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14話 モモフクに!!! 俺はなる!!!!

 フィンの屋敷につくとセバスチャンが出迎えてくれた。


「コジロー様、お帰りなさいませ。そちらのお嬢様はいったいどういったご関係の方でしょうか?」


「この子は今日一緒にパーティを組んでギルドの依頼をこなしてたんだ」


「初めましてローラです。今日はコジロー様にいろいろ教えていただきました」


 あれっ、ローラってそういうキャラだったかな?


「お風呂に入りたいのだけど、すぐに入れるかな?」


「はい、ご用意できております」


「彼女も入れたいのだけど、順番かな? あと彼女の方も着替えを用意してもらえないかな? 教会に住んでるらしいんだけど、こんなに汚れた格好で帰すわけにはいかないから」


「わかりました、お風呂は二つあり、男湯と女湯にわかれておりますので同じ時間に入っていただけます。お世話をするメイドをお付けしますので、その子に着替えを用意させましょう」


「セバスチャン、ありがとう。彼女はお風呂でゆっくりしたいだろうから、メイドさんには脱衣場の外で待つように言ってあげて」


「畏まりました。それではお二人とも中へお入りください。コジロー様、その肩に乗っている動物はどうされますか?」


「できれば俺がそのままお風呂に入れたいのだけど、一緒に入れてもいいかな? それから一緒に暮らすから、俺がここで食事をするきは申し訳ないけど、コイツ……モモフクって名前なんだけど、カットした果物とかを出してもらえると有難いんだけど」


「お風呂はモモフク様もご一緒にお入りください。コジロー様が食事をされるときはモモフク様の分もご用意いたします。本日の昼食はどうなされますか?」


「今日はこれから冒険者ギルドに行く予定だから、お昼は外でいただいくよ。


 それと、従属首輪と支配指輪って知ってる?」


「主人の店で扱っておりますが、必要でしたらご用意しておきましょうか?」


「10個くらい用意してもらっても良いかな?」


「畏まりました、お風呂から出た頃にはご用意できると思います。それでよろしいでしょうか?」


「そんなに早いんだ。ありがとう、それで問題ないよ」


「それではただいまメイドを呼んでまいりますので、少々お待ちください」


 少しするとセバスチャンがメイドを連れてもどってきた。俺はセバスチャンとモモフクと一緒に男湯の方へ向かった。


 前回と同じくセバスチャンが脱衣場に入ってきて浴室の扉の横で待つ。

 その横を通り浴室へ入る。

 モモフクの毛づくろいようにブラシを買ってきた方がいいな。今日のところは手櫛(てぐし)でモモフクを毛づくろいをしてあげる。

 毛づくろいが一通り終わってから桶にぬるま湯を溜め、その中にモモフクを入れてあげる。


「ピューピュー」


 モモフクは嬉しそうに雄たけびをあげる。


 抜けた毛や毛についた細かい汚れをお湯で落としていき、顔は鼻の穴や耳の穴に水が入らないよう、指につけたお湯で撫でるように洗っていく。その後は浴室にある石鹸を泡立て、モモフクのお尻から首筋までしっかり泡まみれで洗う。顔はやはり鼻の穴や耳の穴、目や口にシャボンが入らないよう注意する。吐水口からお湯をチョロチョロと桶に落としながら、モモフクについたシャボンを丁寧に落としていき、体が終わったところで顔の部分は丁寧に指にお湯を付けシャボンを洗い流す。

 モフモフだったモモフクが別の生物になったようになっているが乾けばもとに戻るだろうから気にしない。モモフクを抱きかかえ桶のお湯を入れ替えて、また桶に入れてあげる。


「ピューピュー」


 本当に嬉しいかどうかは分からないが、喜んでいるように見えるからこれでOK。


 俺の方はチャチャっと洗った後、モモフクを桶ごと浴槽に連れて行き一緒に浴槽に入る。モモフクは浴槽に浮いた桶でご満悦のようである。満足したのか桶から俺の腕を伝って俺の頭の上に移動する。なぜかそこで仁王立ち。

 しっかり温まったところでモモフクを桶に戻して浴槽から上がる。

 俺はシャワーを浴びタオルで水滴を拭いた後、モモフクを桶から出して浴室をあとにする。


 脱衣場でセバスチャンがバスタオルを二枚用意してくれていてモモフクを俺から受け取り、一枚を俺に渡し、もう一枚でモモフクをくるむようにして丁寧に拭き始めた。モモフクはセバスチャンに拭かれ始めると、とても気持ちが良かったのか尻尾をやらた振り始めた。


「ピューピュー」


 俺以上にセバスチャンに懐くので、俺は嫉妬の炎を燃やす。


 モモフクをセバスチャンから受け取り脱衣場を出たところでセバスチャンに、ローラが出てきたら俺の部屋に案内するよう頼み、自分にあてがわれた部屋に行きモフリストとして日課をこなす。


