表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八つの大罪と七年戦争  作者: 月乃
花ひらく蕾
16/18

第十五話 陰と陽

「任せたぞ」

 そうハクに言って再び走り出してからいったいどれほどの時間が経ったのだろう。もともとアルストロメリアが広いからか城にたどり着くまでに随分と時間がたってしまった気がする。やっとの思いで城へと渡るための橋の目の前までやってきた。ここにたどり着くまで何度も“虚”に襲われ、その度に仲間が先に行けとその場に残り俺たちを先へと進めさせてくれた。途中まで一緒についてきてくれていたこよりはまだ生き残っていた者たちの治癒と非難をすると言って途中で別れた。

「ようやく、ですね」

「やっとだ~」

そんなこんなでここまで残って一緒についてきてくれたのはクリスとヴィヴィだけとなった。

みんな倒し次第後から追いつくって言ってたけど本当に大丈夫かな…。

「大丈夫ですよ」

「え?」

「皆、貴方が集めた人材です。そう簡単にへばったりしませんよ」

一番長く『ユウグレア』さんの傍にいただけあって、なんでもお見通しなんだな。

精霊樹の白い花びらにそっと触れる。するとどことなく力が漲ってくるような気がした。気持ちを切り替え、クリスの方を向くとこの最悪な事態もどうにかなってしまいそうな気がしてきた。

「そうだな。悪い、行こうか」

「ユウ、こわいかおしてるよ~。りらっくすりらっくす~」

「あ、ああ。そうだな」

そんなに俺は緊張してるのか…。まぁ、ヴィヴィにはもっと緊張感持っててほしいんだけどな……。

「それにしても…一段と酷いですね、被害も瘴気も」

「ああ」

 クリスの言う通り、城に近づけば近づくほどそれは酷くなっていた。そして、その城はどこよりも被害が大きく、瘴気が濃かった。Iの“虚”によってやられたのだろうか、城は半壊状態であちこちに兵士や役人たちの亡骸が転がっていた。辺りに立ち込める血の匂いが嫌でも現実を突きつけてくる。日常生活でこんなにも血の匂いを嗅ぐことないので余計に気分が悪くなってくる。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、それよりも王を探さないと」

「ええ、気配も一番強く感じますし恐らく王の間にいらっしゃるのではないかと…」

「王の間…、昼間王に謁見したところか」

「そうだよ~、こっち」

ヴィヴィにそう言われ、ついていくも早速溢れかえる“虚”に行く手を阻まれてしまった。

「まずい、クリス……」

どうにかできるか?そう言おうとした時だった。

「む~、わたしのじゃまをするなんて……かわいくない!!」

ヴィヴィが突然そういうと、ヴィヴィの背後、両掌、左右上下四方八方にヴィヴィの瞳に宿る光と同じ紫色の魔法陣が現れた。

あ、あの、ヴィヴィさん?

「まずいですね…」

「え?」

そういうとクリスは俺を脇に抱え空高く飛んだ。それとほぼ同時に魔法陣から紫色の光がまるで大砲のように放たれた。それはけたたましい音を立て城ごと“虚”を一瞬で倒してしまった。

「しゅ、瞬殺…」

「はぁ…修復費が……」

ってそれどころじゃないだろ!?こ、このまま城ごと壊れなきゃいいけど…。

「うふふ、これでとおりやすくなったね~?」

「ア、ウン、ソウダネ」

ヴィヴィが満面の笑みを浮かべながら言ってくる。

でも確かにこれなら探しやすくなったのか…?

夢では王が殺されたのはどこか地下室のような場所だった。もしあれが正夢…いや、予知だとしたらそこに行く前にIを見つけ止められれば王を殺されずに済む。

一刻も早く探さないと…。時間がない。

 俺はクリスたちと共に王の間を目指し走るも、途中何度も“虚”に襲われなかなか前に進めない。やっとの思いで王の間の扉の前にたどり着く。

あいつはもうすでにここにいる…。

それを証明するかのように、扉の横には王を守ろうとし無残にも命を落とした兵士たちが横たわっていた。

「行くぞ」

震える声をどうにか抑えながらまるでおまじないをするかのようにそう呟く。背筋が凍るような瘴気が溢れ出し、扉越しでもIがいるのが分かる。扉に手を掛けると、とても昼間あんなに厳重だった重たい扉とは思えないほどすんなりと開いた。扉の向こうには遠い玉座の目の前に見覚えのある後姿が見えた。

「I……」

俺がそう呟くと、真っ黒な背中に一輪の真っ赤なリコリスを背負ったそいつがゆっくりと振り返った。

「まさか…」

あの背中には見覚えがある。間違いない、あの夢の最後に見た『あの背中』だ。

それがどういう意味をさしているのか、分かりたくもなかった。

間に合わなかった…?

