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八つの大罪と七年戦争  作者: 月乃
花ひらく蕾
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第五章 第十三話 開花と虚飾

 今なら、武器も無事出せた今ならいける気がする。何の根拠もないが、先程とは明らかに何か違う力が沸き上がっている。

さっき、見たことない沢山のイメージがなだれ込んできてから体の奥から熱過ぎるくらいの力が沸き上がってくる…!でも不思議だ、心地いい。とても安心する。子の力ならこいつらをやっつけられるかもしれない!!

「わかりました、援護します!」

「ぶちかますアル!」

そういうと、クリスは先程避けながらも円状にケルベロスたちを囲うようにして張っていた呪符の力を解放した。すると、クリスの鬼火の色と同じ色の青白い炎が呪符の軌跡通りに俺たちを閉じ込める空高く燃え盛る炎柱と姿を変えた。そこに燐明が炎を纏わせた双剣を渾身の力で振り下ろすと、円の中心から広がるようにして大きな窪みができる。その衝撃波に耐え切れず体勢を崩したケルベロスたちが次々に穴に落ちていく。

これなら、全員纏めてぶっ倒せるかも…!

背中がとても熱い。驚くことに何と俺の背中にもちゃんと『罪の花石』が埋め込まれていたのだ。

これが二人の言ってた魔力を花石に注ぐってことなのかな?でも、これなら…。

いける、そう確信した俺は溢れ出てくる力を剣に注ぐ。

一点に…、一点に注ぐようにして…。

二人に言っていたことを必死に思い出す。二人がいる、その安心感で俺は武器に力を注ぐことだけに集中出来る。

まだだ、まだいける…。もっと力を注いで…!

「今だ!」

これなら!!

実際はどれぐらい飛んだのかよく分からない。もう無我夢中だった。ただ必死に、倒さなきゃ、二人を守らなきゃという思いで地面を思い切り蹴り上げる。

「いっけえええええええええええ!!!」

重すぎるぐらいの剣も軽く感じた。大きく振りかぶった剣は確実に何かを捕らえ、そして剣に注ぎ込んだ膨大すぎる力が一気にあふれかえり爆発した。先程よりもはるかに眩しく温かい光に森中が包まれる。あまりの爆風の強さに耐え切れず、俺の足は地面から離れてしまう。それからはあっという間だった。俺の体は抵抗することすら許されず、宙に投げ出され遠く彼方へ飛んで…

「ぐっ、」

「くぅっ」

いくはずだった。しかしそれよりも早く俺の両腕を誰かが引っ張った。誰か、そんなのは分かりきっていることだ。

「クリス!燐明!!」

閃光が収まるよりも早く叫ぶ。すると、それに応えるようにして聞きなれた声が聞こえてくる。

「全く、本当に貴方という人は油断も隙も無い」

「男ナラこの程度耐えるネ」

「あはは、ごめん!」

「にしても…」

「やったか!?」

「どうやら無事皆倒せたみたいですね…」

徐々に光も収まり元の視界が戻ってくる。すると、つい先程まで俺たちを囲うようにしていた沢山のケルベロスの姿は跡形もなく消え失せ、代わりに赤黒い種のようなものがそれと同じ数だけ転がっていた。

「よ、よかったぁぁぁぁぁぁぁ」

「とりあえず一旦はお疲れさまです。流石ですね、ユウ」

「アハハ、ありがとう…。二人のおかげだよ」

「当然ネ」

『アレアレちょっと旦那ァ、俺様のこと忘れてネェ?』

「ああ、ごめんごめん。饞鬼もありがとう」

『とぉうぜんだよナァ!?ギヒ、ギヒヒヒヒ』

「何言ってるネ、今回お前何もしてないネ」

『ヒッドイ、姉さぁん。そんなコタァないでしょう?ネェ??』

「五月蝿いヨ」

『つれないッスネェ』

「あはは、にしてもこれなんだろう?なんかドクドクいってて気持ち悪いな?」

全力を振り絞ったからか全身の力が抜け、膝がガクガク震えてしまっている。クリスの手を借り何とか立ち上がり、ようやくの思いで一つ種を手に取り見てみると、それはまるで心臓のように一定の速さでドクドクと大小に動いていた。

