表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/44

6話 誰かが説明ゼリフを吐いてくれないと異世界生活は始まらない

 ケネスの説明が始まった。


「では私の方から説明させていただきます。最初はこの大陸にある国々を簡単に歴史と合わせてご説明申しあげます。


 この大陸はユグドラシル大陸と呼ばれています。北には魔獣の居る暗黒大陸があると言われています。南には南海諸島群があります。他にも大陸があるのではないかと考えられていますが発見には至っておりません。


 328年前の大陸統一からお話させていただきます。

 ヴァルキュリア王国のディートリヒ・ワルキューレ国王が大陸を統一し、翌年ヴァルキュリア歴元年を宣言します。現在も私どもはヴァルキュリア歴を使用しております。今日はヴァルキュリア歴328年3月1日です。


 ヴァルキュリア王国が統一する前には人間以外の国もあったのですが、ヴァルキュリア王国建国により、この大陸は人間により治められます」


 この世界は北欧神話系なの? どこかで魔導王がでてくるのか? ケネスがこちらを見ている。くだらない考えに浸っていたことがバレたようで恥ずかしい。


「ヴァルキュリア歴130年、まだ平定していなかった南海諸島群、龍宮王朝に対して討伐軍が編成されました。

 先行部隊が龍宮城に迫ったところで、先行部隊を率いていたリヒャルト・ワルキューレ王弟殿下が、反逆したマサカドに弑逆されました。

 マサカドは先行部隊の指揮権を奪いヴァルキュリア王国に反旗を翻しました。同時に、龍宮王朝もヴァルキュリア王国に宣戦布告を行い、マサカド軍に呼応しヴァルキュリア王国に攻め込みました。

 そして、王都を出発していた龍宮王朝討伐軍本隊とマサカド・龍宮王朝連合軍が、現ヨツンヘイム平原で激突しました。


 戦闘は熾烈を極め、ヴァルキュリア王国軍本隊は壊滅寸前というほどの被害を受けました。しかし魔王マサカドが自軍をも蹂躙しマサカド軍、つまりヴァルキュリア王国軍先行部隊と龍宮王朝軍本隊を壊滅させました。そのとき龍宮王朝軍を率いていた国王スミトモ王も魔王マサカドの攻撃で殺されてしまいました。

 その後龍宮王朝軍のタワー近衛隊隊長が魔王マサカドを倒したが、魔王を完全に倒すことは不可能だったため、ヴァルキュリア王国国王フランツ・ワルキューレが命を懸け封印したと言われています。

 その封印の地がここヨツンヘイム王都で、王都の地下では今でもフランツ王が魔王マサカドを封印していると言われています。

 この物語は吟遊詩人が奏でる有名な風雲虹(ふううんこう)という唄で語り継がれ、ここ王都では子供でも知っている物語になっています。

 現在、魔王を倒したタワー近衛隊隊長は勇者であったと認定されております」


 今度は日本か。


「マサカドはヴァルキュリア王国の軍人だったのですか?」


 俺の質問にエドワードが答える。


「冒険者ギルドに当時の登録状況が残っていて、マサカドはS級冒険者だったことが分かっている。それも相当の凄腕で、勇者級と言われている。ヴァルキュリア王国の先行部隊の傭兵として雇われていた可能性が高い。

 最初から魔王だったのか、南海諸島に渡ってから魔王になったのか、魔王に入れ替わったのか、そのへんは分かってないが王弟を倒した時には魔王になっていた可能性は高い。先行部隊や龍宮王朝軍は魔王マサカドのなんらかの術にかかっていたと考えられている」


「なぜ魔王マサカドは、自分の味方を攻撃したのですか?」


「最終的には全ての人を殺すのが目的の一つではないかと考えられております」


 次の質問に答えたのはケネスだった。その後もケネスが続ける。


「ヴァルキュリア王国軍も龍宮王朝軍も崩壊寸前ですから、ヴァルキュリア王国軍本隊に参謀として従軍していたヴァルキュリア国王の従兄弟にあたるヴィルヘルム・フォン・ヴュルテンベルク公爵とタワー近衛隊隊長のあいだで停戦協定が結ばれ、龍宮王朝軍は南海諸島に帰っていきました。


