~Octo peccata mortalis autem Septem Bellm~
Prooemiale
____バタバタバタッ
どこか、遠くの方で足音が聞こえる。
___ここは…どこだ……?
シュッ
「うおっ!…なんだ……?いま…俺の後ろを何かが通った??」
これは夢だ。俺は直感的にそれを感じた。
「はぁ、またいつものかよ」
もうこれにも慣れた。仕方ない、ここにいてもどうせ“出られない”し、ついて行ってみるか…。俺は今自分の後ろを通ったであろう得体のしれない“何か”を頼りに辺りを散策してみることにした。
「それにしてもここは一体“何”なんだ?」
暗すぎるそこは、すぐ傍にある松明がないと何も見えないほどに暗い。湿った、冷たい何かが手に触れた。
「…レンガ?ふーん、“これ”は触れるのか。それに黴臭い…」
俺は思わず、それに顔を歪めた。
触れるなんて珍しい、加えて匂いも感じるなんて。どうやらここは地下かなんかの通路っぽいな…、人一人通るので精一杯だな。
___じゃあさっき俺の後ろを通ったのは何だったんだ?
「はああああ、いやな夢に入ったかなあ、ついてねぇ…」
___バタバタッ
俺が思わずそう呟いたのもつかの間、先程よりもずっと近くで再び足音が聞こえた。
ちょうどよかった、さっきついていて行こうと思ってここがどこだかわからなくなったんだった。
音を頼りに壁を伝いながら歩いてみると、急に光が射し込んできた。
「まぶっし…」
暗がりから急に明るいところに出たからか、視界がぼやけてしまっている。ようやく目が慣れたころには音も聞こえなくなってしまった。だが俺は安堵した。
「あのまま暗いとこから出られない、じゃなくてよかった」
その声が少し反芻して聞こえた。音が聞こえなくなった分、自分の声だけがよく響くので不気味だ。ここまで鮮明だと本当に気持ち悪い。
__バタバタッ
まるでこっちにおいでと誘い込むように、松明が等間隔に並んだ長い通路の奥から足音が聞こえた。他に当てもない俺は仕方なく音のする方へ行くことにした。
ここまで鮮明だと、分かってはいるけど自力では出られそうにないしな。
長い通路を奥へ奥へと進むと、急に開けた場所へ出た。気味の悪い像がぐるっと一周囲み、こちらを見下ろしている。心をざわつかせる様な不気味なそれに気を取られていると、地響きのようなけたたましい音があたり一帯を包んだ。
…下か。
謎の彫刻が両脇に飾られている螺旋階段を降り音のしたほうへ向かってみると、上の階にもあったものと同じものだろう気味の悪い像が崩れ落ちていた。
刹那、閃光のようなに素早い“何か”が通り過ぎたかと思うと間髪を入れずに俺のすぐ横にあった像が音を立てて崩れた。
おいおいおいおい嘘だろ勘弁してくれ、ちょっと待て!?なんだ今の!?!?は?今の俺の見間違いじゃないよな?急になんか光線らしきものが像を破壊したなんてそんな、なぁ!?
再び空を切るその光にとっさに俺は、残骸の陰に身を隠した。
はい、俺の見間違いじゃなかったー、間違いなく今の光線でしたーーー。っておかしいだろ!?なんだよ光線って!は?さっきまでの謎のシリアスは何処へ行った。
「危ないだろいきなり何するんだよ!死んじゃうだろ!?」
シーーーーーン。
急に訪れた静寂。先程までのあの五月蝿さは一体どこへ消えたのだろうか。
あー、うん。やってしまった。これはアウトだ、お陀仏コースかな?とりあえず身を乗り出して言わなかったことだけは誉めてやろう、俺!お願いだから早く覚めてくれ!いや覚めろ!!
「誰じゃ!!」
ひぃ!すみません!見逃して下さい!もうヘタレでも何でもいいですから!!
我ながらだいぶ情けなかったと思う。しかし、声の主から返って来たものは予想外のものだった。
「いや、誰でもいい!儂を助けよ!!」
おっと……?これは予想だにしていなかった返事が返ってきたなぁ。…って無理だろ!?どうやって助けろって言うんだよ!!
予想外の言葉に困惑していると、これまた予想外なところから返事が返ってきた。先程光線を放ったと思われる黒いマントにフードを深くかぶった人物が凛とした、よく通る冷たい声で発した。
「死んでしまうだと…?当然だろう、殺すために打ったのだから。しかしまぁ、貴様に向かって打つ気はなかったがな」
息が止まった。言いたいことは山ほどあったが声が出なかった。
「…王よ、さっさと諦めるが良い。そこの腑抜けに助けを求めたからと言って助かるだなんて、貴方も思ってはいないでしょう?」
___この声、どこかで……?
ん??王?
確かに襲われている人の身なりから察するに、その人は『王』と呼ばれるであろう人物だった。
あー、これあれ?王の暗殺とかいう歴史がひっくり返っちゃう的なやばいイベントに遭遇しちゃった的な?全然嬉しくないしこれ俺もやばいんじゃない??
「“I”!貴様、一体どういうつもりじゃ!!これがどういうことだか分かっておるのか!?」
“I”と呼ばれた黒いマントの人物は、青い光を放つ剣を携えながらじりじりと王に歩み寄っていく。
___フッ
嘲るような不敵な笑みを浮かべた彼はとても淡々としていた。背筋が凍るようだった。あちらからはこちらが見えていないはずなのに、流し目に見られた気がした。『いつでも殺せるのだぞ』と言われているようだった。彼の不敵な笑みは王と俺、ふたりに向けられたものなのかもしれない。息が詰まる、声が、出ない。
「どういうつもり、とは…、それは貴方が一番ご存じなのではないですか、王よ」
掲げられた青く光る銀色の剣が、『これは断罪だ』といっているようだった。
「謀ったな、I…。裏切りの次は暗殺か……」
「……先に裏切ったのはどちらですか。我らが愛しき王よ」
そう言われた王はすべてを悟ったような顔をしていた。
「そうか…。やはりお主は全て知っておったのじゃな。では何故止める!?すべてはこの世界の平和の為に……!!」
「貴方は間違っている。それを正すのが我ら臣下の役目でございます」
「裏切りの貴様がか?笑わせてくれる」
「それはお互い様でしょう?」
まずい
そう思い身を乗り出した時にはもう遅かった。
「……さようなら、“Carissimi regis(愛しき王よ)”」
青銀の剣が、王の心臓を貫き、真っ赤な血が、闇に咲く一輪の白いリコリスを、艶やかに染め上げていった。
黒の背中に彼岸花を背負った彼が、頬を濡らしながらとても綺麗に微笑んでいるのを、俺は闇に呑まれゆく意識の中で見た気がした。
お読みいただきありがとうございます!月乃と申します。とことん趣味を詰め込んだ趣味爆発の小説ですが、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです^^*
元々花や花言葉が大好きで、それを生かせる作品にしたいなと思っていたので今回この作品で書けてとっても満足しています。今後、『花』がキーワードになっていきますのでそちらにも注目して頂けると嬉しいです!ちなみにリコリスは彼岸花のことを指します。作中に出てくる花は全て花言葉を意識しているので、もしお時間がございましたら花言葉を調べてみるのも面白いかもしれません。
あらすじにもありますが、黒幕は一体誰なのか?ということで、そちらも読み進めながら推理して楽しんで頂けたら幸いです。
拙い文、失礼いたしました。
始まったばかりのこの小説ですが最後まで楽しんで頂けたら嬉しいです!ありがとうございました^^*




