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神様の大事な仕事18

「ミコト様ー入りますよー」


 お茶を持って和室に入ると、ミコト様が暗い顔して俯いていた。


「ルリよ……ぶるうべりは瑞々しゅうて美味であった」

「よかったです。なんか、行き詰まってそうですね」

「そんなことはない……そんなことは……私は神ゆえにこのようなことで行き詰まるなどと……」


 背を丸めてぶつぶつ呟いている姿は、どう見ても行き詰まっていた。

 視線が落ちる先にはお守り。相変わらずムンムンしている。


「もしこやつの作り手に相見あいまみえようものなら、私は……私はきつく説教をしようというのに……」

「会ったらいいんじゃないですか?」

「会えぬ……会えるけれど会えぬのだ……」


 くう、と袖を掴んだミコト様は悔しそうだ。よくわからないけど、何か事情でもあるのだろう。


「あんまり頑張り過ぎないでくださいね。すずめくんがブルーベリージャム作って欲しいって言ってましたよ」

「……これの力を弱めるまでは、しばし菓子作りは休もうかと思うておる」

「そんな本気で……」


 ミコト様は料理を作るのも好きそうだけど、お菓子作りはもっと好きそうだ。ジオラマの小物作りも得意なので、デコレーションやら型抜きやら細かい作業があるお菓子作りの方が楽しいのだろう。人付き合いならぬ神様付き合いに疲れたときなんかに3段ケーキを作ったりしているところから考えても、お菓子作りがストレス解消も兼ねているのは間違いない。

 ただでさえ就活お守りの説得がうまくいってないのに、お菓子作りもやめたらストレスが加速しそうだ。

 神様にストレスを与えるほどのお守りすごい。


「ミコト様、そんなに無理しなくて大丈夫ですよ」

「大丈夫ではない! ルリを困らせるものを遠ざけるのが私の仕事だというのに!」

「ミコト様の仕事は神様なんじゃ」

「神である前に私はルリの夫だ! このような不甲斐ないままでは夫、いや神とすら名乗れぬ……!!」


 私の夫である前に神様だとは思うけれど、ミコト様が私を守ることを第一に考えてくれているのはよくわかった。なにしろ、私がストレスを抱えていたら自分が泣いてしまうくらいのひとだし。


 たぶん、就活お守りは物理的にバラバラにしたりすれば、効果はなくなるだろう。ムンムンしているから普通の人には難しいかもしれないけど、流石にミコト様は壊せるはずだ。

 けれど、私が転職するときの助けになるかもしれないとか、預かったものだから壊しちゃいけないとか、色々と考えてその手段を避けているのだ。


「神は名乗っても大丈夫だと思います」


 結局、ミコト様は優しい。私に一番に優しいけど、みんなに優しい。


「ちょっといい方法を思いついたんですけど、試してみませんか?」


 私がそういうと、ミコト様は首を傾げた。






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