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八つの大罪と七年戦争  作者: 月乃
想い出の花園
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第五話 謁見と虚ろな面影

一体何がどうなってこうなったんだ。頭が全くと言っていいほどついていかない。

そんな置いてけぼりの俺をよそにクリスはテキパキと指示を出し、皆で手短に内容を打ち合わせして、いざ王様に謁見することになった。

この扉の向こうに王様がいるのか…。なんだか緊張してきた。

思わず固唾をのむ。とても厚そうな扉とはいえたった一枚の壁だから先程の会話が聞こえていないか、打ち合わせ通り話せるか心配で仕方がない。

クリスに言われた通り「王よ」と扉に向かって言うと、何処かで聞いたことのあるようなよく通るずっしりとした重みのある声で短く「入れ」と返って来た。こんな部厚そうな扉を隔てているのによく声が聞こえるな?と思っているとそれに気が付いたのかグライスが持っている大鎌で他の人には気づかれないように声の在処を教えてくれた。どうやら彫刻の動物が持っている花石から声が出ているようだ。

光っているあの目はもしかして監視カメラみたいな働きでもしてんのかな?てかそんな前で作戦会議して平気だったのか…

「失礼致します」

そう言うと、扉の左右に立っている兵士が扉を開けてくれた。扉の向こうから溢れ出る白い柔らかな光を全身に浴びると、そこに広がっていたのはとても広い空間を暖かく照らす黄金のシャンデリアと真っ直ぐ続く深紅の絨毯だった。なるほど、先程の眩しさはどうやら王の間にあるテラス付きの大きな窓から注がれるもののようだった。ここからでは顔をちゃんと認識できるか危ういほど遠くにいる王まで続く赤い絨毯の左右には先程に似た兵士やそれよりも重装備の者、またそれとは正反対に高貴な身なりをした者たちが王を守るようにしてそこにいた。

うう、にしてもこんなにいろんな人が見てるなんて…。ただでさえ授業や集会で前に出て発表したり喋ったりするだけでも緊張するのに…それよりも遥かに緊張する……。こんなに中に人がいるなんて聞いてないんだけど!?うう、でも俺は今『ラゲナリア』の、皆の長なんだ…。俺のせいでこんなに良くしてくれている皆に恥を晒させられない。頑張れ俺!バイトで培ってきたコミュ力を活かせ!!

自分を鼓舞し深呼吸をするとなんだかいけるような気がしてきた。

長い絨毯の上を歩き王の元へ行くと、やはりそこには見たことのある顔がそこにいた。

「あなたは……」

思わずそう呟くと、見たことのあるその顔は訝しげに眉をひそめた。

うわっ!いけね、えっとクリスに言われたのは確かこう膝をついて姿勢を正して声は張るようにして……

「お、王よ、王国軍特殊軍隊『七つ(ラゲ)の(ナ)大罪(リア)』只今帰還致しました」

「……よくぞ無事に戻ってきてくれた。して…、早速だが此度の遠征はどうだったか?」

「はっ、そちらのご報告なのですが、私は群れからはぐれ暴走したフランマドラゴンの駆逐のため一時軍を離れておりましたので、一時的に私の代理で指揮を執っていた総大将のバーナードよりご報告をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「うむ、許可しよう」

「有難うございます」

「では、元帥ユウグレアに代わり私総大将バーナードよりご報告をさせて頂きます」

クリスは一礼してからそういうと予定通り報告を始めた。

お、終わった…。良かった……、まだすべてが終わっていないとはいえ自分の役目の殆どが無事終わり安堵した。にしても…、まさかとは思っていたけど自分が迷い込んだ『夢』の中での自分の王が昨日夢に出てきたあの『王』だったなんて……。とても偶然とは思えない。

もしかしてあれは正夢?あ、夢の中のことなのに正夢は変か。

でも『あれ』が起こりうる可能性はなくはない。“I”が出てきた時点で薄々そうなのかなとは思っていたけどまさか本当に同じ『世界』に二度も入り込むなんて…。昨日見たあの嫌な光景が鮮明に浮かぶ。あの真っ赤な光景を思い出すとなんだか気分が悪くなってきた。

「…ちょっと、どうしたの。しっかりしてよね」

よほど顔色が悪かったのか、隣にいたウルが声を掛けてきた。

「え、あ、うん。大丈夫だよ、ありがとう」

「ならちゃんと『元帥様』らしくシャキッとしてよね」

「うん、ごめん」

そういいながらも心配してくれているウルをかわいいなぁなんて思いながら見ていると報告中のクリスから睨みが飛んできた。

目敏い…。

そうこうしているうちに一通り報告を終えたのかクリスが王に向かって一礼して俺に話を繋ぐ。

予定通り俺の最後の仕事がやってきた。ええと、さっきみたくこうして…。

「王よ、これにて『ラゲナリア』からのご報告は以上になります。城外及び対象地域周辺を探索してみたところ特に異常はございませんでした。警備の方も万全かと」

……て、あれ?今俺なんて言った?警備がなんて?そんなものは打ち合わせした内容には入っていなかったはずだ。何も考えずに自然となれたように口から出た…?もしかして本当に俺は……。

