第14章 秘密基地
逃げ出した辰馬たちの行く先は……。
なんとか病院から逃げ出した辰馬、背後を見てみても追手の姿は見えない。
「これから、どこへ行くべきか……」
玲はココネに任しておけば無事だと確信している。無事ならばきっとあの場所に行くはず、あの思い出の場所に。
「よしっ」
辰馬はその場所へ向かう。
町外れに建つ一軒家。夜逃げなのか、ある日、突然、住人が居なくなり、解体するにも金がかかるため、そのまま放置。
こんな建物は子供たちにとっては格好の遊び場所。小学生の頃、辰馬と玲も秘密基地として使っていた。
「辰馬」
「辰馬くん」
一軒家に入ると、やはりココネと玲はいた。
2人の無事な姿を見た辰馬は、ホッとした息を吐く。
「辰馬くん、この人は誰なの? あの人たちは? どうして僕が狙わたの?」
気になることばかりだろう、何せ、命を狙われたのだから。
「そうだな……」
話したところでにわかに信じてもらえるような話ではないが、話さないと現状の説明が出来ない。
そこで話すことにした、アニマル世界へ行き、勇者になったことを……。
まるで原稿に書いたような話。ココネが鬘を外し、ねこみみを見せる。偽物じゃないことを示すため、耳をぴくぴく動かす。
「そんなことがあったんだね」
ココネがねこみみを見せなくとも辰馬の話なら、疑うことなんかない。
「僕に移植されたのはルシーカさんの物なんだ……」
自らの胸を見つめる。
「100%そうとは言えないが、多分、そうだろうな」
魔女ルシーカ探知機蝶々、いきなり魔女ルシーカの心臓の気配を感じられなくなったのも、移植されたからだとすれば納得が出来る。
玲の方も夢で見た嫌な感じのする女性、あの魔女ルシーカと断定。
トックントックンと脈打つ心臓、鼓動と一緒に不安が膨れ上がっていく。
そんな玲の背中を軽く叩く辰馬。
「何があっても俺が護ってやる」
そんな気持ちが嬉しい。
「私も嬉るのです」
ココネと会ったのは初めてだけど、嬉しいことは嬉しい。
「ありがとう」
素直な気持ちを口にする。
周囲に注意をはらいながら、買い出しに出た辰馬。
ローとエイダ、警察に遭遇することなく、買い物を済ませて一軒家に戻ってくることができた。
コンビニで買ってきたおにぎりとお惣菜とペットボトルお茶で夕食を済ませ、早々と就寝。
夜中に玲は目を覚ました。辰馬とココネが寝ているのを確かめ半身を起こし、畳の上に転がっているペットボトルに意識を集中させる。
ペットボトルはくるくる回転しながら、宙を生き物のように舞う。
意識の集中を止めると、畳の上に落ちるペットボトル。
心臓移植を受けた後、使えるようになった不思議な力、これもルシーカの影響なのだろう。
忌むべき力かもしれないが、役立てる物なら役立てたい、辰馬のためにも。
「いつまでも、護られてばかりではダメなんだ」
今子供の頃、秘密基地を作ったことありますか?