 130年、ヴュルテンベルク公爵はヴァルキュリア王国の後押しもあり、この地にヨツンヘイム公国を興し、龍宮王朝では子供の居なかったスミトモ王に代わりタワー近衛隊隊長が国王を僭称(せんしょう)したと言われています。


 131年春、前年にタワー・トゥータ王が誕生した龍宮王朝と、ヴァルキュリア王国は正式な平和条約を結びました。


 131年秋、各地で差別を受けていたエルフ族や獣人族がエルフ族主導で集結し、アルフヘイム王国を建国しました。大陸の南側です。地理的に近い、龍宮王朝が協力したのではないかと言われています。アルフヘイム王国は今でもヴァルキュリア王国と交戦中ですが、実際には国境も接していませんし、戦闘はここ200年くらい起きていません。


 132年、ヨツンヘイム公国でヴュルテンベルク公爵がヴュルテンベルク王家を興し、ヨツンヘイム王国を建国します。


 133年、大陸の西側を領地としている貴族どもが、ヴァルキュリア王国の力が弱まったことをいいことに、税率を上げ過ぎたため、傭兵王と呼ばれるトール王が農民の税率を30%にすることを公約とし挙兵、多くの農民がトール王を支持し破竹の勢いで領土を広げていきました。


 ちなみにこのときの大陸西側の税率は65%だったと言われています。

 同じヴァルキュリア王国でも、国王が睨みを利かせられた大陸北側だと40%に抑えられていました。

 ヨツンヘイムの農民への税率は基本的には40%です。


 135年、大陸の西側には傭兵王トールがニヴルヘイム王国を建国します。当時、ヴァルキュリア王国にはニヴルヘイム王国を攻める戦力はありませんでした。


 現在は今話した四か国である北のヴァルキュリア王国、東のヨツンヘイム王国、南のアルフヘイム王国、西のニヴルヘイム王国が大陸の覇を争っています。大陸の中央部に大きなカルデラ、ミズガルズがあり、そこに世界樹ユグドラシルがそびえています。

 さきほども言いましたが今年はヴァルキュリア歴328年で、今話しているヴァルキュリア語は、龍宮王朝を含めてどこへ行っても通じます。エルフ族や獣人族たちは独自の言葉を持っていることが知られていますが、我々と話す場合はヴァルキュリア語で会話できると言われています」


「この世界にはどういった種族が暮らしているのですか?」


「アルフヘイム王国を除くユグドラシル大陸は主に人間が暮らしています。

 アルフヘイム王国はエルフ族を中心に獣人族が暮らしています。獣人族とは、犬耳族や猫耳族を代表とする獣耳族(けものみみぞく)や、ドワーフ、牛頭人身(ミノタウロス)、狼男、人虎(じんこ)蜥蜴人族(リザードマン)などを指します。


 大陸各地に魔獣が生息しておりますが生態は不明です。


 南海諸島群には人間が暮らしています。獣人族が居る島があるという噂もあります。


 暗黒大陸には魔王と魔王軍がいると考えられていますが、もちろん確認した者はおりません。


 古い文献には大陸に龍人族(りゅうじんぞく)が居たとあり、ドラゴンに変身できるとか、ドラゴンを使役することができたと言われていますが、現在では龍人族は居なくなったか、元々居なかったと考えられています。


