憧れ
「マリさんは注文の度に前回よりも小さくて模様の多いものを頼まれるから大変だよ」
ふふふと笑いながらリタがそう呟く。
「大変なのにどうしてそんなに嬉しそうなの?」
「ん?ふふふ大変なものほどやりがいがあるからね」
徹夜明けで眠そうではあるがリタは楽しそうに自分の作っている"灯り"を眺めた。
「……僕も、大変なの作りたいな……」
ポツリとサバニが言葉を落とすとリタは穏やかな笑顔をサバニに向け
「大丈夫。私もカガリもサバニには期待している。いずれその時がくるから、焦らないで」
と優しくサバニの頭を撫でた。
「……うん」
リタとサバニが話していると、一階の方から声がした。
「おーいサバニー店開く時間だー」
「カガリさん呼んでる。行くよ」
「あぁ。頑張って。いってらっしゃい」
「リタさんもね」
それにリタは笑顔で返し、再び作業に取り掛かかった。
サバニが一階に降りるとカガリが番台で今日の予定表を眺めているところだった。そこへサバニは近づいていく。
「おー来たな。じゃちょっと頼むわ。今日の予定は…」
「11時にお客さんとの打ち合わせ、14時に商品の受け取り、15時に打ち合わせだよね?」
「それそれ、それだ。俺も上で続きやっから時間になっても降りて来なかったら声かけててくれ」
「うん」
「さ~て今日は新規のお客さんは来るのかな~っと」
そう言って鼻歌まじりにカガリは二階へと上がっていった。
自分しかいなくなった一階でサバニは番台の椅子に腰掛け、側にあった蛍火を練習するための板とインクに手を伸ばす。描きかけの模様が淡く光っており、サバニはその続きを描きはじめた。