「やぁ、待ちくたびれたよユウグレア。あぁ、いや、今は『(ゆう)』だったかな?」

「I、貴様…!!」

「君には話しかけていないんだ、黙っていてくれるかな」

そういうとIは剣を振りかざした。剣から“虚”と共に青白い光が混ざり合いながらクリスめがけて飛んでいく。咄嗟に刀を抜き、受け止めるもその力に押し飛ばされてしまった。

「クリス!!」

「かはっ…、くそ……!」

瓦礫の下から起き上がったクリスは血を吐き捨てながらそう言うも立ち上がるのすら苦しそうだった。もとより俺を庇いながらここまで来たクリスはすでに相当な深手を負っていたはずだ。

「……ヴィヴィ、クリスをこよりのところまで連れていけ」

「わかった」

「な、わたしはまだ戦えます!」

そう言いながらも血を吐く彼の姿はとても痛々しかった。

ごめんな、クリス…。

「ダメだ、行け、ヴィヴィ」

「ユウグレア!!」

「元気になってかっこよく俺を助けに来てくれるんだろ?俺の右腕さん」

「っ、」

「わかったら早く行け!」

「っ、しかし」

「信じてるぞ、クリス」

「……」

「ヴィヴィ、行け」

 クリスが黙り込むのを見て俺は再度ヴィヴィに命令する。ヴィヴィはこくりと頷くと、人差し指でくるっと小さく円を描いた。すると、ヴィヴィの持っていたミシェルが巨大化しクリスを持ち上げる。

「これ…」

そういうとヴィヴィは一体の人形を俺に向かって差し出した。

「これは…?」

「おまもり」

ヴィヴィがいつも連れ歩いているような動物ものではなく人型の人形はどことなく俺に似ているようにも感じる。

「ありがとう」

「うん、ふふ♪」

そう言いながら微笑むヴィヴィを見て背筋が凍るような恐怖を感じる。

「っ…!?」

なんなんだ今の。

____たのしみにしてるね♪

「え?」

「うふふ、じゃぁ、いってくるね~……ばいばい、ユウグレア」

俺がその正体を見つけ出す前にヴィヴィは意味深な言葉を残しクリスを連れ、半壊し空が見えてしまっている王の間からするりと抜け飛んでいてしまった。

何だったんだ…?怖くて目も合わせられなかった……。

「そろそろ長い無駄話も終わったか?」

後ろからIがクスクス笑いながら俺に話しかける。二人しかいないこの空間ではIの笑い声が反芻し余計“I”という存在が不気味に感じる。

「お前……王を殺ったのか?」

「ああ、お前が来るのが遅いからね。待ちくたびれてしまったよ」

「く、」

やっぱり俺が駆け付けるのが遅かったから…。

「あぁ、後悔しているのかい?」

未だIの顔は見えない。しかし遠目からでもIが笑っているのが分かる。

「何がおかしい!!」

「お前はどうせ…」

「え?」

「お前はどうせ、誰も助けられない」

今までのどのIの声とも違う、心臓を鷲掴みされたような冷たく重い声が俺を駆け抜ける。

「ど、どういうことだ…?」

「言葉通りの意味だよ。俺のことを思い出せないような奴にこの世界どころか自分の仲間すら救えない」

「そんなことはない!!」

「何故だ?何故お前はそうだと言い切れる?現に自分の主ですら守れなかったというのに」

「それは…」

「お前は弱い」

「そんなことわかってる!でも!!」

「でも、仲間がいる、か?」

Iは俺の言葉を遮ると、俺が言おうとした言葉の続きを口にした。

「ああそうだ」

「くだらない」

「そんなことはない!」

「……。この世界の王の定義とは何だと思う?」

Iはこれ以上続けても無駄だと感じたのか、唐突に別の話をし始めた。

「定義?」

「ああ」

俺は戸惑いながらもIの質問の答えを探す。

この世界は確か強いものが上に立つんだってグライスがいってたな…。

「強くあること…」

であってるのか…?

