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こっち向いて、神様  作者: 夏野 夜子


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這い寄るモフモフ4

 おキツネの耳と尻尾は反射で出ているようなものなので、しばらくすると自然と引っ込んでしまうらしい。稲荷神と思われていたのは結構前の話なので、今では自力で出し入れはそれほど上手には出来ないらしい。

 ミコト様の説明通り引っ込んでしまったモフモフを名残惜しく思っていると、ミコト様がめじろくんに目配せしてもう一度クシャミをして出してくれた。

 これ、何度もさせたら私がミコト様を虐げているようなものではないだろうか。ちょっと気が引ける。出てしまったモフモフはきちんとモフモフするけど。


 耳は短い毛が生えそろっていてフワンフワンと厚みがあり、尻尾はしっかりと毛が生えていて両手で抱きしめるととても幸せになれる。


「モフモフ気持ちいいです。良い匂い」

「主様はさっき慌てて湯を浴びてました。鼻歌も聞こえました」

「めじろっ!」


 ミコト様は私に気を遣って身支度をしてきてくれていたらしい。相変わらず気遣いが細やかな人である。秘密にしておきたかったのかあっさり暴露したすずめくんを怒っているけれど、めじろくんは涼しげな顔でスルーしている。


「わざわざありがとうございます。モフモフ良い匂いです」

「そ、そ、そうか……うむ」


 きつね色の服と相まって、本当にキツネが化けているような感じなミコト様は、後ろに回って尻尾をモフモフする私に袖で顔を隠したまま恥ずかしがりつつもじっと座っている。ふかふかしていて幾つかに分かれている尻尾を触っていると、時々尻尾がぴくぴくしてミコト様が肩を震わせていた。


「ミコト様、尻尾ってどんな感じですか? 痛いですか?」

「う、い、たくはないが……その、付け根の方を撫ぜられると力が抜けるというか」

「このへん?」

「あぅ、これルリ、あっ」


 ふっかふかの尻尾をふにふにと手で揉んでいると、ミコト様がじわじわと前のめりになっていっている。ミコト様はやめてほしそうだけれど、なんだか反応がかわいくてついつい手をにぎにぎと動かしてしまっていた。別に誰かに意地悪して喜ぶ性格ではなかったはずだけれど、なぜかミコト様を見ているとついつい反応を見たくなってしまう。開けてはいけない扉のようなきがするけれど、ついつい。


「ルリ、ちと、手を……と、止め」

「すみません、ミコト様が可愛くてつい」

「可愛いと言われてもその、嬉しくはないのだが……」


 息も絶え絶えになっていたミコト様は座っていた正方形の畳に伏せるくらいに前のめりになっていたけれど、私がしっぽから手を離すと大きく息を吐いて姿勢を立て直そうと開いていた右手を突いた。


「っ、」

「あ」


 ミコト様が起き上がるのを見ていると、私が尻尾を触っていたせいで力が抜けていたせいか、力を掛けた右手の肘がかくっとなってミコト様が体勢を崩す。倒れる前に咄嗟に反対の手を突いたけれど、そのせいでいつも覆っている袖が顔の前から外れてしまったのだ。






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