 妖精族も古い文献に出てきます。

 いたずら好きで人間が見つけることは難しいと言われています。

 甘い物につられると、人間の前に姿をあらわすという言い伝えが有名です。

 大陸では妖精祭りというのがあって、妖精に扮した子供たちにいたずらされないよう、甘いお菓子を与えるという風習になっています。


 自然と一体となった存在、精霊が居たとも言われております。

 火の精霊サラマンダー、水の精霊ウンディーネ、風の精霊シルフ、大地の精霊ノームの四大精霊が有名ですが、人間や獣人族が見ることはできないと言われています。

 今ではおとぎ話に過ぎないと考える向きもあります」


「なぜ大陸の名前と世界樹の名前が同じなのですか?」


「神話だと世界樹がこの世界の全てとなっており、その当時はこの大陸しか知られていなかったので、世界イコール大陸ととらえられていたのかもしれません。今では暗黒大陸や別の大陸の存在も考えられているので、それを合わせてユグドラシルではないかと唱える学者もおります」


「世界樹ユグドラシルはどこの国の領土に属していますか?」


「世界樹のそばは、現在どの国の物でもないです。

 130年からのヴァルキュリア王国の衰退で、ヴァルキュリア王国が世界樹そばに軍を進駐しない方針でいるようです。

 それに合わせるかのように各国も世界樹のそばに軍を派兵していません。

 定期的な魔獣狩りも行われていないことで当然魔獣が増え、本格的に領土に組み込むとしたらまずは軍隊を送って魔獣を討伐しないといけないでしょう。

 Sランク魔獣が多数いると言われています」


「魔王が居なくなった後も魔獣が残ってるのですか?」


「所謂、魔王直属の魔王軍は現在のユグドラシル大陸にはいません。

 ただし元々魔獣は大陸中に点在しており、今でも小さな村や町が襲われることはあります。

 魔獣による被害状況により、ヨツンヘイム王国軍による討伐軍なり、傭兵団や冒険者による討伐隊が組まれることもときどきあります。

 冒険者のパーティで倒せるくらいの魔獣はごまんといるのです。

 我々の商売の一つは町と町、国と国との物流ですので、その規模にあった冒険者たちを状況に応じて護衛として雇います。」


 俺の質問にケネスが逐一答えてくれる。

 ここは魔獣がいる世界で、異世界と言えば、やはり魔獣退治がセットなんだな。


「Sランク魔獣が多数というのは、この辺にはSランク魔獣は居ないのでしょうか? そもそもSランク魔獣とはどういうランクでしょうか?」


「魔獣にはD級、C級、B級、A級、S級、SS級、SSS級とランクがあり、この中で最弱がD級魔獣で、最強がSSS級魔獣になります。ミズガルズ周辺にはS級魔獣、SS級魔獣、SSS級魔獣が沢山います。逆にこの辺り、王都ヨツンヘイム周辺にはA級以上の魔獣はあまり近寄りません」


 別の事が気になったので、もう一度質問してみる。


「税率が40%というのは、コンパス商会の税率も40%なんですか?」


 これについてはフィンが答えてくれた。


「40%という税率は農民のものです。検地によって算出された分の農産物を物納します。だいたい村単位で徴収されます。

 都に住む住民は基本税金は払っていません。

 冒険者のように個人で直接ギルドに入っているか、働いている店がギルドに入っていて間接的にギルドに入っているかの違いは業種によりありますが、王都のそれぞれの職業ギルドが税金を納めています。

 どれくらのお金を治めるかは、その年の利益を元に計算します」


「農民は不作・豊作に関係なく税率を決められているのは厳しいところですね」


 俺はとりあえず知識人ぶって言ってみたところ、立ちどころにフィンに反論される。


「そうとは限りません。検地などここ何十年もやってませんから、隠田は沢山ありますし、実質的な税率はもっと下がるはずです。それにギルド長どうしの繋がりを強くして、どこかのギルドの税金が意味もなく上げられる場合は団結して反対します。

 私達が入っている商業ギルドも検地のお触れがでれば、農業ギルドと一緒になって検地に反対します。個別に団体ごとに税率や税金が上げられると、私達は手も足も出せなくなります。お互いのギルドを守るため、何かあれば団結するようにしています」


