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《無能》と蔑まれた少年、SSSランクの死神と契約し無双する〜幽冥の纏術師〜  作者: 福寿 草真@異世界エステ書籍版2025/12/25発売
第3章 もう1人の死神 編

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3-6 月間少女野宿ちゃん

 その後話し合いの末、とりあえず夏季休暇中は人探しを手伝うという事で決定した。

 迷惑なんじゃないかと、うんうんと悩んでいたエリカであったが、結局ルトの押しに負け、最終的にお願いするに至ったのだ。


 が、ここで、肩を縮こめながらルティアがおずおずと声を上げる。


「あの……ルトさん、エリカさん、非常に申し訳ないのですが……当分私は手伝えそうにありませんわ」


 勿論、ルトの話の中では、エリカを手伝うのは自身だけであった。

 しかし、ルティアにもしも時間の余裕があるのならば、彼女に手伝って貰えないかと提案しようと考えていた為、ルトは小さく目を見開きながら、


「あれ、何か用事が?」


「……はい。実は毎年の事なのですが、この時期は1週間程お母様の地元へと帰郷する事になっておりまして……」


「へー! 帰郷……何か楽しそうだ」


 ルティアと仲良くなってから早1カ月。その間、アロンも含め少なくない時間を共に過ごしてきた。

 当然、その中でプライベートな事も含め、結構な個人情報を話してきたが、やはりそれでも当然だが未だ知らない事はあるようだ。


 驚きと、帰郷に対するある種の憧れのようなものを抱きながら楽しげに声を上げるルトの前で、ルティアはポツリと、


「楽しい……」


「……? どうかした?」


 小さく呟かれた言葉に、しかしよく聞こえずルトは首を傾げる。

 対しルティアは、パッと顔を上げると、


「い、いえ! あの、とても楽しいですよ。色々な方とお話できますし」


「良いわね、それ」


 どこか羨ましそうに声を上げるエリカに、ルティアは努めて笑みを浮かべると、


「はい。……あのそういう訳で、申し訳ありません。こちらに戻ってからならお手伝いできますので」


「ありがとう、ルティア。もしもその時にまだ見つかっていないようならば、お言葉に甘えさせてもらうわ」


「はい! ──あっ」


 と、ここでルティアが突然声を上げる。

 そして、何事かと驚くルトとエリカの前で再び申し訳なさそうな表情で、


「あの、重ね重ね申し訳ないのですが、この後予定がありまして、そろそろ……」


「あっ、ごめんねルティアさん! 決闘でただでさえ遅くなっちゃったのに!」


「ごめんなさい」


「いえ! エリカさんとこうしてお知り合いになれたんですもの! 最高の時間でしたわ!」


 両の手を顔の前でグッと握り、力強く言い切るルティア。

 そんな彼女の様子に、エリカは小さくクスリと笑うと、


「私もルティアと知り合えて嬉しかったわ。ありがとう」


 そんな2人の様子を、ルトは優しげな笑みで見つめていた。


 ◇


 あの後、ルティアの方でもそれらしき人が見つかったら知らせるという事で、彼女とは別れた。


 という事で、2人きりになったルトとエリカ。

 しかしだからと言って辿々しさはなく、至って平常通りにルトは声を上げる。


「エリカ、時間は……」

「私はまだ大丈夫よ」


 という事で、人探しについての話を続ける事に。


 さて、人探しをするにあたって何よりも重要なのが、目的の人物の情報である。


 そう思ったルトはとりあえずその辺りの情報を得る為、エリカに問う事に。


「まずは、そうだな。尋ね人の名前とか、教えてくれる?」


 ルトの問いに対し、エリカは少し気不味そうな様子でおずおずと、


「名前は……わからないわ。その……私が知ってるのは、白髪という事くらい」

「え、それだけ?」


 まさかの情報量の少なさに、ルトが素っ頓狂な声を上げる。

 エリカは尚も気不味そうな声音で、


「ええ……現状は」


「うーん。それだと、ある程度は絞れそうだけど……」


 現状、手持ちにある情報は『白髪である』という事だけ。

 確かに白髪というのは珍しく、ある程度は絞る事ができるが、とは言え少なからずは居るのだ。

 加えて捜索エリアを街中としても、相当な広さがある。

 そんな中からこの少ない情報だけで特定の人物を探すとなると、非常に難度が高いと言えるだろう。


「……一応会えばわかると思うわ。どちらにせよしらみ潰しにあたる事になってしまうのだけど」


「あー、それならまだ可能性はありそうか」


 難しい事には変わりないが、会えばわかると言うのなら多少は探し易くもなる。


 それにしても、白髪という情報しかない中で、しかし会えばわかるとは。

 どこで尋ね人かどうか判断するのだろうか。


 ……オーラとか?