 部屋の外が騒がしいので扉を開けて覗く。


「きゃー、コジローさんなんで扉を開けるの?」


 ローラの悲鳴が聞こえた。


「なにかあった?」


「いえ、ローラ様をコジロー様の部屋に案内したところです。ローラ様、こちらにお入りください」


 ローラ付きのメイドがローラを案内したところだった。


「案内、ありがとう。それじゃ、ローラは入って」


 ローラの異変に気付いた俺は平静を装い、今まで座っていた椅子に座り、正面の椅子をローラに勧める。


 ローラは扉を閉めた後、恥ずかしそうに勧められた椅子についた。ローラは胸開きタートルネックを着ていて、両手はその胸開きの部分に置かれている。ローラの主張しすぎる胸が強調され、俺の視線が胸の谷間という超強力なブラックホールに吸い寄せられると、俺とブラックホールとの永遠とも思える死闘が始まる。


 その均衡打ち破ったのはモモフクであった。


「ピューピュー」


 元気に雄たけびを上げるとローラに向かって飛びつく。ローラは驚いて胸を押さえていた両手の平をモモフクのために、胸の前で大きく広げ飛びついてきたモモフクを受けとめた。


 モモフクはローラの手のひらの中で何度もでんぐり返しを繰り返し、ローラにじゃれているようだった。その後何を思ったかローラの胸の谷間に潜り込んでいく。


「モモちゃん、そんなとこはいっちゃだめよ。んっ!」


 ローラが今まさにエロ……エルフの真価を発揮した。


 潜り込んでいたモモフクはローラの胸の谷間から顔を出し、胸開きの下の部分に手を置き安定すると俺の方を見た。その瞳の奥に一瞬キラリと輝いた優越感を俺は見逃さなかった。モモフクに羨望と嫉妬の眼差しを向けつつ、『モモフクに!!! 俺はなる!!!!』と大声で宣言したくなった。


「それじゃローラ、冒険者ギルドに行こうか」


「はい」


 俺たちが立ち上がって部屋を出ようとすると、モモフクはローラの胸の谷間から出てきて俺の肩の上に乗った。


 玄関まで行くとセバスチャンが、従属首輪と支配指輪を10セット持ってきてくれていた。


「コジロー様の魔法鞄にお入れになりますか?」


「ありがとう。いくらになる?」


「主人からコジロー様には無制限で支援するように言われておりますので、お気になさらずに」


「わかりました、フィンにお礼を言っていたと伝えてください」


「畏まりました。必ずお伝えいたします」


 セバスチャンにフィンへの言付けをお願いし、首輪と指輪を魔法鞄にしまっていく。


 その後セバスチャンに見送られてフィンの屋敷を出る。


「ローラ様、洗濯した法衣が乾きましたらは教会の方にお届けに上がりますので、服のことはご安心ください」


「素敵なお洋服をお貸しいただきありがとうございます。

 私もお借りした服は洗ってお返しに来ますので、少しの間お借りします」


「お気に入られたのでしたら差し上げますので、好きにお使いください」


「ありがとうございます。でも頂くわけには参りませんので、必ずお返しに上がります」


 ローラがセバスチャンに丁寧にお辞儀をした。


 庭ではクリスティンとエレノアがボール遊びをしているようだ。管理人さんってわけじゃないよな。


 俺は魔法鞄から剣を取り出すと、ローラもアイテムボックスから杖を取り出す。


 なんとなく背中に突き刺さる視線を感じるが……きっと気のせいだろう。


 冒険者ギルドにつくと掲示板から依頼書を剥がし受付に居たステラのところに持っていき提出する。


「ローラと二人で達成しました」


 俺がギルド証をステラに渡したのを見て、ローラもギルド証をステラに渡す。


「地下一階の方へ行って、討伐魔獣の受取証をもらってきてください」


 俺たちはステラに言われた通り、地下一階に降りて行き魔獣の解体場所へ向かう。


「討伐した魔獣の納品か?」


 前と同じセリフかな? 毎日同じことを何度も聞いているんだろな。


「マミーを三体です」


 俺がそう言うと、ローラがアイテムボックスからマミーの死体を三体分取り出す。


「魔導石は二つ割れているのか、まあ高くは買い取れないがそこは勘弁してくれ」


 ローラが受取証を受け取ると、俺たちは一階に戻っていく。


 ローラが受取証をステラに渡すと、ステラが二人分のギルド証を機械にかける。


「ローラさん今回の依頼は完了しました。報酬は千クローネになります。マミーの売却益については売却後、売却価格の70%をローラさんに渡しますのでギルド証ををもって受付に来てください」


 ギルド証をそれぞれ受け取り、ローラが千クローネも受け取る。


「コジローさん、報酬の割合はどうしますか?」


「決めてなかったけど、できれば半分ずつでお願いしたいんだけど」


「もちろん、半分ずつなら全く問題ありません」


 するとローラは財布を取り出し千クローネをしまい、百クローネ銀貨を五枚取り出し俺の方に差し出した。


「サンキュー」


 お礼を言ってお金を受け取り財布にしまった。


「じゃ、これからどこかで食事してローラの教会に行こう。ローラの教会はどこにあるの?」


「西大通りの内側に隣接しています。西側通りの真ん中あたりです」


「すまん、俺王都の出身じゃなくて、西大通りが分からないんだけど?」


「すぐそこに南東の環状交差点がありますよね? あれが北東、北西、南西を合わせて全部で四つあることは知ってますか?」


「それは知ってる。環状交差点を結ぶ道路があることも知ってるし、それぞれ二方向の城門への道があるのも知ってる」


「それなら話は早いです。環状交差点どうしを結ぶ道路をそれぞれ北大通り、東大通り、南大通り、西大通りと呼びます。そのうちの西大通りの内側沿いに極光教の大聖堂があります」