「では問う。強さとは一体何か?」

「つよさ……」

「権力持っていることか?相手に有無を言わさずねじ伏せることのできる圧倒的力か?それとも人が作り出した自然のものではない『何か』を振りかざし世界を征服することか?」

「それは…」

「俺はそんな、『強さ』を履き違えて周りを殺す奴を許さない」

「……」

「ふっ、そんなにぼーっとしていていいのかい?この国の王は殺った。他の国の王も殺しに行くかもしれないぞ?ああ、この国をこのまま私のものにしてから殺りに行くか…。その方が効率が良さそうだ。どちらにせよ、お前は私を止めないといけないんじゃないのか?」

先程までの重苦しい口調とは一転し、元の軽い口調に余計に恐怖を覚える。

でもそうだ、こんなところで怯えて立ち止まってるわけにはいかないんだ!

「そんなことさせない…!」

お願いだ、もう一度俺に皆を守る力を貸してくれ…!

そう強く願うと先程よりも強く力が沸き上がってくる。光が体の中からあふれ出し、辺りを暖かく照らす。心地よい熱さに身を委ね、強くイメージする。すると、左手に確かな重みを感じる。

「よし!!」

「ほう…、こんなにも早く習得してくるとは……流石だね」

顎に手を置き、首をかしげるIをしっかりと見据える。

余裕ぶりやがって…。俺がやらないと…!少しだけ力を貸してくれよ。

腰に下げたヴィヴィが貸してくれた人形を撫でる。すると、心なしか不思議と力が湧いてくる気がした。

先手必勝!!

そう思いIとの間合いを一気に詰める。

嘘だろ!?

『ユウグレア』さんの体だからなのか、はたまたこの世界だからなのかはわからないが、軽く地面を蹴っただけで一気にIの元まで辿りついてしまった。

ええい、もうどうにでもなれ!!

そう思い思いっきり剣を振りかざすが、いとも簡単に受け流されてしまった。

「無知の状態から武器を出せるようになるとは賞賛に値しますが…」

「うわぁっ!?」

「剣の方は全然ダメですね。あの『ユウグレア』だとは思えないほどに」

Iの一振りは想像以上に重く受け止めきれず吹っ飛ばされてしまった。

「今のあの光……」

「ああ、これですか?」

そう言ってIは剣に青白く冷たい光を纏わせる。それは先程クリスと俺を吹っ飛ばしたときに放ったものと同じものだった。

この感じ…どこかで……。

「まさか…」

一度気が付いてしまえばそれは余計にそう感じてしまう。その光の既視感は間違いなく自分のそれと同じものだった。

「ふふ、なにもこの力を持つのは貴方だけではないのですよ?」

剣を携え不敵に笑うその姿に足が竦む。

「いや、違う…」

「違う、とは?」

「こんなに…冷たくなんて、ない」

そう、Iのその光は氷のように冷たく、どこか寂しさを感じさせた。

まるでIそのものみたいだ。

「まぁ、私のこの力はお前のそれが『アカの明星の力』というのであれば、さしずめ『アオの明星の力』といったところでしょうしね。まるっきり同じというわけでもないので。陽があれば陰もあるってね」

「アオの…」

「たかが『アカの明星の力』を使えるというだけど私に勝てるなんて思わないでください」

「ぐ…」

確かにそうだ。戦闘経験なんてないに等しい俺の方が明らかに下。どうすれば勝てる!?

そう言う間にも今度はIの方から間合いを詰められ一方的に攻撃を受けるばかりだ。

「そんな守ってばかりじゃ私は倒せないぞ」

「言われなくても、わかってる…よ!!」

強がってはみるものも、実際Iの攻撃をかわすので精一杯だ。それに比べてIは余裕の笑みを浮かべている。

このままじゃまずい。

このままでは一方的に体力は削られ、攻撃もかわしきれなくなるだろう。

どうすれば!?

____信じろ

またあの声!?信じるったっていったい何を!?

