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八つの大罪と七年戦争  作者: 月乃
七つの花
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第三章 第七話 罪咎と白霞を纏う森

「どうやら下の方で騒ぎが起きているようですね」

「でも根本はここじゃない、そんな気がする!」

「ええ、何処か別のとこで起きたもんがこちらにも飛び火してきたようどすえ」

「とにかく急がないと!!」

「仕方ありませんね、普段は控えるように言いつけていますが緊急事態です。ヴィヴィ!!」

「はぁ~い、うふふ、みんないっしょにふわふわ~♪」

「うわ、ちょ、なにこれ!?」

ヴィヴィがそういうと同時に一斉に俺たちの体はヴィヴィ同様宙に浮きだした。

「全く、みっともない声を出さないでください。ヴィヴィ急ぎです。不慣れな私たちよりも貴方の方が早い、一気に運んでください」

「まぁ、僕たちはともかくユウは、ね」

「うっ、ごめん」

「え~い」

「うおっ」

ヴィヴィのなんだか抜けた声とは似合わないほどの速さで一気に宙を駆けていく。

「え、うそ、ちょ、ま、はや!?ま!ぶつかる!!」

ジェットコースターどころかもはや新幹線よりも速いんじゃないかと思うほどの速度に驚いていると、前から花石の絨毯に乗っている観光客であろう人たちが猛スピードで近付いてきた。否、俺たちが近づいているのだ。ぶつかる!そう思い目をぎゅっと瞑ったが覚悟していた衝撃は来なかった。

「え……、いたくない?」

「当然でしょう、誰が我々を操っていると思っているんですか。あのヴィヴィですよ、ぶつかるはずがないでしょう」

クリスの言葉通り皆を別々に操っているのにもかかわらず寸分の狂いもなく、スピードは落とすことなく一人一人を障害物に当たらないようかわしながら駆けていく。

「す、すごい」

普段の彼女からは想像つかないその力に素直に感心する。正直ヴィヴィが国防大将だなんて信じられなかったが見直したというか、国防大将の名は伊達じゃないということを実感させられた。

「ついた」

ヴィヴィのその言葉と同時に猛スピードで動いていた身体は急停止した。

「うおっ!!う、しぬかとおもった…」

「全くこの程度で音を上げるなんて情けない…。ヴィヴィ有難うございました」

俺を気遣ってか、着地は驚くほどやさしく降ろしてくれた。

「あ、ありがとう。ヴィヴィはすごいんだね」

「えへへ~、ほめられちゃった♪うれしいねぇ、ミシェル?」

『うん、そうだね』

……相変わらず変なのは変わりないけど。

「どうしました!?一体何が起こったのです?」

はっ、そうだ、感心している場合じゃない。とりあえず何が起こったのか確かめないと。

「どうした!?無事か!?」

「クリス様!元帥様まで!!ああ、助けてください。北にある白の森で急にニュンフェーたちが暴れ始めて…!」

「あぁ、元帥様たちが来て下さった!これで安心だ!!」

「本当よ、『七つの大罪』だわ。彼らがいればもう大丈夫ね」

「あはははは…」

クリスの声が掻き消えんばかりの国民の声が俺たちを覆う。

俺はここにいていいのか?

場違いな気がして仕方がない。俺だけ蚊帳の外にいるような疎外感。当たり前だ、俺はもともとここにいるべき『人』じゃない。無力な自分がどうしようもなくみじめで情けなくて泣きたくなる。

