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17話 VSアサシン

 しばらくしてセバスチャンが呼びに来てくれ商談用の部屋へ行く。

 フィン、エドワード、ケネスが先に席についていた。


 俺が席に着くとケネスがコーヒーをいれてくれ砂糖が入った瓶と一緒に俺の前に置いてくれた。俺はいつも通り砂糖をたっぷり入れる。


「おう、そいつがコジローの新しい仲間か」


「ええ、モモフクって名前の妖精です」


「妖精?」


「エドでも妖精は見たことが無いの?」


「あたりめえだよ、妖精ってのはおとぎ話の世界の存在で、仮に居たとしても人間の前に姿を現すような生き物じゃないと思うぞ。ケネス、その白いのを鑑定してくれ」


 ケネスが首肯する。


「確かに種族が妖精になってます。性別や年齢は分からないです」


「コジローさん、エルフなら妖精と会話ができるというような話は聞いたことがありますが、人間に伝わる妖精の話はおとぎ話レベルのものです。もちろん我々も妖精を見たのは初めてです。何か特殊な能力とかがあるんでしょうか?」


 フィンはやはり博識だ。


「幻術が使えます。自分の好物の果物が成っている場所を巣にしていたようで、そこに誰も近づかないように幻術で近寄ってきた人や動物を幻術で脅していたようです」


「食べ物を食べるのか。ちょっとイメージと違うな。妖精って言えば、実体があるような無いような、そんな存在かと思ってたよ」


 エドワードが妖精について思っていることを教えてくれた。


「ところで今日はどのような話でしょうか?」


 フィンが水を向けてくれる。


「今日、花街(かがい)に行ったんだけど」


「おう、どうだった?」


 俺の言葉にエドワードがちゃちゃを入れる。


「店に入ったわけじゃないから」


「そっか、今度行くときは俺がいい店紹介するぜ」


 エドワードは馴染みの店があるようだ。


「クリスティンが(さら)われた日に、パウエル卿の顔を見てないような話しをしましたが、実は見ていたんです。というか、鑑定を使いこなしていなくてパウエル卿かどうか確認できていなかっただけなんです。

 マーキングしていた人物を鑑定したところ、パウエル卿とヨーナスという男がパウエル卿の屋敷に入っていくのを見ていました。パウエル卿は恰幅の良い男性で、ヨーナスが小柄で細身の上に左目に縦10cmくらいの傷がある男でした」


「へぇ、そのヨーナスってのは、ずいぶん目立つ風体だな」


「そうなんだよ、エド。

 それで今夜、そのヨーナスが花街の蔦屋(つたや)に裏口から入ってくのを見たんです。店の裏にはジークヴァルトというレベル36の立派な騎士が居て、ヨーナスとは顔見知りのようでした」


「コジローさんの言うジークヴァルトという騎士なら、確か平民出の苦労人でありながらオスカー第一王子の近習を務めている男だったと思います」


「フィンさんの言う、そのジークヴァルトに間違いなさそうですね。というのは、ヨーナスは二階にあるオスカー第一王子が居た部屋に入り、あとからラ・ヴォワザンが合流しました」


「なんだってぇ!」


 エドワードが大きな声を上げる。


「どうしたんだ、エドワード」


 フィンの疑問に、エドワードが答える。


「ラ・ヴォワザンてのは有名な占い師。というのは表の顔で、裏では麻薬や媚薬や毒など薬の調合から、果ては呪いまで請け負うらしい、あやしい婆ですぜ」


 エドワードが渋そうな顔をする。


「それで隠れて話を聞いたところ、そのラ・ヴォワザンが媚薬を調合して渡しているようでした。そして、王子がお金を二人に渡すとヨーナスは来た時と同じ裏口から、ラ・ヴァワザンは玄関から出て行ったようです。王子がタカオ太夫を呼んだ直後に桔梗屋(ききょうや)と呼ばれる男がオスカー王子のところまでやってきて、ラ・ヴァワザンの薬など飲まないように進言したのですが、王子は桔梗屋に出て行くようにきつく言い渡しました。そのあと俺が見つかってしまって逃げかえってきたのだけど、その後でヨーナスと桔梗屋が蔦屋のそばで会っていたのまで確認しましたが、何を話していたかは分かりません」