____俺を…、お前が勝てる未来を信じろ

「俺が勝てる…」

「無駄だ。お前はここで死に、お前の仲間もあとからお前の後を追ってやって来るさ」

「それだけは…絶対にさせない!」

守らなきゃ、あいつらを。ここで俺が死んだらいったい誰があいつらを守る?

「みんなの為にも、俺は死ねない!!」

たった七日間。たった七日間しかあいつらと一緒に過ごせてないが、それでも彼らは『記憶を失くしたユウグレア』として優しくしてくれた。俺が怖がり恐れていた部分も溶かしていってくれたようにも思える。もしかしたらあいつらは俺が『ユウグレア』でないことに本当は気付いていたのかもしれない。それでも、ちゃんと何でもないふりをして、俺個人を見てくれていた。俺にとってはたった七日間でもあいつらにとっての『ユウグレア(おれ)』との思い出はきっとそんなものじゃない。それを俺がここで壊させてはいけない。何としてでも守らないと。そう強く思った時だった。

「な、」

身体から溢れ出ていた光が一層強く光り、覚えのない光景が走馬灯のようにいくつもいくつも頭の中を駆け抜ける。

これは……『ユウグレア』さんの思い出?

団員たちと初めて出会ったとき、その彼らと協力して倒した数々の敵、旅の思い出。そのどれもが鮮明なものとなって溢れかえる。それがどんどん力へと変わっていき、俺に自信を与える。

分かる…。今ならどう剣を扱って、どうやって戦えばいいのか。

彼の思い出が確かな経験となり、俺に力を貸してくれる。

これなら…!

剣と剣がぶつかり合い甲高い金属音を鳴らす。

「ほう、少しはましになったか」

「防衛戦はもう終わりだ!!」

「そのようですね」

息をつく暇もなく剣を交える。

わかる、次は右、下。次は大味な左上!!

「流石は最強の名を欲しいままにするだけはありますね、『七つ(ラゲ)の(ナ)大罪(リア)』元帥、『傲慢の罪』ユウグレア!!」

なんかそれ改めて聞くと恥ずかしい!

「ぐ…」

「く…」

お互いの渾身の力をぶつけ合い、はじけ飛ぶ。二つの明星の力が混じり合い凄まじい衝撃が生まれる。

ほぼ互角…これじゃあきりがない!

剣を交えるうちに徐々に慣れてきて最初はぎこちなかった動きもなんとかそれっぽくはなっている。しかし、あくまでそれは『ユウグレア』さんの強さで押し切っているようなもの。技術などではとてもじゃないが追いつけそうになかった。

そりゃ一朝一夕じゃどうにもならないよな…!

「はぁ、はぁ…」

「もうお疲れかな?」

「まだまだぁ!!」

強がっては見たけどこのままじゃまた攻防戦に逆戻りだ…、どうしたら!?

____俺を使え、夢

使うたってどうしたらいいんだよ!!

半ば自暴自棄気味に心の中で悪態づくと鮮明なイメージが浮かんできた。クリス、燐明、ウルとハク、こより、ヴィヴィ、グライス。こいつらのためにも絶対に負けられない!

するとその思いに応えるかのように大きな魔法陣が足元に浮かび上がった。

「な、なんだこれ!?」

眩しいぐらいの魔法陣が俺の体を覆うようにして何層にもなって現れる。腕、胴、足。それらに現れた魔法陣により、今までよりはるかに強い力を出せそうな気がする。

____そのまま押し切れ!!

身体の底から溢れかえる力を剣に注ぐ。剣全体を覆っていた光が薄くなり、その分切っ先に、思わず目を瞑ってしまいそうなほどの眩い光が集まる。

これなら…!!

「オッラアアアアアアアアアアア!!」

渾身の力をこめて思いっきり剣を振りかざす。それは確かにIの剣の重みを感じ、押し切った手ごたえを感じた。けたたましい音と共にIが床を突き破り落ちていく。崩れ落ちる瓦礫と共にあがった粉塵のせいで周りが何も見えない。

「やったか!?」

瓦礫が崩れ落ちる音以外は驚くほど何も聞こえなかった。

「やった、のか…?」

返事はいくら待っても返ってこない。

これでようやく、長い夜が終わった…。

訪れた静寂に安堵してしまったのがいけなかった。安堵するのを嘲笑うかのように黒い影が俺を覆う。

「な!?」

瞬間的に影が振り下ろした剣を受け止めるも、咄嗟の行動だったのでその重い一撃を受け止めるには完璧と言える体勢ではなかった。

「甘く見ないでもらおうか」

「ぐあっ!」

耐え切れずそのままの勢いのまま、後方へとふっ飛ばされる。背中を強打し息が止まる。

「く、……がはっがは…はぁ、はぁ…」

咽かえりながらも必死にIの姿を探す。

くそ…、全然前が見えない。あいつは…?

