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作者: みたにんぼー

こんなことがあったら面白いな…というのを書いてみました笑

一体、なんのために働いているのだろう。毎日同じような動作ばかり繰り返していると、時々そう思えてくる。このごろ恋愛もしていない。もっとも、この32年間の人生で彼女ができたことなどないのだが。そんな私は、とある会社の営業科に勤めている。どこにでもある、普通の会社だ。毎日決まった時刻に起床し、決まった時刻に出社する。日にもよるが、帰宅時間もだいたい変わらない。正直、今の人生に生きる価値を見いだせない。そんな生活に、私はうんざりしていた。いつでもこんな生活から抜け出したいと思っている。

ーだが。

 最近、気になる女性がいる。重田道恵という人物だ。その女性は私と同じ営業二課に勤めていて、今は時々他愛もない話をする程度の仲だ。最初、私は特にその女性に対してなんらの興味も抱いていなかったのだが、交流(とよんでいいのかもわからない)を重ねるうち、その人柄の良さに心を打たれた。高校二年生以来の感覚だった。その感情を理解するには少々時間を要したが、答えに行き着いたとき、私は人生が少し明るくなったような気がした。恋とは、いいものだ。

 そして先日、耳を傾けざるを得ない情報を入手した。重田には、今現在男がいないらしい。聞いたとき、私は一種の興奮を覚えた。これは私にとって耳寄りな情報であった。重田と付き合える自信はない。だが、今はこの感情に身を任せたかった。もしかしたら重田と付き合えるかもしれない。もしそうなれば、ピクニックや映画を見に行ったり、あんなことやそんなことができるかもしれない。そんな想像をふくらませるだけでも楽しかった。

ーそうだ。

明日、彼女に今週末の予定を聞いてみよう。私はそう思った。だめだったらだめでいい。一回、二人で何処かに行ってみたい。私はほのかな希望を胸に、その日は寝た。




 ゆっくりと目を開いた。そこにはいつもの部屋の様子とは違う光景が広がっていた。周りのものを見渡すと、右に大きなテレビ、左には大きなソファ、上を見上げると大きな絵画が飾ってあった。なにもかもが、大きく見えた。明らかに自分は今、人間でない、と私は直感から察した。では何になっているのか。考えられるとしたら、小さな虫だった。おそらく今「虫の自分」はガラスのテーブルの上にいる。下を見ると、答えが写っていた。私は、蚊になっていた。もちろんびっくりはした。だが、不思議とこの事実に抵抗する気持ちはなかった。なんたって、さっきまで自分は部屋で寝ていたんだから。これは夢に違いないと思った。試しに飛ぼうという気持ちになってみる。飛べた。羽を動かせている。私は今、宙を飛んでいる。前方に、立てかけられている一枚の写真が見えた。何かを察して、私は目を凝らして凝視した。写っていたのは、紛れもなく、重田道恵だった。私は目を見開いた。と同時に、左の方向から鼻歌が聞こえてきた。そして、水が流れ落ちる音も聞こえる。私は衝動を抑えきれなかった。どうせ夢だ、なら全力で楽しんでやろうー。そう思った。私は今出せる全速力でシャワールームを目指した。この中に、重田がいるー。そう考えると、恥ずかしながらスピードはどんどんと速くなっていっている気がした。



 ついにシャワールームらしき部屋を見つけた。鼻歌や水の流れる音はまだ聞こえる。私は興奮していた。見たい衝動に駆られていた。幸い、戸の隙間が少し空いているのが確認できた。自分が入っていっても、蚊なんだからばれるはずはない。よし、待ってろ道恵ー。私は最後の力を振り絞ってシャワールームに突撃していった。






 「急にどうしたの?あなた。びっくりしたじゃない」


 「いや、風呂場に入りそうになってる蚊がいたか ら…    

道恵のことを狙ってたんじゃないか」



 

 「あら、随分と変態な蚊さんね」



 「おかげで手が黒く汚くなっちまったよ

  道恵、寝室で待ってろ」



 「はーい」


悲しいですね。

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