 そこまで考えて、ルトはそれ以上の追及を辞めた。


 こんな追及など、不毛であるからだ。


 ルトはその代わりに……と言ってはなんだが、別の事を問うた。


「……ところでエリカは今どこかに宿でも借りてるの? ……あ、ほら変な意味じゃなくてさ! もし情報を手に入れた時にエリカへ伝えられるようにと思って」


 捜索を毎日共に行えるとは限らない。


 だからこそ、ルトはいつでも情報交換ができるように、あらかじめ居場所を知っておきたかったのだ。


 そんなルトの問いに、エリカは信用しているのか特に疑う事もなく、どこかあっけらかんとした様相で、


「草原の向こうにある森。今はあそこで寝泊まりしているわ」


 想定外に、ルトは小さく目を見開く。


「……え、野宿? もしお金がないなら──」


「そういう訳ではないわ。ただ野宿の方が何かと都合が良いだけよ。気にしないで」


 これ以上の追及はしないで欲しそうなエリカ。

 しかし彼女の安全を考えるのならば、そういう訳にはいかず、ルトは更に話を続ける。


「いや、でも低級とは言え魔物もいるし、追い剥ぎとかもいるかもしれないし……」


 ルトの心配に対し、エリカは一切恐れる様子も無く、


「その点は問題ないわ。私には優秀な護衛が居るの。……それに良い場所を見つけてね。森の中なのに一切木がないの。景色も良いし、案外快適なのよ」


「え? もしかしてそこって……」


 その場所に覚えがあったルトは驚きを含んだ声でそう言うと、未だ時間に余裕がある様子のエリカを伴い、思い浮かべた場所へと移動した。


 ◇


「やっぱり、ここだったんだ!」


 目前に広がる見慣れた景色。

 森林を抜けた先にある、謂わばルトにとっての秘密基地のような場所。

 そう。砂漠の中のオアシスのように、森の中にポツンと広がる草原地帯こそが、エリカの現在の住処だったのだ。


「……あら、この場所の事知ってたのね」


 エリカが少し残念そうに呟く。おおよそ、ここを自分しか知らない癒しの空間とでも考えていたのだろう。


「うん。昔偶々見つけてね。……けど、住んでいるという割には生活感があまりないような」


 周囲を見回すも、目に映る景色は以前訪れた時のままで。

 ここで生活をしていると言われても、到底信じられななかった。


 そんな怪訝そうな様子のルトを目に収めながら、エリカは少しだけ喜色の含んだ声で、


「ええ、実際には……こっちよ」

「こっち……?」


 こっちとはどっちだろうか。


 てっきり現在居る場所がそうだと思ったルトは、思わず首を傾げてしまう。


 そんなルトをよそに今居る場所を抜け、更に森の奥の方へと進むエリカ。

 その後を続くルトであったが、ここで再度視界が開けた。


 そこは、ルトの秘密空間──既にエリカに知られているので、秘密とは言えないが──と同じオアシスのような場所で。

 いや、寧ろこちらには美しい湖がある事から、向こう以上にオアシスのような空間で。


 ルトは思わずポカンとしてしまう。


「今はここで暮らしているわ」


 エリカの言葉を受け、ルトは呆然としたまま、


「……驚いた。奥にこんな綺麗な場所があったなんて」

「あら、という事はここを見つけたのは私が先という訳ね」


 先に見つけたと得意げな様子のエリカ。

 きっと、フードの下ではそれは見事なドヤ顔を浮かべている事だろう。


「何故、ドヤる。……でもまぁ、確かにここなら基本人は来ないかも」


 そもそも森に入る人間が少ない上に、仮に入ったとしても広大な森の中からピンポイントでこの場所へたどり着く事などそうそうないだろう。


 そんなルトの考えは正しかったようで、


「ええ、もう何日も住んでいるけど、人がやってきた事は一度もないし、周囲にそれらしき存在の気配を感じた事すらないわ。だから大丈夫よ」


 既に何日も住んでいる彼女が言うのならば大丈夫なのだろう。

 ルトはそう考えると、彼女と次会う約束をし……この日は解散となった。

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