こいのよかん12
岩の上に並んだ、黒い鯉2匹。
左側に口を向けて手前と奥に並んでいる鯉のうち、手前側の鯉はウロコが多く剥がれていた。胸ビレの周囲が特に剥けていて、白い円のようになっている。
「……なんか変わった色してるね」
そのウロコが剥けた部分をよくみると、白っぽいと思ったそれはメタリックに輝いていることがわかった。白銀というか、内側から光を当てたように明るい白色だ。
さらにじっと見ていると、そのメタリックホワイトシルバー的な部分が、波打つように色を弾いているのに気がついた。目線や光源を動かしたときに光り方が変わるのではなく、じっと見つめているだけで、その内側に光が走る。その様子は、まるで呼吸に合わせて光っているように見えた。
「……鯉ってこんな感じなの?」
「ちがいますルリさま」
4人並んで鯉を覗き込んだまま、私が訊ねると、すずめくんが否定した。なんとなく予想していた答えだった。
「なんでこういう色してるんだろう。なんかこの……今みたいな感じの光って何?」
「ルリさま、あるじさま、見てください。内側にもウロコがあります」
「どれ……」
4人で頭を突き合わせるようにさらに鯉を覗き込む。白っぽく光っているようなその部分は、よく観察すると確かに非常に細かいウロコのようなものが並んでいた。非常に細かいウロコのようなものは綺麗に整列していて、それが波打つように動くたびにきらめいて光を弾いていたのだ。
「うむ……もしやこれは……」
ミコト様がそっと手を出して、この鯉のエラの近くに残っていた黒いウロコにそっと触れた。するとウロコがぽろりと剥がれ、その下から白っぽい色をした細長いものが岩に垂れた。
「なにこれ」
「うぅむ……髭、ではないか?」
「ヒゲ?」
最初にモジャモジャしたヒゲを思い浮かべたけど、どう見ても目の前のこれとはかけ離れている。魚でヒゲというと、鯉じゃなくてナマズじゃないだろうか。ナマズでもこんな長くて光り輝くヒゲはなかったと思うけども。
私たちが黙っていると、鯉がぴくりと動いた。エラを動かし、身を捩るように尾を上げる。その拍子に、胸ビレがまるまるぽろりと取れてしまった。
「えっ」
その下にあったのは、角ばって小さな小枝のようなもの。鯉のお腹から出たそれは、先の方で四つに分かれ、そしてその先は爪みたいに尖っている。
「これって……」




