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『アニマル世界 無敵の五獣勇者』  作者: 三毛猫乃観魂


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第11章 いらっしゃい日本

 書いた小説が消えてしまい、書き直すことに……。

 辰馬たちの視界が回復した時、お昼過ぎの公園内に立っていた。

「ここは……」

 この公園には見覚えがある。幼い頃、玲とよく来たことのある場所。

 帰ってきたんだと、実感できた。ほんの数日しか離れていなかったのに、随分、懐かしい気がする。

 時間帯の関係で、辰馬たち以外に人の姿はない、ティネムがこのタイミングを狙って送ったのであろう。

「ここが辰馬の故郷なんだ」

 辺りをキョロキョロ、ココネは見回す。

「わー、馬もいないのに走っているです、あの馬車」

 道路を走っている車に興味津々。

「何だよ、あの塔、鉄で出来ているのか」

 エイダは辺りの建物を見上げる。

「……」

 無言だがローも周囲の光景に驚いている様子。

 ココネ、ロー、エイダにしてみれば初めて見る世界、物珍しいのも当然、辰馬が初めてアニマル世界に行った時と同じ。


 公園を出て街を歩く。道を老若男女、様々人々が行きかう。みんなけもみみが付いていない、ココネ、ロー、エイダたちが先日まで戦っていた相手と同じ人間。

 敵ではないと理解していても、ついつい警戒心を持ってしまう。

 誰一人、敵対心を持っていない。たまに外国人だ、視線を向けくる人がいるだけ。

 物珍しさと警戒心のごっちゃまぜで町中を歩くココネ、ロー、エイダ。すれ違う人の目には日本に来たばかりの外国人と映る。

 そう映るような衣装を選んだつもり。

 道を歩いていると、コンビニが辰馬の目に映る。


 屋上に来た辰馬たち、ここなら街の景色が一望できる、以前、よく玲と来て景色を眺めていた。

 文化も習慣も違う人たちが作り上げた街、ココネ、ロー、エイダは黙って見回す。話には聞いていたけど、実際に見るのとは受ける印象のレベルが違う、百聞は一見に如かず。

「これを」

 辰馬が差し出した買い物袋の中身は、先ほどコンビニで買った豚まん。

 匂いで食べ物であることか解ったココネ。食欲をそそる良い匂い、早速、かぶりつく。

「うにゃ~アツアツで美味しいです」

 大喜び。

「中はふんわりして、中からはうまい汁が出てくるじゃねぇか」

 エイダも満足顔で食べる。

「ほぅ、これは」

 ローもお気に召した様子。

「俺、ちょっと、友達のところへ行ってくるんで」

 他にもこの世界の食べ物の入っている買い物袋をココネたちに渡し、屋上を出る。

 ポケットの中の万能薬を握りしめ、綾瀬総合病院へ向かう。


 魔女ルシーカと戦った最大の目的がこの万能薬を手に入れること、これさえあれば玲の心臓は治せるはず。

 綾瀬総合病院に入り、どうやって万能薬を渡そうか考えながら辰馬が玲の病室に向かっていると、

「あら、辰馬君」

 顔見知り看護師の女性に声を掛けられる。

「今日も玲のお見舞いに着ました」

 さりげなく万能薬を隠す。

 看護師は少し、辰馬の顔を見た後、

「実は今――」


 心臓移植手術の真っ最中だと聞き、ここが病院であることも忘れて手術室の前に急ぐ。


 術室の前に来ると、ドラマなんかで見たことのある手術中のランプが灯っていた。あのランプが消えたら、手術が終わった証。

 何という皮肉なことか万能薬を持ってきた、その日に手術が行われるなんて。

「お願いだ、成功してくれ」

 正太郎の技術は信じているが、それでも神に祈る気持ちは抑えられない。

 この時、辰馬はいくら適性の心臓が見つかったとはいえ、いきなり移植手術を行うことがおかしいとは思い浮かばなかった。



 刻一刻と時間が過ぎていく……。

 ベンチに座り、意図はしていなかったが辰馬は両手を合わしていた。

 祈ることは“玲が無事でいてくれ”の一つ。

 フッと手術中のランプが消えてドアが開き、手術着姿の正太郎とスタッフ、ストレッチャーに乗せられた玲が出てきた。

「おじさん」

 立ち上がる辰馬。

 顔を合わせただけで、悟った正太郎。

「手術は成功だよ、後は安静にしていれば回復する」

 マスクを外し、笑顔を作る。

 失敗するかもしれないという不安と恐怖がゆっくりと消えていき、光り輝く嬉しさが膨らむ。

 自然と笑顔になる。

「ありがとう、おじさん」

「父親――、医者としてやれることをやっただけだよ」

 手術成功の嬉しさのあまり辰馬は気が付かなかった、心臓移植に立ち会ったスタッフの全員が長年綾瀬総合病院に長年勤務するベテランであり、口が堅い者たちばかりであることを。



       ☆



 潰れたドライブイン。少し前ならば沢山の車が通って繁盛していたのたが、近くに高速道路が出来たため、そちらに車の流れが変わって客足が遠のき、潰れてしまった。

 こんな人気のない場所だからこそ、DQNどものたまり場になる。

「でな、生意気言いやがるから、ボコってやったんだよ」

「そりゃいいや」

 大して面白くもない話なのに、げらげら笑う。

「そう言えばさ、ここのオーナーな首くくって自殺してんだってよ。で、時々、化けて出るってよ」

「怖い話かよ、ネットにでも投稿しろよ」

 さも愉快そうに話をしていと、

「なんだありゃ」

 一人のDQNが指さした先の空間が歪んでいるではないか。

 何だ何だと見ていると、空間の歪みから何者かが出てくる。

 震えおがるDQNども。空間から出来たのは首くくったオーナーではなく、鎧を纏った青年であった。

「どうやら、転移は成功したみたいだな」

 鎧を纏った青年、魔女騎士団長バーニー・ナイエトは四方を見回す。

「な、何なんだテメーは」

「ふざけてるのかよ!」

「やんのか、ゴラァ!」

 精一杯に張る虚勢。

「お前たちがこの世界の住人か」

 品定めするように、ジロジロ見る。

 その視線にカチンと来たDQNの一人が、

「なめてんじゃねーぞ!」

 殴り掛かる、膝は笑っているけど。

 瞬時に抜かれる剣、一陣の風がDQNを霞め通る。

 収められる剣、途端、下着だけを残してDQNの服が切り裂かれた。

「同じ人間、一度だけは見逃す」

 その言葉を聞くと同時に、DQNどもが悲鳴を上げながら逃げ出す。

 けもみみだったら、容赦はなく殺していた。

「けもみみたちより早く、ルシーカ様の心臓を見つけなくては」

 けもみみたちも来ていることは掴んでいる、何としても奴らに破壊される前にルシーカの心臓を見つけなくてはならない。




 豚まん、美味しいですよね、でも、そろそろ季節外れなるのかな。

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