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変化3

 何だかのけもの扱いが進行している気がする。


「みかちゃんありがとー。人手足りなくて困ってたんだよねー」

「うちら結構進んでるしねー。手伝うから頑張ってやってよー?」


 衣装係の進捗具合がよろしくないようで、コツコツ進めていて割と余裕のある小物係女子も手伝うことになった。百田くん達だけでも小物作業をしてても大丈夫なくらいなので別にそれは構わないんだけど、作業を頼みに来る女子があからさまに私を話題に入れないようにしている。見ていて逆に面白いくらいだった。

 裁縫道具と布のセットをニコニコと受け取ったみかぽんが衣装係を教室の外まで見送って、帰ってきてからケッと荒んだ顔になる。


「委員長らって性格悪いわー。ホラこれ。ルリのだけ全然やってない」

「ほんとだ〜ルリち嫌われてるねー」

「そんなに正直に言わないで」


 今日は彼氏とのデートがないらしいゆいちが、ケラケラ笑いながら布を選んでいる。裁縫道具の他に進捗表のコピーもあったけれど、衣装係は洋風お化け屋敷に合うおそろいのメイド風エプロンを作るようだ。ヘッドドレス、エプロンの身頃、リボン、フリルなどの項目に分かれて作った分だけチェックが入れられているけれど、私のところだけどれもチェックが入っていない。


「ウケるわ〜もううちらでめっちゃ可愛いの作ろ」

「ルリ、前から委員長に嫌われてたから」

「え、知らなかったんだけど」

「だろうと思った! めっちゃライバル視してんのにルリ全ッ然気付いてないからサイコーだったわ」


 のんさんがぽつんと言った衝撃の事実にみかぽんが爆笑する。

 クラスで女子の委員長をしている子は、確か同じ中学から進学した子である。今年までクラスが一緒になったことがないからよく知らなかったけど、女子の人間関係に精通しているみかぽん達は結構喋ったりしていた。私は好き嫌い以前の状態だったけど、気付かない間に何か気に触ることをしてしまっていたようだ。


「まー今は全体的にルリ嫌ってる子増えているよね。そーゆー集団行動すっごいキモい」

「私みかぽんが友達で良かったと思う」

「当然っしょ」


 私に対する色んな噂が、どうやら尾ひれ胸びれレースまで付いてフリフリになって広まっているらしい。もともとあんまり仲良くしている人が多いわけではないけれど、去年そこそこ喋っていてた元クラスメイトとかによそよそしくされると何だかなあという気持ちになってしまうのだった。


「ナニナニ? 女子ドロドロ?」

「ノビやかましーわ」

「あっち行っててよもう」

「早く作業すれば?」

「怖っ!!」


 女子コエーわと言っているノビくんは、その言動が女子の怖さを引き出しているのだと気付いて欲しい。百田くんが無言で頭をスパンと叩いて絵の具を渡している。大沢くんは出来上がった小物をダンボールに入れながら、ちょっと暗い顔で言った。


「あのさ、箕坂さんの噂、男子にも流れてるみたいだから……気を付けるべきかも」

「ハァ? 男子のくせに噂してる奴いるわけ?」

「や、全員じゃないけど、俺もやってないし」

「タマちっせー奴らだわほんと!」


 声が大きくてハキハキしているみかぽんが返事をすると、大人しいタイプの大沢くんはビクッと一歩下がっていた。憤慨するみかぽんに同調するように、百田くんが頷いている。


「マジでアホらしい噂聞いたりするぞ。うちの部ではやめろっつってるけど、箕坂は一応帰りとか気をつけろよ」

「うん、ありがとう」


 正義感の強い百田くんは本人のいないところでヒソヒソするようなことが嫌いなようで、ウンザリした顔だった。私に何かあってミコト様が怒ったらより大変だということもあるからかもしれない。最近は顔色を悪くしてることも少なくなってきただけに、このまま平和な生活を維持したいのは当然のことだろう。

 どうせ噂なんかみんなすぐ興味を失うだろうと思っていたし、あんまり必死になって訂正していくのも逆効果かと思って放っていおいたけれど、まだ続くようだったら先生に相談してもいいかもしれない。ミコト様にはあんまり知られたくないことだけれど、小さい足でちょんちょんと机を跳ね回っている小さな諜報員が毎日報告しているので、毎日心配顔をなだめるのが大変になってきていた。



 とりあえず余計な刺激を与えないように過ごそう。そう思って一週間ほど過ごしたあとのこと。

 2クラスの女子が合同で行う体育は、最近気まずい授業のベストスリーに入っている。少しでも面倒な雰囲気に巻き込まれないようにと思って教室ではなくトイレの個室でひとり着替えていると、数人の女子が喋りながら入ってきたのが聞こえてきた。


「聞いた? ミノサカルリの話」

「あー、エンコーしてるってやつでしょ?」

「なんか聞いたーアレマジなの? やばくない?」


 ……なぬ?!

 流石に聞き捨てならない話があって、私は思わず固まって聞き耳を立ててしまった。





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