これじゃあ『あの時』と同じだ…。

「ウ…レア……ユウグレア!!聞いているのですか!どうしたんです、急に黙り込んで」

気が付くとクリスが怪訝そうな顔で俺の名を呼んでいた。他の団員も国民たちも不思議そうな顔をしていた。

なんだろう、ものすごくデジャヴ。

でも、そのお蔭か現実に戻ってくることができた。

……まぁこれも夢なんだけど。

「いや、なんでもない。それよりさ」

「はい?」

ちょいちょい、とクリスを手招きする。今は『元帥様』である俺がこの辺の土地を知らないだなんて国民にばれたら困る。

「あの人なんて?」

「あぁ、どうやら白の森…白夜の森にニュンフェーが急に暴れだしたそうです」

「ニュンフェー?」

「森に棲んでいる妖精族ですよ。他の国からやって来る方は『ニンフ』とも呼んでいましたね」

「え、ニンフってあの!?」

「なんです?それは覚えてるんですね」

「あ、あぁ」

ニンフってよくゲームとかに出てくるキャラだよな?なんかいくら夢とはいえゲームみたいだな…

「で、そのニンフたちが白の森…?だっけか?そこで暴れてるのか?」

「ええ、普段は温厚な彼らが暴れているなんて」

「それってさぁ、絶対あいつが関係してるよね」

「ウル。あいつって…あいつ?」

ここで『あいつ』といえば“あいつ”しかいない。

「そう、“I(あいつ)”」

「あいつがここで関わってくるなんて嫌な予感しかしないネ」

「なんでここに来て急に…」

「いや、むしろあいつが今まで直接関わってこなかった方がおかしいくらいだったのです」

「何でまた…」

「何か、直接自分の手でやらねばいけないことでも出来たのかもしれませんね」

「何かって?」

「さあ?私にはアレの考えていることなんて微塵も理解できませんからね」

「…そうか」

「そんなもんうだうだ言ってたって仕方ないだろう。ほら、さっさといくぞ」

「急ぎまひょう、元帥様」

「あ、あぁ、そうだな。行こう!!」

「元帥様、どうか、どうかお願い致します…!」

そ二ンフに襲われたであろう傷を負った農夫が膝をつきながら懇願してくる。俺が『ユウグレア』さんの代わりになれるなんて思えない。でもここまで言われたらやらないわけない。代わりになんてなれなくても俺にできることをしよう。自然と答えは出ていた。

「あぁ、任せとけ!!手当は!こよりの他に手当をできる奴は!?」

「元帥様、うちが」

「でも」

「うちがやった方がはよう終わりますよ」

こよりはそういうと先程吹いていた横笛を取り始め吹き始めた。すると、美しい音色と共に見る見るうちに傷が癒えていく。

「す、すごい…こより、ありがとう!!」

「あぁ、あぁ…。こより様、ありがとうございますありがとうございます」

「いえいえ、気にせんといて?無事治ったようで安心しましたわ~」

「元帥様、皆さま…。どうかお気を付けてください」

「あぁ、ありがとう!!行こうみんな!」

その言葉に白夜の森の方向へ向かって一斉に走り出す。

あれ…?なんで俺白夜の森の方向を知っているんだ??

「国王への連絡は終わりました。王から正式に出陣要請が出ました」

「そ、そうか」

まぁ、いまはそんなことどでもいいか。

「…これで心置きなく暴れられるな」

「珍しくやる気だね」

「まぁな」

「ふぁふ、もうねむいよ~」

「ほら、ヴィヴィ頑張って」

「う~」

「ここから白夜の森までどれぐらいある!?」

「結構あるな、一つ森を抜けた先だ」

「くそ!そんなに遠いのか…!ヴィヴィ、また頼めるか!?」

「えぇ~、いいけどそろそろねむいよユウ~」

「まて、日が沈んだ今なら俺の方が早い」

本当だ、あまり気にしていなかったので気が付かなかったが城から出た時から随分時間がたっていたようでもうすっかり日が沈んでしまっている。

「そうですね、お願いできますかグライス」

「あまり好かんが…今はそんなことを言っている余裕はないからな」

そう言うとグライスはその場に立ち止まる。するとみんなも自然と足を止める。みんなが立ち止まったのを確認してグライスは大鎌を構え何やら呪文のようなものを唱え始めた。するとグライスの足元から漆黒の闇が広がる。

「うおっ、なにこれ!?」

そこから出してもらえるのを待ち望んでいたかのように一斉に幽霊たちが飛び出してくる。

「ううー、いつ見ても不気味…」

「どうしたダヨ。あ、恐いネ?ウル」

「べ、別にそういうわけじゃ…!」

いや、普通に怖いっす。はい。めっっっちゃビビった!!何あれマジ恐いなんなんだよ!

