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ブンカサイ2

「はいらっしゃーせぇー2名様ご案内ー!」

「喜んでー!」


 掛け声がなぜか居酒屋風なところは疑問だけれど、洋風お化け屋敷「公爵未亡人の館」は中々大盛況だった。ノビくんらが張り切って怖さを追求したこともあるし、お化け屋敷の中に散りばめられたキーワードを集めると記念品を貰えるという企画が受けたからなのかもしれない。

 当番は基本的に準備の班ごとに振り分けられたので、百田くんとノビくん、そして大沢くんとも大体一緒に行動することになった。宣伝は男女で別々に行ったけれど、その後の受付係と休憩は同じタイミングで取ることになる。


「お客さん結構来たねー。ノビくん達の宣伝効果かなー」

「あ、こっちの束もウチラの時間のやつ」

「団体来たけどどうする? 2回に分けたほうがいいよね?」


 女子の衣装は布部分だけがお揃いで、後はそれぞれがそれっぽいデコレーションを加えている。私達の衣装は8割自分で作ったので、みかぽんとゆいちとのんさん達とお揃いでデコった出で立ちになっていた。みかぽんとゆいちがこだわった同じようなカールの髪型に骸骨デコのヘッドドレス、同じ左胸の場所に血糊を付けているのはのんさんのアイデアで「同じ長槍で殺された化物」らしい。どういう状況なんだ。

 ラメやリボンも増量したので並んでいると結構見栄えがするらしく、受付で色んな人に話しかけられた。保護者の人に出来栄えを褒められてお礼を言ったり、小さい子や受験生から写真を撮って欲しいとお願いされて一緒に写ったりはしたけれど、男子の軽率な声掛けには非常に冷たい対応となった。


「うわ、かわいー。写メ撮っていい?」

「無理〜入るなら入って入らないなら消えてね〜」

「勝手に撮ったら肖像権の侵害で訴えるから」


 ゆいちものんさんも美人なので、冷たい顔をすると怖い。大方例の噂を耳にしていた人が文化祭という浮かれ雰囲気で声を掛けてきたのだろうけど、今日はミコト様もすぐ傍にいるし本当にやめたほうが身のためだと思う。現に、チケットのモギリをしている百田くんの顔色が優れない。

 何人かそういうある意味命知らずな人がいたけど、みかぽん達も冷たい対応をするし、粘ろうとすれば百田くんやノビくんがさっさと中へ誘導してくれたので不安はまったくなかった。


「うぃーおつかれぃー。昼飯行こーぜ!」

「待てノビ、午後の確認してからだろ」

「お腹空いたしあるきながらでよくない?」

「あたしたこ焼き食べたい〜」

「パンケーキ! パンケーキおすすめ! なっ! 買って!」

「うるさいなー今しょっぱい系の気分なの!」


 教室の入口で派手に勧誘をしていたノビくんが頑張ったおかげで、受付当番の後半はとても忙しかった。休憩を挟んで夕方頃にもまた宣伝当番があるけれど、その話をする暇もなく時間が過ぎてしまったのだ。


「やっぱ飲食多い一階が人通りも多いよね〜」

「重点的に回るか?」

「でもあそこの廊下って看板禁止とか言ってなかった? ナシで宣伝出来るかな」

「この衣装結構目立つっしょ」

「ノビはうるさいから目立つしね」

「ひどっ! 傷付いたからお詫びにパンケーキ買って!」


 調理室を使った喫茶系は非常に好評で、たこ焼きなどの軽食の他にもアイスの天ぷらやカレーなどもあった。お昼時ということもあってか多くの人が食べ物を求めて狭い廊下に詰めかけている。ごちゃごちゃした中で歩いていくのはけっこう大変だった。


「うわっ」

「箕坂、大丈夫か?」

「平気。ありがとう」

「箕坂さん、ごめん。押されて……」

「大丈夫」


 大沢くんが人混みに押されてよろめき、私にぶつかって転びそうになる。百田くんが支えてくれたので立て直すことが出来たけど、体格のしっかりしている百田くんでも人混みに揉まれそうだった。


「ノビ、人数分買ってきてくれ。俺らは一旦外に出とくわ」

「はいよー。女子ちゃんと守っとけよモモ!」

「ノビくんありがとう」

「たまには役立つよね」

「いつも役立ってっから!」


 廊下を端まで出て、渡り廊下のところから中庭に出る。そこも人が多かったけれど、とりあえず自販機でジュースを買って一息つくことが出来た。


「たこ焼きだけじゃお腹空くよね。百田ーパンケーキ行ったらおまけしてくれる?」

「もうすぐ当番だから、その時間に行けばトッピングとかなら」

「待ってアイスの天ぷらも気にならない?」


 マップを広げてあれこれと話し合っていると、ルリ! とミコト様の声が聞こえた。ざわめきの中でもよく通るその声が聞こえるやいなや、顔を青くした百田くんが口元を抑えてトイレ行くわと離れてしまう。ちょっと申し訳ない。


「人が多くて移動に時間がかかった。今はもう休憩か?」

「はい。皆もうごはん食べましたか?」

「いくらか買うておるところだ。向こうでそれぞれ持ち寄るということになったが」

「ルリも行きなよ。休憩終わったら教室戻ってきたらいいから」

「まだ午後の話終わってないけど」

「テキトーに決めとくって〜。あほら、たこ焼きも来たし」


 買い物を終えたノビくんがたこ焼きのパックをいくつも持ってやって来た。ミコト様に対してもちぃーすと気軽に挨拶して、五百円玉と引き換えに私にもひとパックくれる。

 ミコト様はそのフレンドリーさは気にしていないようだけれど、私との距離感が気になったようでさり気なく私の肩に手を置いた。全員が気付いたので別にさり気ない仕草ではなかったけれど、ノビくんと大沢くんを見てちょっと膨れた顔になっている。


「ルリよ、学友もそう言ってくれていることだし、共に食べようぞ」

「わかりました。じゃああとで」

「ごゆっくりい〜」

「パンケーキ買いに来て! 絶対な!」






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