表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
260/302

神様の大事な仕事4

 丁寧に出汁を引いたつゆに漂う、温かいお蕎麦。からっと揚がった海老の天ぷらと薄切りのかまぼこ、わかめ、ネギが賑やかに彩っている。


「いただきまーす」

「召し上がれ。足りないならばおかわりもある」


 帰ってきたばかりの頃とは違って、リラックスしたお腹は正直に空腹を告げていた。薄味のつゆも美味しいし、海老天が何より美味しい。サクサクッと音を立てる衣とぷりぷりで大きい海老は、揚げ物なのになぜか重くない。


「これすごく美味しいですね!」

「そうか! 蕎麦は遅うに食べるゆえ、椿油を使って軽く揚げたのだ」

「椿油って髪に付けるだけじゃなかったんですね」


 ミコト様がアルカイックスマイルで差し出してきたおかわりの海老天をつい受け取ってしまったけれど、大晦日だし多少は食べ過ぎても許されるはずだ。


「しみわたる……」

「ルリさまはずっと食欲がありませんでしたからね」

「ルリさまっこちらのかしわ飯もお食べください! すずめがおにぎりにしました! すずめが! ルリさまのために!」

「そばにおにぎりって……いただきます」


 すずめくんの圧に負けて、炊き込みご飯のおにぎりも食べる。すずめくんの手のひらサイズに合わせて小さいそのおにぎりはとても美味しかった。お米に強いこだわりを持つすずめくんがこだわって作ってくれたのだろう。


「おいしい」

「ルリさま、お口直しに梅はいかが?」

「梅干し、梅かつお、梅水晶はいかが?」


 ニコニコした梅コンビは、小鉢を持ってスススと近付いてくる。


「ルリよ、蕎麦のおかわりはどうか? たくさん作っておいたぞ、ルリの食べたいだけ茹でよう」

「ルリさま、おにぎりもっと食べてください!」

「ちょっと待ってちょっと待って」


 いつになく全方向から圧が強い。

 私はめじろくんに目で助けを求めたけれど、めじろくんはすっと徳利を取り出してみせた。そうじゃない。


「落ち着いて、この時間に食べ過ぎるのはよくないと思う。明日動けなくなりそう」

「大丈夫ですルリさま! 明日はお正月、のんべんだらりとお過ごしください!」

「そうだぞルリよ、明日とは言わず、明後日もその次も……好きなだけゆっくり過ごせばよい」


 めじろくんに差し出されたお猪口をくいっと呷ったミコト様は、目元をほんのり染めながら笑顔で頷いた。


「いくらでも。何しろ、ルリはもうずっとお屋敷におるのだからな。仕事とやらを辞めて」

「ルリさま! めじろと一緒に遊びましょうね! 新しいゲームをたくさん買ってあります!」

「ルリさま、一緒にみかんを取りましょう」

「久しぶりにお着物で過ごすのも素敵ねえ」

「丁寧に髪を結いたいわねえ」

「いやいやちょっと待って」


 ぽわんと花を背負ったミコト様を筆頭に、鳥コンビも梅コンビもあれこれと来年の予定を考えている。楽しそうなところに水を差すのは申し訳ないけれど、誤解は解かないといけない。


「あの……仕事、続けるけど」


 ぐわっと全員の顔がこっちを向いて、ちょっと怖かったのは内緒だ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] キスの天ぷらとカボチャの天ぷらも美味しいと思います!
2023/01/09 09:08 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