グライスのその風貌と景色とそれがなんとも言えず雰囲気を醸し出している。

「ぐ、グライスさん…、これはいったい……」

「あぁ、そうか。今のお前は見るのが初めてだったな。これは俺の能力の一つだ」

そう言うととても滑らかな動きで地面に広がる闇を斬る。グライスが刃を入れた場所から闇はぱっくりと口を開いた。何かあるのかと思い中を覗いてみたがそこにあるのは深い深い闇。首を傾げているとグライスは言葉を続ける。

「まぁとりあえずこの中に入れ」

「え!?この中に!?!?」

「あぁ」

俺が戸惑っていると他の団員は何の躊躇もなくその中に飛び込んでいった。するとその身体は闇に吸い込まれるようにして消えてしまった。

「え!ちょ、みんな!?」

「なにしてんの、ぼさっとしてないで早くおいでよ。置いてくよ」

そう言うとウルは何の躊躇いもなく飛び込み消えていった。

「ちょ、ウル!」

あとに残されたのは俺と俺が飛び込むのを待っているグライスの二人だけだ。

「大丈夫だ、安心しろ。俺がいれば出てこれるさ」

ぐ、グライスがいればって…。逆に言えばグライスがいなければ一生出てこれないってことじゃ……。

「大丈夫だよ、あんたが考えてるように一度入れば普通の人は一生出てこれないがお前がいれば出てこれるさ」

「俺がいれば?」

「あぁ、絶対破られないと思ってたんだがな。あんたにだけは破られちまった」

「俺が…」

「だから大丈夫さ。あんたは自分の力の使い方をちゃんと覚えてる。じゃなきゃ、ヴィヴィのあの容赦ない飛行に耐えられないさ」

やっぱりあれ容赦なかったんだ…。いや、まぁあれのお蔭で早く着いたし助かったんだけどさ。

「そういえばさ」

「なんだ?」

俺はふと思った疑問をグライスに投げかけてみる。

「グライスの能力って何なんだ??」

「あぁ、そのことか…」

「グライス?答えづらかったら別にいいよ」

グライスが答えずらそうに重い口を開く。

「いや平気だ」

「そう?」

「あぁ、俺の能力は簡単に言っちまうと他人の生を奪っちまう能力だ」

そう言った月明かりに照らされた彼の顔は今にも泣きそうな顔をしていた。

「グライス……」

「まぁおれは死んだ奴の魂と契約して操ることができるんだがこれはそれの籠のようなもんさ。勝手に逃げ出して悪さしない為のな」

そう言って大鎌の柄でコンコンと闇を叩いて見せた。

「かご…」

「あぁ、だからちゃんと出られるぞ。安心して飛び込め。それともまだ不安か?」

「いや、全然」

グライスの言葉だ、信じられる。それになぜだろう、なぜか俺はこの言葉を聞くのは二回目な気がする。

そんな訳、あるはずないのにな…。

意を決して飛び込んでみるとすでにそこには先に飛び込んでいった他の団員たちが待っていた。

「全く、遅いですよ。一体何をしていたんですか。一刻も早く行かなければならないというのに……」

「ほんとだよ、遅いよ。いつまで待たせる気」

「ごめんごめん」

「すーすー……♪」

「ほら、ヴィヴィ寝ちゃったじゃん!」

「嘘だろこんな短時間で寝るのか!?わー!ヴィヴィ起きろ!!」

「これで全員か」

俺の後から飛び込んできたグライスがあたりを見回して言う。

「ええ、貴方で最後です」

「それじゃあ行くか」

「お願いします」

「あ、頼んだぞグライス!」

「あぁ……、ここか…。見つけた。着いたぞ」

「え!?もう!?!?」

「あぁ」

「ですからこちらの方が早いといったでしょう。貴方がもっと早く飛び込んでいればもっと早く到着していましたがね」