「商売をやるときは、基本的に商業ギルドに入る必要がありますか?」


 商売などする気はないけど聞いてみたところ、この質問にもフィンが答えてくれた。


「入らなくても商売はできます、所謂モグリです。小さな商売の場合……たとえば露店一店舗を構えている場合などは相手にしませんが、複数の露店で商いをしていたり、店舗を構えた場合はそうはいきません。これだと国に税金も入らないし税金を払わない分、ギルドに所属している店より有利な価格設定が行えます。そのため、ギルドが率先して証拠を集め、役所に報告し、最終的には潰します」


「市場に出店している場合は税金は無いのですか?」


「市場に出店しているのは、ほぼ間違いなくギルド員の店です。市場で商売をしても、それで直接税金を払う仕組みはないからです。昔は市場に店をだすと、店の広さに応じた税が課せらえた時期もありますが、今はギルド員になることで市場での税の徴収は行われておりません」


 これは楽市ってことなのかな? でも、座に入ってないと商売ができないから、楽市楽座ってわけではないようだ。


「そうするとやはり新しく店を出すとかって難しくないですか?」


「ギルドに入るとギルドによりますが、最初の数年は税金を納める必要がありません。どの場所に、どれくらいの広さで、何人の従業員を雇い、仕入れの価格と商品の値付けをどうすると儲かるのかなどのノウハウをお教えすることもあります。場合によっては、ある街のある商売をする商人が店をたたんだ場合、その後釜としてその商人の取引先を引き継げるよう手配したりします。

 ギルド員の税率が一律ではないのは、店の規模や経営状態によって柔軟に対応するためです」


「ギルドはどこの国でもあるものですか?」


「ギルドの起こりはだいたい同業者組合で、相互に協力しあうものでした。そういったものは、どこの土地にもある制度だと思います。ただし、ギルドが納税や献金を通して政治にも口を出せるような力を持ちすぎると、今度は弊害が生じます。独占権を得てギルド員のみ収益が上がるようにしたり、競争相手となる新規参入者を排除したり、裏金を通し政治を経済的に操ったりなどです。そうなった場合はギルドの解散が強制的に行われ、特権などを剥奪された力の弱いギルドが作られたりします。

 自国の産業が弱い場合などはギルドを作らせず、税金を納めないで良い代わりに、自国の産業を育てる方法もあります。

 ニヴルヘイム王国が建国当初、そういった政策を執っていたと聞きました。また、いろいろな理由で商人が出て行ってしまった都市などでは、復興のためそういった政策が執られることもあります」


 一説には信長は楽市楽座で商人を呼び込んで豊かな城下町を作りたかったって云われてるんだよな。


「王都で店を持ちたかったらギルドに入らないと、税金を納める方法が無いから脱税することになるしギルドに入るしかないですね。


 そういえばエルフの国、アルフヘイム王国とも貿易をしてたりするのですか?」


「残念ながら、私達は直接アルフヘイム王国との貿易はできません。龍宮王国を通しての迂回貿易となります。それからアルフヘイム王国を除く大陸の国々では、今なおエルフ族や獣人族に対する差別が続いています。王都にもエルフ族や獣人族は居ないはずです。


 ヴァルキュリア王国にはエルフ族や獣人族を排斥する動きがありますが、アルフヘイム王国に近いヨツンヘイム王国とニヴルヘイム王国はどちらもエルフ族や獣人族を保護する法律を持っており、人間とエルフ族と獣人族には同じ権利が与えられています。今は迂回貿易をするしかないですが、どちらの国もいずれは直接アルフヘイム王国と貿易ができるよう交渉が行われています。


 ただし、どちらの国も元々がヴァルキュリア王国の一部でしたから国民感情として差別は無くなっていないのが実情です。ときおりエルフ族や獣人族をペットにしている貴族や豪商の噂が流れることがありますが、個人の土地で行われていることにまで法が及んだことはございません。エルフ族や獣人族に権利が与えられているのはあくまでも法律上の話だけです。アルフヘイム王国の辺境の地から、エルフ族や獣人族を狩る専門の傭兵がいるという噂もございます。


