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シカシアヤカシ4

「つか今時よ? 自由恋愛の時代によ? 自分から何もしないで惚れられるとかマジハードルたけーかんね。モモくらいの魂食えるなら頑張ると思うけど、そもそもモモなら自力でやりそーだし。やっぱ悪魔の力に頼る奴ってダメだわ」

「お前が言うな」

「ノビくんが言っちゃダメでしょ」

「しかり、しかり」


 一斉に突っ込ませるノビくんのボケ力が半端ない。何言ってんだこいつという気持ちで、相手が悪魔だという認識をブレさせる作戦だと言っても納得してしまいそうだった。さすがにフランク過ぎてややペースを乱されたミコト様が、仕切り直すように咳払いをする。


「で、ルリよ、この悪魔はどうする? 滅しておくか?」

「いでででででマジでやべーって! 死ぬって!」


 空中を掴んでいるミコト様が手を捻ると、途端にノビくんが腕でも捻り上げられたように悲鳴を上げた。私には何も見えないけれど、ミコト様が掴んでいるナニカが悪魔であるところのノビくんに繋がっているらしい。


「そいつ、殺せよ……! 悪魔の分際で、何人間の振りしてんだよぉ! 殺せよ!」

「オーサワてめそういうとこが魂不味い原因だっつの! 大体オレ死ぬときはお前の魂食い荒らしてから死んでやるからないでででで」

「そこ、静かにしておれ、ルリの声が聞こえぬではないか」


 ぱっと払うようにすると、ノビくんと大沢くんが呻き声をあげて大人しくなる。声を上げないながらも動いているんで、痛みに悶絶しているのかもしれない。どうなっているかよくわからないけど、百田くんが気の毒そうに2人を見やっていた。


「え……滅しておくのはちょっと……うーんでもまたこういうことされたら迷惑だし」

「いやしねーから! 契約上やっただけであってオレの意思じゃねーの! どっちかってーとミノさんの方がダチだし迷惑かかんないように一応考えてやってたから!」

「えぇ……」

「そこの神様いたからそんなダメージにならなかったっしょ?」

「そういう問題じゃないだろ、馬鹿! お前は何も反省してないのか」

「いって! モモマジごめんって! ごめんなさい!」


 百田くんがノビくんの頭を思いっきりバシバシ叩いているけれど、むしろもっとやれと思ってしまった。確かに私はケガしたりはしなかったけれど、噂はそれなりに傷付いたりしたし、知らない人から声かけられるのは怖かったし、ガラスだってミコト様がいてもびっくりした。


「わかった! マジでごめんなさい! やめてほんと!」

「遅い! 大沢を元に戻せ。お前ら2人とも罰を受けろ」

「や戻すのはさすがに無理だわ。モモも今日食べたたこ焼き戻せっつってもできねーっしょ」

「屁理屈言うな!」

「待って! ちょっミノさん止めてお願い!」

「百田くん、3秒くらい待ってあげて」

「短っ!」


 わーわー言っているノビくんを眺めて、ミコト様がちょっと唇を尖らせていた。「悪魔なる妖はルリと高校生活を楽しんでいたというのなら私も……」とか呟いている。やめて欲しい。これ以上高校にヒトでないものを持ち込まないで欲しい。


「オーサワね、神様呪い殺すとか言ったんスよ。だから対価として魂全部貰う契約は済んじゃってるんスけど、オレ逆らわないんで! マジで攻撃とかしないんで!」

「契約違反してるじゃねーか。魂返してやれ」

「強いのに媚びるとか最低」

「えー?! オレ悪魔だよ?! 裏切りと友達だよ?!」

「胸張るな、馬鹿」


 ノビくんがまた百田くんに叩かれている。

 ミコト様といえば力の差が歴然としているせいか、狙ってた宣言をされても特に怒った様子もない。相変わらず私が嫌だと言えば片付けとくかくらいの気持ちのようである。


 たこ焼きと魂を同列に扱うのは微妙な気持ちだけれど、悪魔が魂を食べないと死んでしまうのであれば、今後魂を食べるなということは餓死しろと言っていることと変わらないような気がする。だからといって、召喚されれば大沢くんのような人をまた作るというのも見逃せない。

 そもそも召喚ってなんだろう。魔法陣とか書いたのだろうか。


「うーん……百田くん、どう思う?」

「……正直俺は何も言えん。こいつは馬鹿で調子乗ってるけどイイヤツだった。でも人を陥れるような悪魔だとしたら、見て見ぬ振りは出来ない」

「えぇーモモ〜オレら親友だったじゃん〜ズッ友っしょ〜」

「お・ま・え・のせいだろうが! 正直他人が悪魔だったら迷わず消してくれって祈願してるわ!」


 ガクガクと襟首を掴んで揺らしている百田くんも、正義感と友情の間で揺れていることがわかる。

 私とノビくんは正直よく喋るようになったのはこの夏くらいからなのでそこまで仲良しじゃなかったけど、壁を作らない彼の態度で肩の力が抜けたようなことは何度もあった。

 アヤカシという存在は前にいきなり危害を加えてきた山の神様のようなタイプだと漠然と思っていたので、ノビくんのように身近な存在だったということが判断を躊躇させているのはあると思う。悩んでいると、ミコト様がそっと肩を叩いた。


「もう面倒であればまた小石にしておくか? パッフェーを食べながら処遇を考えてもよい」

「あー、それもいいかもしれませんね」

「ちょ待っ! たんま! マジで! わかった! わかったから!! とりま石とかマジこええんですけど!」


 神様やっぱ半端ねえわと焦ったノビくんが懸命に首を振っている。


「取引しましょう! ねっ! ほら、お探しの薬あげるから!」

「え? 薬って?」

「ミノさん探してたっしょ? あの薬、多分オレ持ってっから。ほら、メイドイン月の万能薬! あれあげるからイジメないで!」

「いや、えぇ……本当に?」

「ほんとほんと! 悪魔だけどこれは嘘じゃないから!」


 思わずミコト様の顔を見ると、同じように豆鉄砲食らったような顔がこっちを見ていた。

 急展開過ぎる。

 とりあえず。


「そんな大事なことは先に言ってよ!」

「いで、いででごめんなさい!」


 空中を掴んでいるミコト様の腕を持ってブンブン振っておいた。

 本当にそれを一番に言ってほしかったよノビくん!






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