「う、ごめん」

「うふふ、グライスはんのこれはなぁ、闇ん中を移動するんで飛ぶよりも早う着くんよ~。ただ、影や闇がないと闇を作れへんから使えないのが難点みたいやけどな~」

「え、でも俺らは動いてないよね?」

「闇が僕らを運んでくれてるって考えればいいんじゃない?」

「あ、そういうことか」

「せやで~」

「ほら、でるぞ」

「狩りの時間ネ」

……燐明さん、舌なめずりをしてる姿が怖いっす。

「もう、だからぼさっとしてないでよ、後がつっかえてるんだけど?」

「あ、ごめん」

「ほら時間ないんだからさっさと行く」

「はいはい……ってこれどうやって出るの?」

「はぁ…、もういい僕が先に行く。それか燐明先行って」

「行っていいノ?」

「いいでしょ、ね、ユウ?」

「え、あ、うん。どうぞ?」

なんでわざわざそんなことを聞くんだろう、さっさと出ればいいのに……

「ってなんでみんな待ってるの?」

自分から出る、といったはずのウルも燐明も口では言ったものも俺が先に動くのを待っている様子だった。

「なんで…いいはりましても」

「うふふ♪」

そう聞くと逆に首を傾げられてしまった。

「我々が我らの長であるあなたを差し置いて出られるわけがないでしょう」

「あ、そういうことか。あれでもさっきウル…」

「まぁ今のあんたはそれを知らなくて当然だからな。この中で一番言いやすいウルが言ったんだろう」

「あぁ」

「時間なかったし言うよりそっちの方が早いと思ったんだもん」

そう言ってウルは頬を膨らましてそっぽ向いてしまった。

可愛い奴だな。

今までのウルからは幼さを感じられないというかその立場からか同い年の子供たちのようなはしゃいでいるような様子は見せなかった。まだ出会って少ししか経っていないがようやく初めてウルのこういった年相応の姿を見られた気がする。

「いいよ、気にしないで。ありがとうウル」

「何笑ってるの」

「はは、ごめんごめん」

納得いかない、といった不満げな顔。

俺にも弟がいたらこんな感じなのかな。

「ほら、やっぱりここはあんたが一番に行くべきだろ」

「え、でもこれどうやって出れば…」

そう言うとグライスは先程と同じように闇を大鎌で切り裂いた。すると先程とは違い切り裂いた『穴』の中にあったのはついさっきまでいた森とは別の『(どこか)』だった。

「ここから外に出られる」

「なるほど…、じゃあ行くぞ……?」

皆の顔を見回すと、皆力強く頷き返してくれた。それだけで自然と勇気が湧いてくる。

ほんと、幸せ者だな『俺』。よし、行くか!!

意を決し『穴』を潜り抜けると、冷たい風が頬を撫でた。

「ここは……」

「ほら、『出口』の前で立ち止まらないでよ。みんな出れないでしょ」

「あぁ、悪い」

って俺さっきから謝ってばっかだな…。

「全員出たな」

グライスが確認し終え、再び大鎌の柄でコンコンと叩くと闇はグライスに向かい集まっていき、そして消えていった。

「ここが白夜の森……」

って、え、なに?『白』の森ってそういう…?あ、でも確かにそんなことも言ってたような…。ていうか、あれ……

「ナニ、此れ…」

「どうして…」

「まぁ…」

「わ~」

「なっ」

「まさかこれもあいつの仕業だというのか…!?」

目の前に広がる異様な光景に俺たちはただただ言葉を失うしかなかった。


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