神様の大事な仕事17
「ルリさま、おはようございます!」
「おはようすずめくん。ミコト様は?」
「お膳のお支度をした後はお部屋に籠ってらっしゃいますよ。今日もお仕事であれば気を付けて行くようにと」
朝起きると、ミコト様がいなかった。朝ごはんのためにいつも早起きしているけれど、私が起きてきたら普段は食事は一緒にとるのに、今日はそれもないようだ。
お座敷に座ると、すずめくんがお膳を運んでくれる。今日は焼き鮭にお出汁のきいた厚焼き卵、刻んだ沢庵と混ぜた納豆、オクラと山芋の和え物に炙った海苔。生わかめのお味噌汁もついていて純和風だ。
「今日はたぶんお休み。連絡が来なければ」
「もうスマホの電源など切ってしまいましょう。それとも記録してあとでふんだくってやりますか?」
「電源切っとこうかなあ」
「そうなさってください。ルリさま、今日はすずめと庭仕事でもしましょう。夏のお庭にブルーベリーがたくさん実ってますから」
平日が忙しいので、休みの日にやることがないとなんか落ち着かない気がするようになってしまった。すずめくんと一緒にブルーベリーを採っていると、足元をくわくわと鴨の親子が横切る。平たいクチバシが下の方の実を食べてはくわくわと鳴いていた。
「鴨もブルーベリー食べるんだ」
「裾の方を片付けてくれると助かります。これは落ちて潰れると景観がよくないですから」
「黒っぽいもんね。奥の方とか取りにくいし」
「すずめも鳥の姿になったら奥まで行けますけど、これはクチバシに挟めません」
「サイズが微妙だよね」
ブルーベリーの品種の話を聞きながら収穫していると、縁側を歩いていためじろくんが庭に降りてきた。カゴを差し出すと、数粒摘んで食べてから「みかんもお願いします」とおねだりをする。めじろくんは、ブルーベリーよりもみかん派なようだ。
「その紙、ミコト様に持っていくの?」
「はい。破れ紙が多くて困ります」
「大変そうだね。ミコト様にもブルーベリー持っていってくれる?」
「のせてください」
収穫した中からひと握りほどのブルーベリーを懐紙に載せて、さらにハンカチでそっと包む。紙束の上に置くと、めじろくんはミコト様の仕事部屋まで歩いていった。
「ミコト様、あのお守りをどうにかしようとしてるのかな」
「みたいですよ」
「大丈夫かな」
私の一言を気にして頑張りすぎているならちょっと心配だ。
そう言うと、すずめくんはひょいと首を竦めた。
「案外楽しんでいるのではないですか? ルリさまに頼られるのが何より嬉しいお方ですから」
「そうかな」
「そうです」
「後でお茶でも持って行こうかな」
「そうしてください。お守りの件は早く終わらせてジャムを炊いていただかなくちゃ」
すずめくんはつまみ食いをしながらこともなげに言った。美味しいもの優先だ。