「これが“虚”の核です。と言っても、もう何の力を持たない抜け殻のようなものですけどね。直に灰となるでしょう」

クリスのその言葉が合図だったかのように種が一斉に灰になっていく。俺の掌のそれも例外ではなくさらさらと灰になり風によって攫われてしまった。

こいつらはIによって作られたものだとしてもなんだか切ないな…。

「なぁ、クリス、燐明……って、おい!クリス!?燐明!?」

なぁこれって、そう聞こうと思い後ろを振り向くとそこにいるはずの二人が事然と姿を消してしまったのだ。

「おい!ふたりとも!どこだよ!?」

二人の代わりに目の前に現れたのはあたり一面覆い隠すほどの真っ白な霧、霧、霧。どこを見渡してもほんの少し先すらも見えないこの空間で二人の姿を見つけるのはほぼ不可能だった。

「おい!二人とも!!いたら返事してくれ!!くそ!一体何の冗談なんだ!?」

____助けて…

「え?」

か細く、聴きとるのも困難な声が聞こえる気がする。

あいつとはまた別のだれか…?

___助けて…お願い、助けて……

聞こえる!確かに聞こえる!それにさっきよりも強く!!

「どこだ!?どこにいる!?!?」

その声はとても弱っており今にも儚く散ってしまいそうだった。

早く助けないと…。

でも、どこに行けばいいのかこの霧の中じゃ全く見当もつかない。声のする方向を辿ろうにも小さすぎてどこから呼んでいるのかもわからない。

一体どうすれば…。

すると、まるでこっちだと言うように、声と同じぐらい頼りないか細い淡いピンク色の光が霧の向こうから照らされる。

ついていけばいいのか…?でもいくらなんでも怪しすぎじゃ…。

すると、ついて来いと言わんばかりにその光は俺の足元を何度も照らす。

「はいはい、わかったよ。ついていけばいいんだろ」

半ば色々と諦めながらその光についていくようにして霧の中を進む。しかし進めど進めど辺りは一面霧に覆われ景色が変わらない。本当にこれは進んでいるのかと不安になり立ち止まってみると、先程のように俺の足元を何度も照らす。

「わかったわかったよ」

それにしてもいったいどれほど進んだのだろうか?そしていったいどれほどの時間こうやって歩き続けているのだろうか?もう何もかもが分からなくなっていきどんどん不安に駆り立てられる。

「おい!どこまで進めばいいんだよ!?」

…返事はない、か。はぁ、もうここどこだよ…。二人とも心配してるかな、というかどこにいるんだ?早く精霊樹を探して助けてやんなきゃなのに…。でもこっちも気になるし……。

「って、うお!?な、なんだ!?」

そんなことを考えていると突然突風が吹き付けた。咄嗟に顔を覆った腕をどけるとそこには見たこともない光景が広がっていた。

先程までの霧とは打って変わって、そこにはとてもきれいな花が咲き誇る、秘密の花園と呼ぶにふさわしい景色が広がっていた。…はずだった。

「なんだよ、これ…」

その面影は残るものの今まで見てきた森のように黒く焼け焦げ灰と化し、草木は“虚”にでも呑まれたかのように枯れていた。いや、それ以上だ。今まで見てきたどの光景よりも酷い。むしろ面影を残せているのが奇跡に感じるぐらいだ。本来ならば焼け野原になっていてもおかしくない。

「痛…!ってこれ、もしかしてお前が俺を呼んでいたのか…?」

周りの景色に気を取られ何かにぶつかってしまった。光を出していた正体はそれだったのだ。それは他のどの樹よりも大きく、どの樹よりも傷付き、そしてどの樹よりも懸命に何かを守るようにして生きていた。

「お前が精霊樹か…?」

俺の質問に答えるように精霊樹は黒く焼け焦げ、また枯れてしまった枝を空しく揺らす。

「待ってろ、今こよりたちを呼んで助けてやるからな!」

「無駄だ」

「!?だれだ!?!?」

ここには俺以外いないはずじゃ?