 フィンが少し考え込む。


「わかりました。コジローさん、オスカー第一王子の体調不良にラ・ヴァワザンが関わっている可能性が考えられるということですね」


「そうです。それにラ・ヴァワザンは二つのレリックを持っていたんです。一つはステータス偽装ができるスキルレベル12のレリック、もう一つはホープダイヤモンド、スキルレベル12のレリックで呪うことができます」


「ラ・ヴァワザンならレリックを持っていてもおかしくはないだろうが、それでも手にれるのは簡単なことじゃない。だが、これでほぼ確定だな、オスカー王子の件はラ・ヴァワザンが持っているレリックが原因で決まりだろ」


 エドワードがオスカー王子の体調不良の原因を断定する。


「話はこれで終わりです」


「コジローさん、ありがとうございます。これで、オスカー第一王子の体調不良の原因が分かるかもしれません。この後はケネスの方からも報告があるので聞いてください」


「もうお二人にはお話しましたが、コジロー様にもお話ししておきます。フレッシュ青果店ですが、ウィルが正式に後を継ぎました。何かしら仕掛けてくる可能性がございますので、くれぐれもご注意ください。

 本日も午後五時ごろ、北の側防塔(そくぼうとう)から見張りをしていた者からSS級魔獣ファフニールが飛行しているのが確認されました。外壁から10Kmくらい先を東から西に飛んでいたということで昨日と同じルートだと思われます

 あと王都で最近、強い麻薬が流行ってきてるようです。以前からあったバニラの甘い香りがするドォーズ、即効性の麻薬ですが、これとは違いかなり強い独特の刺激臭がするフラッシュと呼ばれる超即効性がある麻薬が流行ってきてるそうです。幻術などの精神に作用するスキルや魔法の効果が上がるとも言われているので、部屋の中でこのような匂いに気が付いたときは気を付けてください」


「わかった。ありがとう、ケネス」


「それではコジローさん、今日はここまでとしておきましょう」


 今夜の話はここで終わり俺は商談用の部屋から出たところで、待っていたセバスチャンに声をかけられた。


「コジロー様、お疲れさまでした」


「お風呂に入りたいけど何時から入れますか?」


「ただいまのお時間でしたら、すぐに入れます」


「じゃ、このままお風呂に入るよ」


「ピューピュー」


 モモフクも喜んでくれている。俺はモモフクと一緒に風呂場に向かった。


 脱衣場でセバスチャンに剣を渡す。その後は、もう慣れたもんだが、脱衣場でセバスチャンの前で真っ裸になる。

 モモフクと浴室に入り今日の疲れを癒す。お風呂に入ったときのモモフクは、いつものモフモフがなくなり別生物のような見た目になるのも可愛い。


 風呂から上がると、モモフクをセバスチャンに渡しバスタオルで拭いてもらう。モモフクはこの世の極楽を味わうかのような満足げな表情をしている。

 俺は自分で体を拭き用意された服に着替える。


 自室にもどりセバスチャンから剣を受け取る。


「セバスチャン、今日もありがとう、おやすみなさい」


「コジロー様、お休みなさいませ」


 風呂上りで一息ついていると、なんとなく胸騒ぎがしてくる。念のため索敵スキルを発動しフィン邸の周りを調べる。隠密スキルを発動しているやつが四人。どうも、屋敷の周りを囲まれているようだ。窓を開けて確認したいところだが、それは抑える。


 索敵した相手を確認するとかなりの高レベルの四人組で、四方に散って屋敷を囲んでいる形だ。タイリンレベル58、アオバレベル53、ワカバレベル54、ハツメレベル73って、みんなレベルが高すぎじゃないのか? 素早く四人ともマーキングする。


 ポケットに残っていたドライフルーツのバナナを取り出しモモフクに渡す。


「ピューピュー」


 モモフクは嬉しそうな声を上げる。バナナを頬張っている体勢のまま優しく両手を使い机の上に置く。モモフクの頭を左手で何度かなでてやり、右手では剣を抜く。


 まずは索敵を持っているアオバを狙う。全員が必殺のスキルや忍術を持っているため、できることなら一撃で倒したいところだ。それからできるだけ屋敷に入られないようにする。


