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ブンカサイ4

 胸元を手で抑えると、お守りの感触がする。衣装のしたのスカートには、依代の紙がポケットに入れてある。ミコト様に言葉も貰ったからか、あんなことがあった後だけれど不思議と怖さはなかった。

 教室のある階のひとつ下でミコト様と分かれて階段を登る。その途中で、スマホを持ったゆいちが降りてくるのに気付いた。


「あっ、ルリち見つけた〜」

「これからどこか行くの? もう時間じゃない?」

「違う違う、ルリち捕まえにいこうとしてたとこー」


 捕まえにって、虫か何かみたいに。

 ゆいちは目立たないけれど綺麗にネイルした爪で私の手と自分のを繋いだ。そのまま階段を降りていく。


「えっ、みかぽん達は?」

「いいからいいから〜」


 普段は割とフワフワした雰囲気でのんびりしているゆいちが、私の手を取ってそのまま降り続けている。ついていきながらどこに行くのか訊いたけれど、すぐにわかるよ〜と流されてしまった。いつになくマイペースだ。


「先生ェ〜探した〜」

「探されたー。何かあったのか?」


 行き着いたのは正門の近くに作られた本部テントにいる担任のもとだった。何やらバインダーを眺めていた先生に、ゆいちがポケットから取り出したものを見せる。その隣で覗き込んで、私は驚いた。


「なにこれ!」

「ん〜多分隠し撮り?」

「全部そんな角度だな。これどうした?」


 4枚の写真には全て私が写っている。すずめくんを乗せて歩いているところ、風に髪とスカートをあおられて押さえているところ、自分の部屋の窓際でカーテンを触っているところ、それから神社に続く道を折れようとしているところだった。アップで撮られていたり全身を写してあったりと角度も様々だけれど、どれも私にピントが合っていた。手に取って眺めている先生も眉を寄せている。


「被写界深度浅いなー。執着心ってやつか。箕坂、ないと思うがこれ心当たりある?」

「ないですそんなの」

「これ気付いたら教室中にバラ撒いてあって〜気持ち悪いから報告に来ましたぁ」

「うわ何だそれ気持ち悪っ」

「ほんとだ気持ち悪いなにそれ」


 ゆいち達は百田くんらと適当に解散した後食事をしてから教室に戻ったらしい。そうすると中がざわついていて、お客さんを一旦入れないように誘導していた。みかぽんが委員長に訊いてみると、お化け屋敷の中を歩いていた人が写真がたくさんあって気持ち悪いと言って出て来て、確認したらこういう写真がバラ撒かれていたそうだ。


「なんかもっと気持ち悪いのもあったんでノビらに回収してもらってるんですけど、皆に見られるのもあれなんで時間かかってて〜」


 隠し撮りされた写真なんか、人に見られて嬉しいものではない。そう気遣ってくれたみかぽん達で集めているらしいけれど、枚数も多い上に異様な状況なので担任を呼びに来たらしい。ついでに私は教室に近寄らないほうが良いだろうということで、ゆいちが探しに来たようだった。


「よしちょっと行ってくるわ。箕坂はここにいるか? 花元もいるけど、今日誰か家の人呼んでる?」

「来てるので、連絡してみます」

「ストーカーだったら人目あった方が良いからな。ここ先生いるし、動くなよ。トイレも連れションしとけ。何かあったら一階の職員室行くこと。あそこ人多いから。花元頼んだぞ」

「は〜い」


 すぐ近くにいた体育のごつい先生に声を掛けて、担任の先生が本部から校舎の方へと歩いていく。受付の手伝いをしていた実行委員の子が不思議そうに見ていたけれど、ゆいちは愛想よく挨拶してちゃっかり折りたたみイスを2つゲットしていた。それに座りながら、さっきの写真を見る。


「うわ、これ校舎の中だよね。いつ撮られたのか全然わかんない」

「これさ〜今年の春だよね? ここ桜咲いてるし、髪の長さとか4月っぽい」

「あっほんとだ。これも夏前だ」


 すずめくんを肩に乗せている写真は最近のものだろうけれど、風が吹いた瞬間に撮られたらしい一枚は今年度が始まってすぐの頃のようだった。夏以降はずっとミコト様のお屋敷で暮らしているので、家の2階にいる写真もその前に撮られたことになる。

 遠くから撮った写真ではないかと思われるけれど、それほど昔から盗撮されていたというのは流石に気持ち悪い。悪意のある噂やアヤカシの仕業らしい術のこともこれと関連しているのかもしれない。


「ルリち、親戚のおにーさんに連絡しよ」

「そうだった」


 写真が気持ち悪すぎて忘れていたけれど、ミコト様も呼ばないといけない。今ここで叫べばすぐに来てくれそうな気がするけれど、この瞬間に脅威が迫っているわけではないし、今は人目もあって不審な真似はあまりしたくない。すずめくんがスマホを持っているので呼び出そうとポケットを探った瞬間、辺りに非常ベルが鳴り響いた。






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