クリスたちは自分よりも後ろにいるので表情は見えないがきっと心底驚いているだろう。

「そうか…、ご苦労。よくやってくれたな、今日はゆっくりと休め」

「はっ、有難きお言葉」

「下がりなさい」

「失礼致します」

戸惑いながらもそう答え、来た道を帰っていく。相変わらず真っ赤な道の左右には様々な格好をした沢山の人たちが控えている。その長い道が来た時よりもはるかに長く感じられた。

あれは一体…

考え込んでいるとすぐ後ろで大きな音がする。その大きな音に驚いて振り返ると先程の大きな扉が閉まっていた。もう見えるはずがないこの先にいる王の顔が浮かぶ。

本当に予想外のことばかりだな。

「ちょっと、いつまでぼーっと扉見てるの。なんだか気持ち悪いよ」

「こら、ウル。いくら扉が閉まっているとはいえ王の御前ですよ」

「ちぇ」

「まぁとにかく移動するか」

「そうですね。それにしてもまぁ、驚きましたね」

「ほんまどす~、いきなり元帥様、打ち合わせにはなかったんもんもいつも通り報告しはるんやもん。一瞬、思い出したんかなぁ思いましたよ」

「ビックリヨ、実はもう思い出したりしてるノカ?」

「あはは…、残念ながら」

期待に満ちたみんなの目が痛くてどうも直視できない。

「そうですか…」

「まぁ、そう焦らずともいいだろう。しかしまぁ、なんで急にお前は…」

「うふふ、からだはあんがいおぼえてるのかもねぇ♪ねぇ、ミシェル?」

「そ、そうなのかな?何というか自然と出てきたというか、無意識だったというか。正直俺も驚いてるんだよね」

「そうなるとヴィヴィの線が濃厚ですね」

「んー、そうかな?それにしてはいくらなんでも忘れているとはいえ人が違い過ぎるというか、こんなだったかなぁ感が半端ないんだけど」

「まぁ確かに」

「せやなぁ」

「ええ、そんなに!?」

いやまぁ、確かに別人のはずだから違うのは当たり前なんだけど。

「うん、だってユウはそんな頼りなさそうじゃないしヘタレじゃないし弱そうじゃないもん」

ぐふぉっ…、これはまたダメージのでかいことを……。

「こらウル、事実でもそういうことは口に出していってはいけません」

クリス…、貴様まで裏切るのか……!!

「そうやで、いくら事実でも元帥様が可哀想やろ?」

こ、こより、君まで…!ダメだ、俺のライフはもうゼロよ。

「ふふふ~♪でも~、ユウ。そんなクセはなかったよね~」

「クセ?」

相変わらず宙に浮きながらミシェルと人形遊びをしているヴィヴィが何気なしに呟く。俺がそう聞き返すとヴィヴィはすでにミシェルに夢中のようで俺の話なんてまるで聞いてなどいないようだった。

これで本当に国防大将だなんて…、未だに信じがたいな。

「でもそうですね、確かに今の貴方は今までしていなかった仕草をこれまでに何回かしていますね」

「そうだっけ?」

「うん。ほら、いまもしてるよ」

「え、うそ」

「ほら、それだよそれ。その首筋を掻く癖」

「え、あ、ほんとだ…。全然気が付かなかった……」

まさかそんな癖が自分にあるだなんて。思わず自分の手をまじまじと見る。そういえば随分昔に叶にも同じことを言われた気がしなくもない。

叶たち、今どうしてるかな。

「まぁ、自分の癖やなんてそうそう気が付くものでもありまへんしなぁ」

「そうだね、ってうわぁ!ここは!?どうしたんだこれ!?!?」

いきなり異世界に飛ばされ、心細く思っているのが伝わったのかこよりが声を掛けてくれる。こよりの気遣いはくすぐったくもあったが何より嬉しかった。そんな俺に、もっと元気になるものがあると言って微笑んだ。何のことだろうと思っていると、開けた場所に出たからだろうか、突然風が吹き付けてくる。咄嗟に前で構えた腕をゆっくりと降ろすと、いきなり目の前に広がった景色に、俺は思わず声を上げずにはいられなかった。


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