 モモフクから少し離れアオバのそばにテレポートする。右一文字斬(みぎいちもんじぎ)り……右から左へ剣を横薙(よこな)ぎにし首を刎ねる。アオバは斬られた事すら認識できなかったはずだ。


 次はテレポートが使えるワカバのそばへテレポートする。異変に気付いたのかワカバは短剣を抜いていた。アオバと同じく右一文字斬りで首を狙うが、短剣で滑らすように太刀筋をそらされてしまう。ワカバは右手の短剣で俺の剣をそらせたあと、短剣の剣先を俺に向け鋭く突いてくる。ワカバの突いてきた短剣を持っている手を左ひじで突き上げ、心臓を一突きする。


 残りのタイリンとハツメはすでに移動し始めている。今の俺の役目は屋敷内で彼らを行動させないことだ。


 ハツメに屋敷に入り込まれたため、ハツメのそばにテレポートし胸に一発右ストレートを軽く押すようにあてた。ハツメは屋敷の壁を突き破り庭の方へ吹っ飛ぶ。その間にタイリンにも屋敷に入り込まれる。今度はタイリンのそばにテレポートする。屋敷内の人間も異変に気が付きゴソゴソ動き始める音が聞こえた。

 タイリンは左手をドアノブにかけていたので、左側から左手を切り落とす。痛がるそぶりもなく、右手の短剣を突いてきたのでその短剣を躱しながら左一文字斬りで首を刎ねる。


 庭に吹っ飛んだハツメの所へ再度テレポートする。これでハツメにスキを突かれない限りフィン家の人を危険な目に合わせ無くて済む。


 最後に残ったハツメが今夜来た刺客の中で一覧レベルが高い。ハツメはスキルを切り替えながら攻撃を仕掛けてくる。こちらとしては最後の一人にしたので、なんとか生きて捕らえたいところだ。

 庭にエドワードも出てきたが、手で参戦しないよう指示する。


 こちらが振りかぶったところに、ハツメが踏み込んでくる。剣を振り下ろすと、内側に潜り込んできて短剣を突きだす。突き出された短剣をスウェーバックで回避し、次の攻撃に備え剣の握りを変えたところで、ハツメに短剣を突きたてられた。単に突き立てただけで全く威力は無かったはずだが、HPバーがほぼなくなり目の前が真っ赤になる。


「タイリン様!」


 ハツメは最後に大声をあげ倒れた。ハツメの必殺の忍術を浴びHPが1になってしまった。

 すぐに連続ヒーリングしてHPを回復する。


 ハツメの必殺の忍術はサッバーフの秘術という名で、相手に命中させると低確率でHPを1にすることができる忍術である。特別な条件として、クリティカルヒット時は確率が100%に上がる。ただし、この忍術を発動した場合はハツメ自身が24時間動けなくなるという自滅覚悟が必要な強力な忍術のため、最後の一押しに仲間の一撃が必要となる。だが、ハツメが期待した仲間はもうこの世にはいない。

 このサッバーフの秘術というハツメの必殺技も俺のラーニングでは習得できない忍術だった。

 ハツメはタイリンがまだ生きていると思い込んでいたのだろうが、先に倒しておいてよかった。


 落ち着いたところでハツメに従属首輪をはめる。支配指輪をはめ、従属首輪に対し従属条件の設定をする。


 エドワードとセバスチャンが出てくる。


「レベル63からレベル73の四人が屋敷を取り囲んでいたので俺が倒した。

 四人のうち二人が屋敷の中に侵入したため、一人は屋敷の中で倒し、最後の一人は何とか生きて確保した。

 こいつだけ生かして従属首輪をはめておいたが、こいつがオリジナルのスキルを発動し、そのペナルティとして本人が24時間動けなくなるようなんで、24時間は起きないと思う。どこかの部屋に寝かせておいてくれ。

