだなとため息をついた。








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― 新着の感想 ―
[一言] 住所を教えても犯罪にはならないような、と思ったら、約束がアウトでびっくりです。
[良い点] 苦しい、苦しいよぅ 痛いよぅ [一言] にんげん、てヤツぁ
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