神様の大事な仕事14
お守りは、気持ち程度の効果でいい。
それ以上はちょっと濃ゆい。
オーラをムンムン発しているだけでもちょっとアレなので、就活お守りはとりあえず、倉に入れてみた。
色んな年長者たちの話を聞いて落ち着いてほしい、と思っていたんだけれども。
「おお、ルリさま! どうぞお入りください!」
「本日はお越しいただきありがとうございます!」
「……」
倉に様子を見に行くと、なんか雰囲気が違った。
喋れる勢の勢いがすごいし、動けるだけのものたちも動きがキビキビしている。
私は強く勧められて椅子に座らされ、目の前に掛け軸、鎧、行灯、壺、古時計が等間隔で並ぶのを見る。
「わたくしが御屋敷で長く勤めさせていただきたいと思った理由は……」
「今までわたくしは数々の戦場で防御という自らのメリットを遺憾無く発揮させていただいたと思います。自分の強みとして捉えてきたこの長所ですが、置物としても……」
だめだ。感染している。
元々この倉にいるものたちは、機会があれば「使ってもらいたい」「役に立ちたい」という気持ちが強い。とはいえ置き物や行灯にガタガタ動かれるとちょっと大変ということもあって、順番に期間限定で御屋敷に飾ったり食器として使ったりしていた。
しかし、今のこの倉は、就活守りの洗脳……いや指導? を受けて、積極的にお屋敷への就職を目論んでいる。
「御社のビジョンに合った働き方をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!!」
「……す、すずめくーん!!」
過去に囚われがちな骨董品にビジョンとか言わせるほどの力、すごい。
倉の温度も上がっているのではないかというほどの熱気に、私は思わずヘルプコールをした。
「もうもう! すずめはインターネットの波に乗っていたところでしたのに!」
熱気に押され気味になった私とは違って、人事部、いやすずめくんは見た目は子供でもお屋敷の采配については百戦錬磨だ。
どうにかしてでも就職を勝ち取りたいリクルーターたちに負けないほどの理論で合戦を繰り広げている。
「だぁーかぁーらぁー、掛け軸を飾る数は増やしません!」
「その固定概念を破るための起爆剤になる自信と実績があります!!」
「お屋敷を爆発させたらすずめは許しませんからねっ!」
ここはプロに任せて、私はそっと倉を出ることにした。
つっかけを履いて庭に出ると、ミコト様がオロオロした様子で立っている。
「ル、ルリよすまぬ……まさかここまでとは……」
「まあ、流石にアレはミコト様のせいだとは思いませんから」
強すぎるお守りの件で私に怒られるとここのところビクビクしていたミコト様を安心させながら、ちょっと考える。
ミコト様があのお守りを持ち歩けば、オンボロ神社が儲かるかも。
熱血になったミコト様を想像して、その考えは一瞬で打ち消した。