 それにしてもコジローさんは国の名前などは知らないと仰っていましたが、それ以外の知識はかなりあるようですね」


「確かに、エルフ族との現在の関係性などは知りませんが、どういった種族かなどは何となく知っています。やはりエルフ族は人間に比べて長寿なんですよね?」


 フィンが俺を値踏みするような目つきで見つめてくるので、失言しないよう取り繕っておいた。


 試しに索敵スキルでエルフを検索するとフィンの言葉に反して一人だけ発見できた。名前はオーロラで若い女性だ。ずいぶん大きな屋敷に住んでいるようだ。ただし、この子はただのエルフではなく、エルフ・人間となっており、つまりハーフエルフなのだ。

 このことはいずれ調べることにして、この場では黙っておく。


「エルフ族は長寿で千年ほど生きると言われています。長寿なのは間違いないようですが、千年というのが本当かは分かりません」


 フィンはエルフが長寿らしいことを認めたが、短命の人間にはわからないこともあるようだ。

 エルフ以外だと税金のことで気になったことがあったので聞いてみた。


「そういえば、西の城門近くで見ていた時に、入ってきた人はお金を払っていたり、払ってなかったりしてたのですが、出る人で払っている人は居なかった気がします。

 王都に入るときにお金を払う必要があるかないかは、どういう条件で変わるのでしょうか?」


「コジロー様の言う通り、出るときにはお金はかかりません。ただ、この街の人間でいずれ戻ってくる予定であれば、門のところで鑑札(かんさつ)を受け取っておくのがいいです。


 王都の住民であれば、城門の外から帰ってきたときに、城門で鑑札を返せば、無料となります。ただ、顔見知りの場合だったりする場合は顔パスなこともあります。あと王都の周辺の集落に住んで主に農業に従事してる者も王都の住民と同じで、鑑札を出してもらえば無料です。


 仕事などの関係で長期になる場合は、ギルド経由での鑑札を貰っておきます。王都で出してもらった鑑札を城門から中に入るときに見せれば、無料で王都に入ることができます。


 冒険者ギルドのように個人で加入しギルド証を持っている場合は、これを門番に見せればいいです。ギルド証にはそのときの所属している町の名前が記載されますから。


 長期の依頼の場合はギルド経由で鑑札を貰っておくのがいいかもしれません。というのも、所属を変えながら依頼をこなすことがあるかもしれないからです。ギルド証か鑑札のいずれにしろ、確認の手間などがかなり簡略化されるので、外壁の外で待たされてストレスを感じなくて済みます。


 外から王都に入る場合ですが、人の場合は千クローネを払って鑑札を受け取ります。帰るときに鑑札を返せばお金は帰ってきます。荷馬車や乗合馬車などの馬車自体にはお金がかかりません」


 町に出入りするときの事を教えてくれたケネスは、そこで一旦区切ってくれ、次に貨幣の話してくれた。


「貨幣についてご説明申しあげます。

 ヴァルキュリア歴元年より前は、いろいろな貨幣が発行されていたのですが、ヴァルキュリア王国が大陸を統一した直後、貨幣も統一されました。


 小さい方から順番に、一クローネ銭貨、十クローネ銅貨、百クローネ銀貨、千クローネ小金貨、一万クローネ金貨、十万クローネ白金貨があります。ヨツンヘイム王国とニヴルヘイム王国と龍宮王朝については、ヴァルキュリア貨幣と同じ比率の金属を利用して貨幣を鋳造していて、貿易のときにも1:1で交換されます。

 ヨツンヘイムで使用されるクローネは正確にはヨツンヘイム・クローネになります。例えば同じ百クローネ銀貨どうしであれば、貨幣の意匠は違いますが、持った感じの大きさや重さは基本的に同じです。


