二人の男
サバニが灯り屋への道を黙々と歩き、角を曲がればすぐそこというところまで来た時、角を曲がってこちらに向かってくるスーツ姿の男が二人いることに気づいた。身なりの良さそうなその男達は、ここが中心地から離れたあまり人通りの多くない場所ということもあり、サバニの目を引いた。一人は無表情のままじっと前を見据えて歩いており、もう一人はにこりとした笑みを絶やすことなく歩いている。あまりに違う二人の表情に思わずまじまじと見つめていると、すれ違い様に一人の男と目があった。男は笑みを絶していないのにも関わらず、その目には何かヒヤッとするものを感じ、サバニはすぐに目をそらした。そして小走りで角を曲がり、そのままお店へと入っていった。
店に入ると一階にはカガリがいた。何をするでもなく、椅子に深く腰掛けた状態でボーッとしていたので、サバニは首を傾げた。
「ただいま。どうしたの?」
「ん?あ、おかえり。いや、んー客……じゃないな、人が来てな」
「人?ああスーツの?さっきすれ違った。此処に用があったんだね」
「まあな」
「何の用だったの?お金持ちそうな人達だったけど」
「んー灯りの販売促進の為に協力をしてくれねーかと訪ねて来たんだよ。……断ったけどな」
「そう」
「それより腹減った。飯にしようぜ飯。その荷物預かるからおまえはリタ呼んでこい」
「わかった」
サバニはまだ二人の男について話を聞きたかったが、自分もお腹が減っていたことだし、話はまた後で聞こうと思い、二階にリタを呼びに行った。
カガリはその姿を見送って店の扉に内側からクローズの看板をかけると扉に付いているカーテンを閉めた。これで邪魔なく昼が食べられると満足し、三人分の飲み物を取りに店の奥へと歩いていった。