思わぬ声に振り向くとそこには予想だにしていなかった人物がいた。いや、今思えばこれは必然だったのかもしれない。

そしてそれは忘れもしない人物だった。

「I……?」

「久しぶりだな、ユウグレア。いや、今は違うのか」

「なんでここに…」

「なぜ?それはお前もよく分かっているだろう」

正直Iの言葉など全然頭に入ってこなかった。そんなことよりもみんなの言っていた“I”が俺の見た“I”だったことに驚きを隠せないでいた。

俺は心のどこかでアイツが“I”だと信じたくなかったのか…?なぜ?

「俺が…?」

「ああ」

そう言いながら深くフードを被ったIはとても愛おしそうに精霊樹を撫でる。彼の素顔はフードで隠れ何も見えない。

そう言えば俺こいつの顔知らないな。

完全に無意識だった。Iに触れようとした手が彼に届く前に、振り向かれてしまい行く当てのなくなった右手が宙をさまよう。

「革命だ」

「革命…?」

「この世界が完全に毒される前に変えなければいけない」

「毒される?変える?一体何の話をしてるんだ!?」

しかしIは俺の質問なんてまるで聞いていないようで精霊樹見入ってしまっている。

「こんな狂った世界なんて、壊してしまえばいい」

「え?」

Iはボソッと呟くかのように、全てを諦めたように力なくそう言うと俺が聞き返す間もなく、精霊樹を攻撃した。

「な!?」

Iの掌から黒い魔法陣が現れ、そこに“虚”が生まれる。俺が来る前にすでにもう何回もそうされたのだろう。加護を失くした精霊樹になす術はなく、Iの“虚”に触れられたところに大きな音と共に穴をあける。葉も枝もそのほとんどを失くしてしまった精霊樹のそれが悲鳴を上げるように揺れる。

「こんな世界、間違っている。だからそれを今から正すんだ」

「正す?」

嫌な予感しかしない。どうかお願いだからあの夢はただの夢であってくれ…。

俺のそんな願いは叶うことはなく、無残にも打ち砕かれた。

「ああそうだ。あの男はこの世界の王に相応しくない。だから…」

「だから…?」

「だから、あの男を……貴様らの王を殺すことにした」

「な…!そんなことさせるか!!」

そうだ、あの夢を正夢にさせてはいけない。

「もう遅い」

「は?」

「一体何のために貴様らをわざわざここに誘き寄せたと思っている」

「まさか王都が…」

「ふっ、楽しみに待っているぞ、ユウグレア」

「な!おい、どういうことだ!!」

そういうとIは俺の言葉を最後まで聞き届けることなく、まるで最初からそこに存在していなかったかのように消えてしまった。

泣いていた…?

消える直前に見た彼の顔は深くかぶったフードによって見えないはずなのに、口元に笑みを浮かべているはずなのに、どこか泣いているように感じた。



ここまでお読み頂き有難うございます、作者の月乃です^^

今年もあと三日。皆さんは大掃除はもう終わりましたか?私はまだです…。終わるのかなアレ……。皆さん今年中に済まさないといけないことや済ませたいことは今年中にですよ!私みたいに後に後にと先延ばしにしてはダメですよ!!まだ終わっていないそこのあなた、大丈夫です。今年はまだ二日もあります…、私と一緒に頑張りましょう……。


この作品を投稿し始めてからもう五ヵ月が経ちました。早い!!なかなか投稿できなかったりもしましたがここまでお付き合い頂き本当に有難うございます!夢たちのお話もまだまだ続きますので、引き続きお付き合い頂けますと幸いです^^

今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします!!

それではまた☽


月乃 Twitter【@tsuki_Lirika508】

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