 あと死体が屋敷に一体、外に二体あるんで、セバスチャン片付けるのを手伝ってほしい」


 俺はこの状況を説明した。


「コジロー、こいつがレベル73って本当なのか?」


「本当だよエド。その生かしておいたやつがレベル73だよ。ケネスが来たら、確認してもらうといい。話はあとあと。セバスチャン、頼む」


「畏まりました。ゾフィー、ついてきなさい。コジロー様、外の死体から片付けましょう」


 長兄か? と思っていたら、屋敷から出てきたのは可愛いらしい女の子だった。


 屋敷の門を出てアオバの死体があるところへ行く。

 既に真夜中といっていい時間のため、この辺りは人が通ってない。

 魔法鞄を取り出しアオバの二つに分かれた死体を魔法鞄に入れる。


 ゾフィーがライトの魔法を唱え、周辺を明るくする。

 これはラーニングするチャンスと思い常時発動のラーニングの発動を止め、次に魔法を唱えるタイミングを待つ。

 その後はウォーター、ドライと連続で魔法を唱え、辺りを綺麗にする。


「セバスチャン、ゾフィー、もう一つ死体があるのでついてきて」


 ワカバの死体があるところに行き、ワカバの死体を魔法鞄に入れる。

 ゾフィーは先ほどと同様、ライトの魔法で周辺を明るくし。

 ウォーター、ドライで辺りを元の状態に戻す。


「屋敷の外はこれでお終い。あと一体が屋敷に残ってるんで戻ろう」


 タイリンを倒した廊下まで戻り、タイリンの三つに分かれた死体を魔法鞄に入れる。

 するとゾフィーは別のメイドに手伝ってもらい、濡れ雑巾などを使い血を拭き取る。

 ここでウォーターを使わなかったのは、部屋で使うにはコントロールが難しいということかもしれない。

 ゾフィーのお陰でライト、ウォーター、ドライと生活魔法を習得できた。


「コジロー様、後の事は私どもにお任せください。商談用の部屋で主人とエドワード様がお待ちしておりますので、そちらへ向かってください」


 セバスチャンはどこでその情報を手に入れたのだろうか? 執事長の実力は侮れない。

 俺は一旦自室に戻ってモモフクを連れ出し、商談用の部屋に向かう。


 商談用の部屋にはフィンとエドワードが先に居た。エドワードはここに部屋を持っているが、ケネスは通常はここには泊まらないから自宅に帰ったのだろう。

 ただ、今まで無かったものがそこには置かれていた。

 どこから運んできたのか分からないベッドとそこに横たわるハツメだ。


「コジロー、早く座れ」


「コジローさん、エドワードから四人組だったことは聞きましたが、今夜の事を教えてもらっていいですか」


「ええ、もちろん」


 ハツメは大人しく寝ている。


「妙な気配を感じ、索敵で隠密を発動しているやつを見つけたのが始まりで、確認すると四人の高レベルの人間に四方を囲まれてるって気づきました。レベルの低い方から63、64、68、73の四人です」


「そいつは高いな。そこのベッドの子がレベル73なんだよな? お前と歳は変わらないよな」


「そうだよエド。その子がレベル73で年齢は15歳だ」


「15歳でレベル73とはどんな人生を歩んできたんだよ」


「エドワード、まずはコジローさんの話を聞こう」


 エドワードはフィンに首肯し俺を見た。


「四人のうち、なんとか二人を屋敷の外で倒し、残りの二人が屋敷に入り込んだんで一人を屋敷内で倒し、最後はエドが見ていた通り庭でこの子を捕まえました。もちろん、こいつらが何者で何を目的にしていたのかは知りません」


「コジロー、話は分かった。残りの三人の死体は俺に渡してくれ。何か身分が分かるような……プロだろうから、なかなか見つからないだろうが、探ってみよう。どちらのにしろ、その子が起きたら従属首輪があるから事情はわかるだろう。それから面目ない話だが、何が目的だったかは不明だが、賊の侵入を防いでくれてありがとう」


 魔法鞄から死体を取り出し、エドワードに渡す。


「私からもお礼を言わせてください。コジローさん、私の家族や屋敷の者たちを助けてくれて、ありがとう」


「いえ、俺のようなやつを置いて頂いているだけでも有難いのに、お礼なんて不要です」


「コジロー、一応今夜は俺が警戒しておくから、お前はゆっくり休んでくれ。今日は十分働いてくれたよ。お屋形様、明日から屋敷の警備を厳重にしましょう。索敵できる人間などを増やして、昼間も夜間も警戒するようにしましょう」


 結構な返り血を浴びてしまったので、寝る前にもう一回風呂に入らないと。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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