神様の大事な仕事24
少しずつ気温が上がってきた、春真っ盛り。
電話を切ってスマホを置くと、視線の圧を感じた。
ミコト様、すずめくんにめじろくん、白梅さんと紅梅さん、そして鞠ちゃんまでが私を囲むように集まっている。ミコト様は両手を組んで祈るようなポーズまでしていた。
「……採用されました」
「わーいわーい! お赤飯ですねーっ!!」
わっと喜びの声が湧いて、やれご馳走だやれケーキだと騒がしくなった。
お祈りポーズをしていたミコト様は、目をうるうるさせながら微笑んで何度も頷いている。
「しょ、書類は数日で届くそうです」
「うむ……そうか、ルリよ、よう頑張ったな。ルリは本当によう頑張ってくれた」
「いえ……」
両手をぎゅっと握って潤んだ目で褒められると、ちょっと後ろめたい。
確かに頑張ったけど、全力で褒められるほどには頑張っていない気がする。
ミコト様により効果を制御されたお守りは、それでもよく効いた気がする。
前倒しで始めた転職活動は、かなりとんとん拍子に進んだ。とりあえず受けてみた資格試験の結果はまだ出ていなかったけれど、面接でそのことを話したら試験内容を尋ねられ、記憶に新しいから澱みなく答えることができた。並行して勤めていた会社が人員削減を決定したため、それに乗じて退職を申し出られたのもタイミングがよかった。
今考えてみたらうまくいきすぎな気もするけど、あからさまなお守り効果とも言い切れないくらいのレベルのうまくいき具合だ。
「ではもう面接に行かなくてよいのだな、ルリはゆっくりできるのだな」
「あ、はい。でも再来週から新しい職場に行くことになりますけど」
「あなや! もうすぐではないか!」
「5月からなら新卒と一緒に研修受けられるみたいです」
「春休みは……春休みは二月あると言っていたではないか……!」
「ミコト様それ大学の話」
引き継ぎと有給で3月を終えて、5月から新しい会社に行けるのは物凄くラッキーな方だと思う。休みが長いと気持ちが緩んでしまいそうなので、いい具合に始められそうだ。
「ミコト様と、みんなが支えてくれたおかげですね」
「うむ……喜ばしいことだ……ルリが楽しく働けるならそれはよい……よいが……!」
複雑そうな顔をしているミコト様は、もっと遊びたかったようだ。
「ミコト様、次の会社は福利厚生もしっかりしてるので、休暇もちゃんともらえるみたいですよ。夏休みもありますし」
「そうか、では夏に旅行も行けるのだな!」
「行きましょう。久しぶりに海に行きたいです」
「海か!」
パッと笑顔になったミコト様は、早速バカンスに思いを馳せたようだ。私も旅行はしばらく行っていないので、残りの2週間でもどこかに遊びに行きたい。
「ではルリよ、早速計画を練らねば」
「そうですね。みんなも一緒に行けるとこにしましょう」