 国内で普通に流通しているのはヨツンヘイム・クローネですが、国内で他国のクローネを使うことは禁じられています。貿易で認められている場合だけ使用できますが、一般に他国の貨幣は流通していないので見る機会も非常に少ないかと思います。

 アルフヘイム王国については独自の貨幣を用いていると思われますが、うちの商社は龍宮王朝経由で貿易しているため、詳細については知りません。


 実際の物の価格について、いくつかお教えします。

 カフェでコーヒーや紅茶を飲みたければ二~五クローネ、昼食は五~十クローネ、宿屋は二十~百クローネ、月極のアパートなら五百~千五百クローネ、武器は中古で良ければ千クローネから、ミスリルの片手剣なら十万クローネは下らないでしょう」


 大雑把な金銭感覚は分かった。スティーブからもらった巾着にはいくら入ってるんだろうかと、ちょっと気になった。


「ケネスさん、ありがとうございます。これで、この街で生きていけそうな気がします」


 長々と教えてくれたケネスさんにお礼を言った。


「そんなわけねーだろ」


「へっ?」


 エドワードに突っ込まれ、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。


「おめえは冒険者になるんだから、これから俺の講義を聞いて冒険者ギルドに加入しに行くんだよ」


「あははは、それはそれで有難い。エドワード先生お願いします」


「おう、まかせとけ」


 エドワードから今後のスケジュールを言い渡され、ある意味感謝する。


「冒険者ギルドに登録できるのは16からだから、コジローは問題ない。16から大人だからな」


 エドワードは何となく下品な笑みを浮かべる。


「冒険者ギルドの場所は南東の環状交差点のそばにある。後で連れてってやるから、場所はそのとき覚えればいい。


 登録に千クローネかかるが、ここは俺が出してやる。フィンのお嬢さんを助けてくれたお礼とでも思ってくれ。冒険者には上からSABCDEFの七ランクに分かれているが、最初になれるのはFランク冒険者だ。


 飛び級の実力試験を受けてもいいんだが、ギルドに試験管が務まる人間が居ないと受けることはできない。飛び級ってのは、通常がFランクから始まる冒険者ランクを、最高でCランクから始めることができる。

 予約をして別の日にいくこともできるがどうする?」


 エドワードが聞いてきたので答える。


「予約した場合、何日くらい待つことになりますか?」


「まあ、長くても5日はかからないと思うが、何なら俺がやってやろうか?」


「エドがやってくれるなら安心できる。できれば試験管はエドでお願いするよ」


 エドワードにお願いしたところで、エドワードが立ち上がって言った。


「細かい話は冒険者ギルドの人間が説明してくれるから、俺たちは早速行こう」


「エドの提案は有難いけど、フィンの娘さんが誘拐されたばかりなのに、エドがここを離れるわけにはいかないだろ?」


「それなら大丈夫だ。コジローがトニーとディクスンを倒してくれたんだろ? あの二人がフレッシュ青果店の用心棒の中では要注意人物なんだ。今日の事件が発覚した後、つまり明日以降の方が忙しくなるから寧ろ今行った方が都合がいい。それに何かあってもケネスがいるから大丈夫だ。こんな事を心配するなんて本当にお前は16っぽくないな」


 エドワードは残った方がよさそうな気がするけど、俺自身も不安な事が多いから有難い。根拠はないがフィンの家族は大丈夫に違ないないと思い込むことにした。


 エドワードにつられ立ち上がると、フィンとケネスも立ち上がった。


「それではエドワード、コジローさんをたのむ」


「おう」


 この後のことは、エドワードについていけばいいみたいだ。


「コジローさん、冒険者ギルドでの手続きが終わったら、またうちに戻ってきてください。先ほどもお願いしましたが、しばらくはうちを拠点に活動してください」


「有難く使わせていただきます」


 最後までフィンは俺に優しく接してくれた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


続きが読みたいと思っていただけた方は、ブックマークして頂けると励みになります。


下の☆☆☆☆☆へ、クリックして作品を評価、応援していただけると有難いです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