朧げな意識を必死に覚醒させる。目の前にいるそいつも俺と同様にボロボロになりつつもそこに立っていた。

「これで終わりだ」

Iは短くそう呟いたかと思うと、ふらりとその身体を揺らす。

消えた!?違う、来る!

そう思った直後、咄嗟に構えた剣にずっしりと重みを感じる。

「ぐあっ!!」

再び体勢を崩した俺を見たIはにやりと笑い、剣を構えた。その剣は青白い光を纏い始めると、徐々にその切っ先に光を集め始めた。

「同じ……」

それは俺が先程Iに対してした攻撃とまったく同じものだった。

「終わりだ」

そう言うとIは剣を振りかざした。

間に合わない…!

俺も剣に今あるだけのありったけの力を注ぐが、とてもじゃないが間に合いそうになかった。

ごめん、みんな…守れなくて……せめて、皆だけでも助けたかった。

皆だけでも助かりますように、そう強く願い俺は来る衝撃を覚悟して目を瞑った。

案外あっけなかったなぁ、俺の人生。夢の中で死んだらどうなるのかな?現実の俺は消えるのか?ああ、でも、最後に皆と旅が出来て、面白い『夢』が見れて、よかったなぁ…。

「くっ!?」

しかし俺を待ち受けていたのは死ではなく、驚きに満ちた声だった。

あれ?痛くない…?

恐る恐る目を開いてみると、そこには思いがけない光景が広がっていた。

「な、これヴィヴィの!?」

そこには先程まで俺の腰に下がっていたはずの、ヴィヴィから預かった人形が俺を庇うようにして浮いていた。淡い橙色の光を放つそいつはIの剣を受け止めていた。

「ふっ、神も粋なことをするものだな」

神?一体何のことだ?いや、でも今なら…!

____行け、夢。これでお前も…

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

剣を持つ手に力を込め、思いっきり下から剣を振り上げる。耳を劈く金属音と共にIの持っていた剣は吹っ飛び、武器を失くしたIはなす術もなく俺の会心の一撃をもろに受けてしまった。否、俺の攻撃を受け入れたのかもしれない。

パリン

え、パリン?

思いがけない音にはっと顔を見上げると、ガラスのようにひび割れたIがそこにいた。

「嘘…だ……」

下から上に振り上げた剣により初めて見たIのその顔を見て俺は驚きを隠せずにいた。そう、それは俺の良く知る人物に似ていたのだ。

「鏡…」

そう思わせるほどには『俺』にそっくりだったのだ。目も、口元も、口の横下にあるほくろも、見間違えるはずのない毎朝洗面所で見る、他でもない俺の顔そのものだったのだ。

「さようなら、俺…」

鏡という表現がぴったり当てはまるかのように、Iはひび割れ、ボロボロと零れ落ちていく。

「な、待って!!!」

咄嗟に向かって伸ばした手がIの欠片に触れると、Iの走馬灯が俺の頭の中に駆け抜けていった。



ここまでお読み頂き有難うございます、作者の月乃です☽

成人式が先日行われましたね。二十歳になられた方はおめでとうございます^^

二十歳、よく自由と引き換えに責任を負うと聞きますがそれでもやっぱり憧れますね。当然、早く大人になりたいという人もいれば大人になりたくないという方もいますよね。皆さんはどうですか?また、すでに世人されている方はどうでしたか?私はやっぱり早く大人になりたいですね。

…まぁ、その前に受験という一つの壁を乗り越えなければならないのですが……。明日はセンター試験ですね……。とっても気が重いです。大学進学を目指して明日受験する方は一緒に頑張りましょう!

それではまた☽


月乃 Twitter【@tsuki_Lirika508】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