「なるほど、おおよその場所は分かった。それじゃ、南大通りを通って教会へ向かおう」


 その場所は初めてローラ、索敵で見つけた場所に近かった。あのあたりで暮らしているのか。


 二人で冒険者ギルドをあとにした。


「ピューピュー」


 二人プラス一匹で冒険者ギルドをあとにした。


「ところで、ローラは食べれない物とかあるの? 好き嫌いとか、宗教的にとか」


「好き嫌いはありませんし、宗教的に食べれないものもありません。前に言った通り、正確には信徒ではないので宗教的ってこと自体が存在しませんけど、コジローさんは極光教の信徒ではないのですか?」


「そうなんだ、洗礼も受けてない。こいつも洗礼受けてないから、王都で極光教の信徒でない三人組は珍しいだろうね」


「ピューピュー」


 モモフクも仲間に入れてもらえて嬉しそうだ。


「このお店に入ってみよう」


 おしゃれな感じでローラが入ってもおかしくない店に入る。


「コジローさんはこのお店、何度目ですか?」


「初めてだよ」


「そうですか、てっきり知ってるお店かと思いました」


「お店の看板に方位磁針の紋章があしらわれてたから、さっきシャワーを借りた俺がお世話になってる屋敷の御主人が経営するお店だと思うんだ」


「そういう理由でしたか」


 お店に入ると受付の人が来る。


「お二人でご利用ですか?」


「俺たち二人なんだけど、あと一匹、コイツも一緒に食事させたいんだけど、入れて大丈夫かな?」


「動物を入れることはできませんので、外に繋いでおくか籠にいれてくれれば、こちらでお預かりいたしますが?」


「それなら結構です、お時間取らせて済みませんでした」


「あっ、少しお待ちください。離れの個室との間にテーブルと椅子を置いてお庭でならお食事できますが、ご用意いたしましょうか?」


「そうですか、食事ができるなら庭で問題ありません。ローラはそれでも大丈夫か?」


「もちろん大丈夫です」


「ピューピュー」


 モモフクもOKらしい。


「それではご案内しますので、私についてきてください。建物には入らず裏にある門からお庭に直接入れますので、どうぞこちらへ」


 受付の人はいったんお店の外に出て、店をぐるりと回って裏門から庭の方へ行く。


 すぐにテーブルと椅子が用意されてメニューを渡される。モモフクにはフレッシュな果物を頼むとして、俺は何を注文しようかな。


 俺はニンニクと香草のステーキに、野菜たっぷりのミネストローネ。それから、チーズベーコンバケットを頼んだ。


 ローラはレタスとチーズとスモークサーモンをカンパーニュで挟んだサンドイッチに、セロリとキャベツとトマトのサラダを注文した。


 モモフクのために、いろいろな果物が乗っているタルトを頼んだ。


「ローラはときどき外食とかするの?」


「孤児院で育てられたから、外食なんてしたことありません」


「そっか、じゃローラの初外食に付き合えて光栄なことだね」


「いつか教会を出たら、普通に外で食事したりするようになるのかな?」


「冒険者になったから、いつでも好きなときに外食できると思うけど」


「でも、孤児院は善意の寄付で運営されているから、私もギルドの依頼をこなして恩返ししないと」


「そういうもんなのか?」


「そういうものです」


「ピューピュー」


 果物がたくさん乗ったタルトが運ばれてきたので、モモフクが興奮して尻尾をブンブン振り回している。


 上に乗ってる果物は食べるとしても、タルト生地とかは食べれるんだろうか? ちょっと疑問に思う。モモフクをテーブルの上に乗せて、お皿をモモフクのそばまで持っていく。モモフクは乗ってる苺や葡萄を食べる。葡萄は完全に皮が剥かれているので、そのまま食べれる。いや、野生の動物なら葡萄は皮ごと食べるのかもしれないな。


 モモフクとじゃれているうちに、俺とローラの前にも料理が運ばれてきていた。


「さあ、いただきましょう」


「いただきます」


 昼間からガッツリなステーキを食べれるのは人生の幸福を感じるし、ミネストローネは期待を裏切らないうまさだ。バケットには薄切りチーズに塩の効いたベーコンが乗っていて、これが激うま。

 ローラを見ると、こちらも美味しそうに食べている。


 この店は臨機応変な接客といい、料理のクオリティといい、間違いなく当たりだな。


 66クローネを払ってお店をでる。


「ごちそうさまでした。コジローさんって普段は気が利きませんが、意外ですがこういう所では男の人っぽく振る舞えるんですね」


 なんか、驕ったのに貶されるとは……ローラと接するときは普段以上に気を使って、俺に対する考えを改めさせる必要があるなと、ある種の決意をする。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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